立ち呑み日記・マイ目覚まし [買い物]

ワルガキ二匹の目覚まし時計を買いに行きました。

「さあ起きる起きる!」
と、オカーサン(ワタシです)にやられなくとも今年から一人で起きる約束になったんです。

かわりにおのおの好きな目覚ましを買っていいことになったわけです。

と、いってもわざわざデパートまで行くのもあれなので、近所の商店街の時計屋さんにあるものから選びます。

最近は商店街にふつうの時計屋さんってめっきり見かけなくなりましたよネ。ふつうじゃないほうの時計屋さんなら、ファッション街に足をのばせば名店がいろいろありますが。

「ふつうじゃない」とはホレ、パテック・フィリップだのカルティエだのフランク・ミューラーだの、超一流の宝飾品のみを扱う高級店。

宝飾品で思い出しましたが、商店街の時計屋さんにも時計だけでなく、指輪が陳列されているものでした。

うちの近所では指輪ありの時計屋さんが一軒だけ頑張っています。が、あいにくこの日はシャッターが下りた
ままで、初仕事はまだ少し先のもよう。

二匹は「今すぐ目覚ましを鳴らしてみたい」気運が高まっていますから、そこが開くまで待たず近くの時計修理屋さんへまわることにします。

この時計修理屋さんは間口一間の小さい店ですが、オトーサン(ワタシのオットです)が古くから使っている竜頭(りゅうず)で巻く腕時計の修理やベルトの取り替えでしょっちゅうお世話になっています。

修理の傍ら、種類は少ないながら各種時計がショーケースに並んでいます。

間口一間に入ってみれば意外や意外、というのも失礼ですが、四、五人もの行列がおしくらまんじゅうしてました。

なにしろ時計修理はこの辺ではもうここだけですからね。

ご主人はベトナム人で、終日ベトナム語のラジオ放送を聞きながら、もくもくと作業しています。小さなふいごみたいなものでしゅっしゅっとほこりを払って、「はい出来上がり」

先頭にいた老紳士の左手首に腕時計が戻りました。お次は女子学生で、切れた金属ベルトの修理のもよう。その間二匹は最後尾でショーケースを見上げ品定めにこれ余念がありません・・

・・と、言っても平凡な文字盤の目覚ましが二種類と、ワタシが日々使っているようなデジタルの格安品がちょびちょびあるのみ。

11歳のムスメは紺色の平凡タイプ、9歳のムスコは白い正方形で何やらボタンがいくつもついたのが「カッコイイ」と、決まったようでした。

そうこうするうちに列がすすみ、ご主人がカウンターの向こう側から鍵をもって出てきて二匹が指さすものを出してくださいます。

その左手の薬指に、キラキラまばゆく光るイエローゴールドのごつい指輪のダイヤモンド。これまた意外な気がしましたが、時計屋さんと指輪といったら切っても切れない間柄ですもんね。

ご主人の指が動くたびにキラキラ、キラキラ・・

オカーサン(ワタシです)の目がくらみそうになっている間に、目覚ましの使い方が二匹に伝授され、2年間の保証書も手渡されたようでした。

ムスコの選んだのは時刻や温度や湿度までしゃべる時計で、盲人用に開発されたものだそうです。


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本日のパン。

前菜は、スモークサーモン、トマトサラダ
主菜は、舌平目ムニエル、じゃがいもピューレ、いんげん塩茹で


立ち呑み日記・マスタード [買い物]

朝市のマスタード屋さんとすっかり顔なじみになりました。(2013年11月10日の立ち呑み日記をご高覧ください)http://tachinominikki.blog.so-net.ne.jp/2013-11-10

たまたま買ってみた粒マスタードが、すごおくヨロシかったんです。

どんなふうにヨロシいかといいますと、これってもしかしてお醤油がかかってる? と、思わせるようなうまみがあって辛さまろやか。

「そりゃそうでしょ」
と、胸を張るマスタード屋さん。「この銘柄を、有名シェフがこぞって厨房で使ってるんだよ」

ポール・ボキューズとかあとほらエートエート・・と、そのあとが続きませんでしたが、じっさいその通りだろうと思います。

なにしろいつも行く肉屋さんにも同じマスタードが置いてあるのに気づいて聞いてみたら、肉屋のご主人もまったく同じこと言ってましたからね。

ポール・ボキューズとかあとほらエートエート・・

「うまみで辛味が抑えられているマスタードなのさ」
とは、食通の親戚。食通が家に常備しているマスタードがまさにこれだったんです。

フランスでマスタードいえばディジョンが有名ですが、この銘柄はそのお隣り町ボーヌのもの。全体的に言ってディジョンのは酸味が強くてボーヌのはまろやか、と、食通は区別するんですが、果たして真実なのか。

