立ち呑み日記・丸かじり [買い物]

マルシェのいつもの八百屋へ向かっていたら、ちょうど買い物終えた青い目の青年がこちらへ歩いて来ました。

それがまあ驚くことに、今買ったばかりのラディッシュひと束の葉の方をわしっと両手でつかんで、むしゃり、むしゃりと丸かじりしてる。

バックパックが背中にあるところからして外国人観光客であることは間違いないんですが、洗ってもないのによくかぶりつけるなあと、ついまじまじ見上げちゃいました(青年は上背がありました)。

だってラディッシュといったら実と葉の境のあたりは砂ザリザリですぞ。この砂がまかり間違って口に入ったらとうするつもりなんでしょう。

「のみこんじゃえばおんなじヨ」
とでも言うように、またしてもむしゃり。

概して欧米人は、と、いいますか、おそらく米、豪の方々と思うんですが、野菜果物の丸かじりを平気でしますね。

語学学生時代、アメリカ人のクラスメートが休み時間に教科書やノートが入ったカバンからむき出しのニンジンをいきなりとりだし、セーターの腕のところでゴシゴシするなりかぶりついたので、たまげたことがありました。

アメリカの学生の間ではおやつにニンジへそうやってかぶりつくのはよくあることだそうです。

ニンジンをリンゴにかえればしかし、ワタシも同様のことしてました。フランスに住み始めてまず覚えたのがこの、歩きながらのリンゴ丸かじり。リンゴは小ぶりで食後やおやつにうってつけで、戸外でガリッとやると解放的でまたよろしい。

日本でそういうことしたことは、なかったです。また、しようと思ったこともなかった。

日本のリンゴは大ぶりだし、一個をひとりじめするものではなく、家族みんなで分け合うべきもの。カワもちゃんとむきました。

野菜や果物の丸かじりって日本ではめったなことではしませんが、では、なぜなじまないんでしょうネ。「丸かじり」とは、言ってみれば豪快さをあらわす比喩のたぐい。

リンゴどころの青森県板柳町には「リンゴ丸かじり条例」というのが、あるようですが。

でもこれは、丸かじりしても安心できるリンゴづくりに励みましょうという内容で、リンゴはどんどん丸かじりしましょう、さあ! さあ! さあ!!! と、奨励しているわけではないようです。 

ホラよくヨーグルトのCMあたりで、葉っぱのついた長いままのセロリにざくりと噛みついて、
「うまいッ!」
なんて決めゼリフがあったり、しますが。

現実にそういうふうに食べるかといったら、そうはしないのではないでしょうか。

長いセロリには包丁を入れて食べ(持ち)やすいスティックにして、しかるのちにヨーグルトなりをつけて「丸かじり」する。

「屋台の冷やしきゅうりはでも一本まんまですよッ」
と、おっしゃりたいムキもあろうかと思います。

ワタシもそう思ったんです。で、画像を検索してみた。

すると一本は一本まんまなれど、ちぁあんとと串がさしてあるんですね。一本手づかみを断じて拒んでいる。

このあたりに、日本人が丸かじりになじまない「何か」が隠されている気が、しないでもないです。


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今年の秋は暖かいです。

前菜は、アボカド、レモンで
主菜は、イワシのグリル焼き、じやがいもピューレ、カリフラワーとベシャメルソース

立ち呑み日記・国際中継 [買い物]

一週間ほど前の日曜日の朝、マルシェへ買い物に出た帰り、四辻にあるカフェがあいかわらずの満席ながらいつもと違う雰囲気なのに気づきました。

このカフェの壁には大画面とはいかないまでも外からでも見えるほどの画面があり、しょっちゅうスポーツの中継をしています。

サッカーの国際試合のときなどは肩ぶつかり合うほどに、おもにオジサン連がひしめき合い、生ビールなどクイクイやりながら時に身をのり出して息をのみ、時に肩たたき合い、こぶしふりあげ大喜びしています。

そうでないときは観光客がテラス席に陣取り、地図を横に置いて時分どきをはずれた食事していたり。

雰囲気を學校でたとえるなら、スポーツ中継のときは体育同好会系、観光客はまあ、文化会系、とでも言ってみましょうか。

それがこの日に限って、理系、なんです。理系のオタク系。

満席のテーブルでは、みんなそろって壁の画面を凝視しているんですが、こぶし振り上げ肩たたき合う感じは、みじんもなし。

「鑑賞」というより、「観察」してる感じ。

テーブルには、生ビールがないことはないものの、大半がカフェほかソフトドリンク。

画面はというとパソコンゲームらしきものがうつっているようなんですが、その場でリモコンをピコピコやっている人の姿は、なし・・

・・それらをネギぶらさげお口あーんぐりあけて外から見ていたオバサン(ワタシです)に気づいたカフェのギャルソンに声をかけられました。
「オンラインゲームの国際中継ですよ」