いずれもブルゴーニュ地方のワインどころで、ワインの副産物ともいえるワイン酢にマスタード粒を漬け込み、それぞれのレシピで蜂蜜や香辛料を加え味つけしていくものだそうです。

ワタシなどマスタードといったらメーカーが違うだけで似たり寄ったりだと思いこんでました。

「そう、フランスのはまったく似たり寄ったりだね」
と、顔をしかめるのは、スイス人の知り合い。「フランスのマスタードってなんだってああバカッ辛いんだか」

ボーヌ産のこのマスタードでさえ「辛すぎる」と切り捨てます。スイスのマスタードは香りがありながらまろやかで子どもでもダイジョブなほどに辛くないのだそうです。

しかしワタシなどマスタードというからには多少なりとも辛味がないとつける甲斐がない気がするんですが・・

・・と思ってしらべてみたらマスタードって辛い国と辛くない国が、あるんですネ。

スイスのお隣りドイツは辛くない、どころか甘い。甘いマスタードをソーセージにたーぷりまぶして食べるものだそうです。

アメリカもまた、辛くない。国民食とも言えるホットドッグを食べる時は各自が調味料や酢漬けキャベツを自由にはさむことになっていて、マスタードをごーってりつける。辛くないからこそのごーってりで、酸味が食欲をそそるのだそうです。

そういえばマクドナルドのチキンナゲットについてくるハニーマスタードって、まるで辛くないですよネ。

日本は和がらしのお国柄で、当然辛い。和がらしはカラシナの実を粉末にしたもので水に溶け出ることで、辛味が増すのだそうです。

われわれが子どものころカラシをかくというときまってオトーサンの役割でした。

「コンチクショーッ」
なあんてわざと言いながら、より辛くなるようオチョコに割ばしで猛烈にかきまぜていたものでした。


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地下鉄の階段をのぼりながらパチリ。

前菜は、野菜ポタージュ
主菜は、白身魚のフライ、いんげん塩茹で、じゃがいもピューレ

立ち呑み日記・朝市の魚屋 [買い物]

ウーさむ・・

ただ今朝市の魚屋で行列の尻尾をつかんだところ。いつもはワルガキを小学校へおくりがてら朝一番で買い物するんですが、今日は所用あって出遅れました。

すると、同じように出遅れた人たちがずららららっと魚屋に列をなしていた。

パリはここのところ急激に寒くなり、足早に歩いている間はまだいいものの、じっとしていると冷気がしんしんとあがってきます。

肉屋や八百屋やチーズ屋でも行列はするのに、魚屋で並ぶほど冷え込まないのは、どうしてなんだか・・・と、足踏みしてたら気づきましたが、魚屋という商いの都合上、ざくざくの氷で覆われている。

ウーさむ・・

魚屋は、お客さん一人一人になかなか時間がかかります。ハラワタをとったり、三枚におろしたり、やってもらうことがいろいろありますからね。

まして今、列の先頭にいる妙齢のマダムは手元のリストをにらみながら、舌平目なん枚、生鮭の切り身いくつ、帆立貝は貝から身をはずして・・と、細かく注文しておられる。

今宵はお客様があるんでしょうか。

この魚屋のカウンターには、行列の尻尾のほうに貝類がまず並んでいます。帆立貝、生牡蠣、ムール貝、浅蜊の大きさの赤貝みたいなスジが入った貝、などなど。

が、平日のことでうちはご馳走というわけでなし、本日はパス。

その次が、オランダ産ウナギの燻製や、ワカサギみたいな小魚の燻製やスモークサーモンや、魚卵とクリームを練ったタラマなど、珍味の一角。

冷凍庫でキンキンに凍らせたウオッカのおつまみにすると最高ですが、寒い時節柄、うちの本日の前菜は野菜スープなので、これもパス。

ここからが生魚で、まず高級魚の舌平目やら鮟鱇(あんこう)やら。

鮟鱇は90年代初頭までは時に魚屋の店先に吊るしてあったものですが、今流通しているのは頭や内臓は卸売市場に到着する前にとり去られ、下半身(でいいのかナ)のみ。

毎年夏休みに居候させてもらっている古い友人のフランソワーズは、滞在中に一度はこの下半身をぶつ切りの唐揚げにして食べさせてくれます。

身が締まってとおってもおいしいんですが、バカンスのご馳走におごるというわけでなし、お値段がちょっとあれです。

ご馳走は続いて一匹まんまの大きなスズキやら、切り身にしたサーモンやら。

サーモンはお刺身で食べられます。酢飯があれば手巻き寿司にもなりますが、本日はあいにく酢飯もなし。

行列は少しずつ進み、いよいよ大衆魚の一角へさしかかりました。おや、ニシンがある。

ニシンの塩焼きは小樽あたりの名物料理と、いつだったか旅番組で見たことがありました。が、テレビで観たニシンはお目目も銀色のお肌もピッカピカだったのに、目の前のそれは目のふちが真っ赤に充血してる。

仕方ない、毎度芸がないながら鯖(さば)三尾と、青魚が苦手のオトーサン(ワタシのオットです)に養殖マスを一尾、買うことにしました。


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今日はこれでしたよね。みなさまもお飲みになりましたか?

前菜は、野菜スープ
主菜は、鯖塩焼き、じゃがいものニンニクソテー、いんげん塩茹で、グリーンサラダ

立ち呑み日記・物見高く [買い物]

朝市へ行こうとうちの建物から二、三歩踏み出したその時。

ガシャガシャドッカーンッ、というおそろしい音が間近から聞こえてきました。うひゃー、車の衝突事故? と、前方を見やれば、ありゃまこれはひどい、ミニスーパーマーケットの前に路上駐車しているワゴン車を、やって来た乗用車が斜めからぐいぐい押している。

ワゴン車の前にあった道路標識がその勢いで真っ二つに折れ曲がるほどのありさまです。

一方通行で両側にみっしり路上駐車が続くパリの典型的な狭い道なんですが、なんでまたあの車は斜めにつっこんだんだか・・

・・と、思う間もなく少しバックしては急発進して何度も何度もワゴン車に激突。ようやく軌道修正したかと思うと、今度はスピード全開でジグザクにこちらへ向かってきます。

いやはや、舗道だから安心とはとうてい思えず、回れ右して家に戻ろうとしましたね。ワタシの前方を歩いていた二、三人も血相変えて狂気の車から少しでも遠のこうと走り出しています。

とにかく万が一を回避しようと扉のデジコードを押すんですが、アワくって指がすべり、押しても押してもドアが開かない。

やっとドアが開いたのと、迷走する車が舗道のワタシの横をぎくしゃく通り過ぎたのが、ほとんど同時。

車は角を曲がったところで止まり、運転席から白シャツの男が出てきて、自滅しかかった愛車を点検しているようでした。

こちらもひざガクガクですが、このまま家へ舞い戻ったのでは週末に食べるものが無い。

それに、白シャツの男の顔を見てみたくないこともない、という欲求がムクムク湧いてきて、エンジンの止まった車のほうへつい二、三歩行きかけましたが、イカンッ、と、わが身を叱りつけ朝市へ向かいました。

刃物でも持ち出されたら大ごとです。

とはいえ、パリは過激派による無差別テロは時にあっても個人的な怨恨や「やけになってキレて」などが理由の大事件は起こりにくい、とは聞いたことがありますが。

なんとなれば、そういうことするのは合理的でない。

いくら殺人が成功しようが自分の身が拘束されて相応の罰をくらうのではやるだけ無駄、と、考えるものだそうです。

「酔っ払い運転ってとこだろ」
と、一部始終を目のあたりにしたミニスーパーマーケットのお兄さんは平然としたもの。

と、そこへけたたましいサイレンとともに、パトカーが二台続いてやって来ました。

白シャツの男が呼んだにしては早すぎる到着。不穏な走行車の後を追いかけて来たのではありますまいか。

やれやれこれにて一件落着だナ、と、八百屋へ寄り、魚屋の行列に加わり、ひと通りの買い物をすませました。

が、たった今見聞したことを、誰かに話したくて口がムズムズする。

そこで用もないのに肉屋に立ち寄り、
「ちょっとちょっとォ、見た?」

目と鼻の先の出来事だったにもかからわず、たまたま向かいのカフェが改装中で、さっきの大音量はてっきりその工事の音かと思っていた、とのこと。

肉屋のご主人が仕事ほっぽり出して物見高く舗道に出てきたので、買い物カゴさげた日本人のオバサン(ワタシです)は、「ウイークエンダー」の泉ピンコもかくや、得々と詳しい状況を解説しました。


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バスを待ちながらパチリ。ただ今夕方6時。今日はぐっと冷え込みました。

前菜は、乾燥エシャロットと胡麻油をふった赤かぶサラダ
主菜は、鯖塩焼き、いんげん塩茹で、刻みパセリをふった蒸しじゃがいも

立ち呑み日記・マスタード屋 [買い物]

「あの八百屋は、刑務所に収監された」
と、朝市でいつも行く八百屋と軒を並べるマスタード屋のおにいさんがおごそかに断言するので、エーッ、と、のけぞりました。

いえね、ここのところ朝市の定位置になじみの八百屋が出ていないのでどうしたのかなと思っていたんです。

「『ニューヨーカー』にデカく取り上げられたの、知らないの?」
と、おにいさんはたたみかけます。
「傷んだ肉団子を魚屋のおやじに無理やり売りつけたかどでね」

ン? と、このあたりでこちらも首をかしげました。

そんなショボい事件を、アメリカの大雑誌がわざわざ取材に来るでしょうか。だいいちあの八百屋さんは肉団子なんか商(あきな)ってません。

「冗談だよー」
と、こちらの表情をたーっぷりたのんしんでから、マスタード屋のおにいさん。

「次かその次の朝市には戻って来るから心配しないで」

八百屋のご主人は所用で故郷のチュニジアに一時帰省している、とのこと。卸売市場への出入り免許を持つご主人なしには仕事が成立しないので、思い切って休みにしてしまったのだそうです。

なあんだ。それにしてもこちらも買い物の手順が狂っちゃいます。

仕方なく朝市の別の八百屋で用をすませるわけですが、品物の並べ方も違い、選ぶのになかなか手間取ります。

が、お初に行った店でキウイを10個買ったら1個よけいにくれ、かつパセリひと束、ついでにミカン2個とバナナ1 本までもおまけにこちらの買い物袋へ入れてくれました。

「あらどうもありがとう」
と、うれしく頂戴しながらも、
(ワタシったら浮気してる・・・)
テナ、やましい気持ちに、なぜかなってくる。

インゲンを、うちの家族が大好きなので毎度必ず買うんですが、こちらの八百屋のはなかなかお高い。

(やっぱりうちのヒトのが一番だワ)
と、われとわが身をナットクさせるべく、インゲンはやめてカリフラワーにしました。

こちらの、愛人のほう(?)の八百屋がインゲンの値段をふっかけているというわけではなく、ケニヤ産と北アフリカ産とが、あるんです。

ケニア産は極細でうっすら渋みのある上品な味で、キロあたり8ユーロ(約1000円)以上。

片や北アフリカ産はむっちり太くて甘みがあり、大味、と、言えないこともないんですが、子どもらが皿に盛り上げパクパクいくにはうってつけで、キロ当たり5ユーロ(約600円)以下。

さて、そうやって愛人と逢瀬を重ねていたんですが、本日朝市に行ったら、あらまあ懐かしいホッとした、なじみの八百屋さんが戻って来ていた。

「刑務所じゃなかったのね」
と、話しかけると、実に実にうれしそうに
「マスタード屋のやつみんなにそう言ったんだってね」

実はチュニジア帰省でさえなく、持病の検査入院の日程が病院の不手際で予定と異なることとなったせいだそう。

健康上の理由となると無用の心配からともすれば常連客が離れていくのではと懸念して、マスタード屋のおにいさんは軒を並べるよしみでひと芝居打った、ト、そういうことのようでした。

情報だけもらったままというのもあれなのでマスタードひとビン買ってみたんですが、これがまあ、やみつきになるほどおいしいマスタードでした。


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ここのところびしゃびしゃした雨。パリの秋冬はいつもこうです。

前菜は、エシャロットと胡麻油をふった赤かぶサラダ
主菜は、ボラのニンニク風味焼き、蒸しじゃがいも、いんげん塩茹で

立ち呑み日記・惜しみなく [買い物]

『惜しみなく愛は奪う』って、そいうえばあったナ、と、朝市の八百屋でおつりを待ちながら不意に思い出しました。

有島武郎で新潮文庫だったナ。読んではないけどナ。

「パセリ欲しい?」
と、そこへおつりとともに八百屋のご主人。

「いりますいりますおねがいしまーす」

惜しみなくパセリはいただく。奪わずとも、朝市の八百屋であれこれ買い物するとパセリをおまけしてくれるんです。

「冷蔵庫に前回のがまだ残ってるから」
などと遠慮せず、惜しみなくいただく。

「パセリなんて買ったことないワ」
と、結婚したてのころひとの買い物かごをのぞきこんだ大先輩オカーサンが(こんなものにお金払うの?)とばかり言っていたものでしたが。

若いワタシはオットと二人気楽な生活で朝市ごとに買い物などせず時に冷蔵庫がカラッポのカラッポになり、だからといって困ることなどこれっぽっちもなく、「なんか食べに行こう」、これですんでいた。

買いものは晩ごはんにお客様があるからこそで、薬味に使うバジリコやコリアンダーなどとあわせてパセリも一束、かならず買う。

その買ったパセリを、大先輩オカーサンなどは毎度毎度プレゼントされている、と、いうんですね。

「使い切れなくて困っちゃうワ」
とも、言うんです。

なんというぜいたく。なんというVIP扱い。

入り口で選別のあるディスコに無料の顔パスで通され、黒服にそのままVIPルームへ案内されるがごとき特別待遇です。

いつかはワタシも・・と、夢見ましたね。

やがて家族も増えて三度三度ちゃんとした調理が必須となり、朝市のたびに買い出しするようになりました。

するとワタシもVIPへとみごと格上げとなったんです。

八百屋でくださるのは、葉の平たいイタリアンパセリ。魚屋でもくださるんですが、こちらは日本でよく見かける葉のちぢれたほうで、なぜか八百屋とは住み分けが出来ているもよう。

イタリアンパセリのほうが、葉がやややわらかです。サラダの香味野菜にも使いますが、茎を細かく切って、野菜スープでも必ず煮込みます。

今やパセリ長者ですから、惜しみなくどんどこ使う。

レバノン風お総菜屋には、細切れパセリが大半を占めるレモンドレッシングのサラダがあるんですが、これなんかも作っちゃう。

ひきわり麦を入れるのが本場風、でもパセリだけでも十分おいしいです。

まだ試してはないんですが、「ためしてガッテン」のレシピによると、フライパンで蒸しておひたしにすると香りが封じ込められたいへんヨロシイそう。

レストランでは皿の飾りとして使い回ししている、などとかつては悪名高かったパセリですが、今はクックパッドなどにもレシピがたくさん紹介されています。

が、あの香りを嫌うひとは徹底的に嫌いますね。

「スジが歯にはさまる」
と、ワタシら世代以降は、このへんからも疎遠になりそうではあります。


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秋も深まってきました。

前菜は、薄切りマッシュルームのサラダ、ベルギーチコリのサラダ
主菜は、七面鳥のカツ、根野菜入り炊き込みご飯、インゲン塩茹で

立ち呑み日記・社会科の課題 [買い物]

日曜の朝、広場のチーズ屋で買いものしていたら、店の前を行きつ戻りつしている女の子が二人。小学四年生ぐらいですが見慣れない顔、ワルガキの小学校の子ではないようです。

ああでもないこうでもない、と、詮議を重ねながら手元の紙をのぞきこんでいる。帰り際、信号のところでかち合ったので、何を探しているのか聞きました。

「この広場の角に大きな店があるって先生が言うんですけど」

何の店? と、聞くと、
「さあ」

広場の角の裏の近代代的な建物の大きな店、と、二人は口々に言います。ハテそんな店、この広場の角の裏にあったかしら。そもそも角の裏ってどこのこと言っているんだか。

何のためにその店を探しているのか聞くと、と゜うやら社会の授業の課題らしいんです。渡された地図の場所へ行き、質問の答えをさがす。

大人の手書きらしき、くしゃくしゃした筆記体の質問を目を遠―くに離して読むと、あらまあこの子たちは質問1も2も3も、全部ごっちゃまぜになってる。

「まず質問をよーくお読みなさいな」
と、つい老婆心がでました。

質問1. 広場に角はいくつありますか。角の店を二つあげなさい。

角はいくつもあり、花屋もあればパン屋も、文房具屋もあります。このうちから好きなのを適当に二つ選べばいい、と、大人は考えますが、子どもはそうは思わないみたいなんですね。

ザ・角、とでもいうのか、最高の角といったらどこになるの? と、見知らぬオバサン(ワタシです)に聞くんです。

最高のって言われてもねえ・・

Vサインを横にしたような、鋭角の角が目の前にあるんですが、これなんか最高の部類に入るんじゃないでしょうか。しかもこの角には花屋があり、華やかです。

「ふうん」
と、肩をすくめる二人。マ、あとは自分らで決めればよろしい。

質問2 広場の後ろにある大きい近代的な建物は何ですか。

そんなガラス張りでかっこいい感じの建物なんかこのあたりにないわよ、と、言いかけて気付きました。近代的、というのは、「現代的」ではなく、戦後の建築のことです。安普請といいますか、コンクリのかたまりで、味もそっけもない・・

・・と、思ったらわかりました。警察暑です。

「あれじゃないかしら」
と、小道にそれて指さすと、二人は歓声をあげて、警備のおまわりさんのほうへかけていきました。

やれやれ。では帰るとしましょうか。

二人は背の高いおまわりさんを見上げ、なにやら言っているもよう。が、おまわりさんは聞く耳もたぬ顔で追い払うしぐさまでします。

物乞いの子かなにかと間違えてるのかナ、社会の課題だっておしえてあげようかナ。

「子どもだけでうろついちゃだめだ、早くお帰り」
と、いうおまわりさんの声が聞こえてきました。

パリで、保護者なしで歩いているこのくらいの年齢の子どもって、めったにいないんですヨ。

二人の女の子の親御さんも今朝は大決断だったろうなあ、と、しみじみ眺め、ワタシは家路につきました。


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猛レースになりました。が、オカーサンとしては一周いくらなんですからゆーっくり乗って堪能してもらいたいです。

前菜は、ラディッシュ、タラマ(タラコのクリームペースト)、トマトサラダ
主菜は、鯖(さば)塩焼、根野菜入りサフランライス、いんげん塩茹で、グリーンサラダ

立ち呑み日記・レジの行列 [買い物]

前菜のアボカドにかけるレモンが冷蔵庫で傷んでいたことに気づいた、夕方7時。大急ぎで近くのミニスーパーへ走ります。

通勤帰りのひとも多いことで、レジは長蛇の行列。二つしかないレジへ、一列にまとまって長―い列ができています。

最近は日本の劇場のトイレなどみんなこのシステムですよネ。一列になって順繰りに番がまわってくる。

ワタシもレモンひとつ棚からとり、長い列のシッポをつかみました。他に何か買い忘れはないかな、と、いちおうぐるっと見てはみたんですが、とりたてて今すぐ買うべきものはありません。

無駄遣いする理由もありませんしね。

行列のワタシの前は、Tシャツ姿のオトーサン。やはりレモンをひとつにぎりしめています。晩ごはんが魚料理なのにレモンを切らせてたことに寸前で気づいたんだろうナ。

フランス人は魚と見ればなんでもかんでもレモンをぴゃーっとやりますからね。

行列は、右側が缶詰コーナー、左側が油、酢コーナーという通路へとのびていました。遅々として進まないこういうときって、商品をよくよく「鑑賞」しちゃいます。

あらなに見慣れないメーカーのオリーブ油じゃない、と、手に取ってしげしげ眺めたり、する(で、すぐ棚に戻す)。

オリーブ油は今のところまだ台所に足りてます。

前にいるオトーサンは、フランボワーズ酢の小瓶を手に取って凝視したあと棚に戻し、次いで缶詰の棚からラビオリの缶詰を取り上げたようでした。

二つ買うとしかじか安くなるお買い得品! という赤い札が棚で揺れています。

確かに安いかもしれないけど、ラビオリなら冷蔵棚にある半加工品のほうがおいしいし、値段だってそう変わらないんだから興味ないワ・・

・・と、考えていると、前のオトーサンは棚に戻さず、レモンをにぎる腕に缶詰ラビオリ二つを抱えこみました。

行列は二三歩前進。缶詰の棚のオイルサーディンコーナーにさしかかります。

オイルサーディンと見ると、別に今必要ないのについ手が伸びちゃうひとって、ことにオトーサンに多くないですか?

前に並ぶオトーサンも、レモンと缶詰ラビオリ二つをかかえてしゃがみこみ、格安から高級まである平べったい長方形の缶を子細に点検。

高級を手に取ってもどし、二番手ぐらいのをひとつ、腕に抱えた缶詰ラビオリの上にお載せになりました。オカーサン(ワタシなどです)が選ぶなら、スーパーのブランドの一番安いのに決まってます。

行列は牛の歩みながら着実に進み、いよいよガムやホールズみたいな飴の棚にさしかかりました。

レジ横には必ずと言っていいほどありますよね。で、並びついでについカゴに投入させようとひっそりと魔の手をのばしている。

前のオトーサンは案の定魔の手にひっかかり、二つ入りパックのガムを、レモンを握る腕に抱えた缶詰ラビオリ二個の上にのせた二番手の値段のオイルサーディンの上へ、置きました。

(およしなさいよもう、今必要ってわけでもないでしょうがッ)
と、うちのオトーサンだったらさんッざんぱらくさすところですが、よそのオトーサンですからやや歯がゆく眺めるだけで、まもなく回ってくるレジの順番を待ちました。


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日本大使館へ行くのに出先からバス停に来てパチリ。このあたりはビジネス街兼お屋敷街てす。

前菜は、野菜ポタージュ
主菜は、鯖塩焼き、いんげん塩茹で、根野菜入りサフランライス

立ち呑み日記・お祝いの万年筆 [買い物]

友人の息子さんのバルミツバのご招待を受け、お祝いを買いに大きな文房具屋へ行きました。

バルミツバ、というのは、ユダヤ教の元服式みたいなものです。13歳でユダヤの男として一人前のあつかいを受けることとなり、ユダヤ教会の礼拝で旧約聖書をヘブライ語で朗読する行事。

その後が大パーティーです。

ひとによりけりではありますが、規模といい結婚披露宴みたいな感じです。一生に一度の記念ですからおのおの趣向を凝らし、ホテルの宴会場で大々的に行う家庭もあれば、うちうちで小規模に祝う家庭もまた、あります。

友人は自宅アパートのリビングとそれに続く書斎の敷居をはずして大広間にして、黒服つきのケータリングサービスでアットホームかつ華やかにとり行うもよう。

一人前のユダヤの男の仲間入りとなる少年は、お祝いの品を拝受します。

わがオットもユダヤ人ですが、今も日々身に着けているスイス製の腕時計がまさに、バルミツバのお祝い品です。

そこで友人の息子くんへの贈り物を選ぶわけですが、13歳の門出といったら万年筆ほどふさわしいものはほかにありますまい。

みなさんも、中学校入学のお祝いに万年筆、いただきませんでしたか?

あのころは小学校を卒業した春休みの吉日にお父さんお母さんに連れられてセイコーないしはシチズンの腕時計を買ってもらったもので、万年筆は親戚など近しい大人からお祝いにいただいたものでした。

セーラー、プラチナ、パイロット、なんていうのが標準どころ。そのワンランク上にパーカーが燦(さん)然と君臨している(と当時は思いこんでいた)。

さてこの大きな文房具屋にはついこないだまで高級文具専門支店があったはずなんですが、改装されてCDとDVDコーナーになりかわってました。

いいほうの万年筆はどこ? と聞くと、
「すぐ隣りにある本店の地上階に移りました」

その埃(ほこり)じみたガラスケースの貧弱なこと。貧弱ななかに700ユーロ(約9万円)もするモンブランなどがこれまた雑然と置かれています。

(大丈夫なの?)と、不安が首をもたげてきますが、万年筆に罪はなし、いずれなかなかのお値段のところお財布と相談し、13歳に見合った、とはいえ長らく使えそうな、ウォーターマンの万年筆を選びました。

ノート類の搬入をしていたTシャツのお兄さんが汗拭き拭きガラスのショーケースを開けてくれます。

およそ高級品とは思えぬ扱い方。でもちゃんと保証書もついています。が、レジにもっていくとなんとまあ、包装は「できない」というんですね。

なんとなれば、包装する場所などどこにもないし、だいいち「パーカー」と書いたリボンは残ってるけど
「ウォーターマンのはないみたいっすよ」。

「あるじゃないのよホラここに」
と、口調ややとげとげしく、レジ脇のパーカーのリボンの下へ勝手に指をつっこみごそごそして探し当てました。

経営方針がかわって高級文具の規模縮小のせいらしいんですが、たいへん釈然としない心境で万年筆と包装紙とリボンを受けとり、家に帰って宴の始まる時間を気にしながら大急ぎでワタシが自分で包みました。


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小春日和が続いています。

前菜は、乾燥エシャロットをふった赤カブサラダ
主菜は、目玉焼きをのせトマトソースをかけた七面鳥の腿肉ロースト(昨日の残り)、サフランライス、インゲン塩茹

立ち呑み日記・肉屋とオジサン [買い物]

毎度行く肉屋に雌鶏を買いに行った、土曜の朝10時近く。

平日はワルガキを小学校に送った朝一番で行くと、年配のマダムがひとりふたりとやって来ます。が、土曜の10時近くは違いました。

列をなすのは中年のオジサンばっかり。たまの土曜日に買い物をかって出たんでしょうか。

こちらはいつものくせでせかせか向かうと、目の前をテレンコ、テレンコした歩調で肉屋の赤いひさしの下へ吸いこまれていく、またしてもオジサンの姿。

このオジサン、間違いなくこの界隈で顔を見知っているんですが、どこのどなただかとんと思い出せません。たいへん恰幅がよろしく、首がうもれているほど。その見えない首に、金の太いチェーンがキラリ、と、光っています。

オジサンの顔も見知っていますが金のキラリにも見覚えがあります。

ハテどこで顔を合わせたのだっけ・・・マ、いいでしょう、「ボンジュール」と、その場の全員へなんとなく挨拶して、大きな背中の後ろに着きます。

先頭のオジサンが骨付き仔羊腿肉の大きな塊を提げて去ると、「ここんとこをこのぐらい」と、次のオジサンが冷蔵ケースをぐるぐる指さしました。

よいしょっ、と、肉屋のご主人がラムステークという上等の牛赤身肉をとりだします。
「ステーキでいいね」

ノンノンノーン! と、このオジサンは人差し指を立てて左右に激しく振りました。
「切らないでよ。金串でそのまま炙(あぶ)るんだからサ」

男の料理は豪快と言いますが、本当ですネ。

『野郎の料理』とでも訳せる、有名無名老若を問わず男性たちの得意料理レシピ集の前書きにもあったんですが、男が料理するとなるとまず肉の塊ですね。

片や女性がご馳走に腕をふるうとなると、同じ肉でも鶏料理に向かうそうです。

そういえばワタシもまた、今宵は来客があるのでプロポという雌鶏一羽の水炊きポトフ風鍋にするつもりです。

いよいよ上着なしでは寒くなってきましたからね・・

「知り合いに料理下手なネーチャンがいるんだけどさ」
と、肉の塊が切れ分けられていくのを見守っているオジサンが、おしゃべりをはじめました。

女のひと、ってちゃんと言いなさいッ、と、これがうちの子どもだったらコワイ顔して一喝するところですが、よそのオジサンですからね。

「ネーチャン、鶏の丸焼きを食わせるっていうんでおそるおそる訪ねて行ったら、鶏をくるんだビニールをかぶせたまま焼いちゃったんだなこれが」

「かぶせてあったのね」「衛生的ではあったね」
と、肉屋のご主人も含め、オジサンたちは意味深に言い合ってニヤニヤします。

「しかしあることだよそれ」
と、ワタシの前の恰幅のいいオジサンが話しをつなぎました。

なんとこのオジサンも、お連れ合いが耐熱皿へ仮に置いたスーパーの鶏を、間違ってそのままオーブンに入れてしまったことがあるそう。

ビニールが溶けてひっどいニオイがアパート中に充満し、まったく閉口したそうです。

「悪臭で隣人に警察へ電話された日には形無しだね」
と、肉屋のご主人。

これでようやく思い出しました。この恰幅のいいオジサンは、近所の警察署のエライほうの方でした。


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1789年のフランス革命で壊されたバスチーユ牢獄の土台。今では近所の中学高校生の憩いの場になっているようです。

前菜は、黒大根の輪切り、油漬け塩ニシン、プチトマト、フムス(ヒヨコ豆のペースト)、ニンジンステイック
主菜は、プロポ(雌鶏の水炊きポトフ)

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