ナントカいうゲームの世界チャンピオン大会で、ただ今世界中のゲームファンがこうしてカフェなりに集まって観戦しているんだそうです。

パブリックビュー、って言うんですよネこういうの。日本では秋葉原のメイドカフェあたりで同時刻に行われたんでしょうか。

オンラインゲームといったら自室にひきこもってパソコン相手に一人興じる、どちらかというと孤独な遊びと思ってました。

スポーツ観戦の対極といいますか。

「いやいや観戦という点では同じですよ」
と、ギャルソンさん。「ただ、自分的にはヤングのこういうゲームにはちょっとついて行けてないんですけどね」

「岡目八目」のこういう観戦って、概して男性が好みますよネ。

ホラ、『サザエさん』なんかでも、夕涼みに露台もちだして将棋をさしているのを囲んでやいのやいの言い合っているのは、きまってステテコ姿のオジサン連。

うちの9歳のムスコも、Wiiに飽きるとオカーサンのパソコンを無断でさわり、youtubeで誰と分からぬ一般青年が中継しているゲームの進行状況をじーーーーーーっと見守っている。

「そんなのがおもしろいの?」
と聞けば、「すごーくおもしろい!」

どのへんが? ほかにやることあるでしょうが、
と、問い詰めたい心境。

カフェの理系の青年たちにムスコの代弁していただきたいくらいです。

しかしまあ、以前は街角の目印のようにあったパリのカフェもスターバックスなどに押され風前の灯の今日、カフェが新しい鉱脈を見つけたという点では大いにヨロシいパブリックビューでは、あります。


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駅伝マラソンが、パリであるんですネ。

前菜は、エシャロットと胡麻油をふりかけた赤カブサラダ
主菜は、七面鳥ささ身のカツ、さいの目ニンジン入りグリンピース、モロッコいんげん塩茹で

立ち呑み日記・ポイントカード [買い物]

「ポイントさまさま」
と、アメリカからパリに遊びに来ている親戚夫婦。

二人はアメリカ資本の豪勢な4つ星ホテルにただ今連泊しているんですが、正規料金で泊まるとなると目の玉が飛び出る額のところ、クレジットカードのポイントのおかげで宿泊費がまるまるタダなのだそうな。

二人三脚の自営業で、仕入れをすべてクレジットカードで決済するところからポイントはたまる一方。それを使って年に一度の外国旅行を無上の楽しみとしています。

ポイントを上手にためて上手に使う人っているものですネ。

日本でフランス語の先生をやっている友人なども、フランスの「今」を知るために毎夏欠かさずパリにやってくるんですが、航空チケットは買ったためしがないと言います。

なんとなれば、航空会社と連動しているクレジットカードでスーパーマーケットなど日々の買い物をするうちに、
「マイレージがしぜーんとたまってるの」

なんとうらやましいことか。そしてなぜワタシにはポイントがたまらないのか。ポイントの恩恵をいただけないのか。

ポイントカードはたっくさん持ってるんですヨ。それこそお財布がパンパンにふくれるくらい。スーパー3軒3枚のほかに、化粧品店、洋服屋、子ども服屋、パソコンゲーム屋、スポーツ用品店等々・・

「無料ですからカードおつくりしましょうか?」
と、レジで言われて惜しみなく作ってもらった結果です。が、スーパー以外、そうちょくちょくは買い物しないんですよねえ・・

そのスーパーのポイントといったらたまらないことおびただしい。

「もう2ユーロもたまりましたよ」
と、つい先日レジの方に言われたところですが、2ユーロといったらたったの280円ですよ、280円!

たったこれっぽっちで、わが買いものの内訳情報をスーパーが吸い取って行くんですからイヤになります。

飛行機のマイレージだって、毎年家族そろって一時帰国するわけですから多少のうまみがあってもよさそうに思うんですがねえ・・

じっさいそれをねらって、家族で合算して使える、というのに加入したんですヨ。確かに、まとめればマイルは大きくなり、時に一席分もらえそうになります。

が、マイレージの席は一機に何席と決まっていてプラチナ会員から優先的に采配され、家族で合算のヒトは、その序列の最下位(涙)。

権利行使するのはなまなかでないんです。

航空券は出発日の300日前から購入できるので、その日の朝イチに電話すれば、
「ひょっとしたらなんとかなりますよ」
と、航空会社のひとに言われましたが、そんなアナタ、一年前から予定など組めませんッ。

うちの家族のなかでポイントを最も積極的にためようとこれつとめているのが、9歳のムスコです。

うちはオトーサン(ワタシのオットです)がユダヤ系なので日曜日にユダヤ学校に通っているんですが、手を挙げて発言したりするとポイントがもらえるんだそう。

で、年度末に子どもバザーがあり、このポイントで消しゴムなどちょっとしたものが買えるんだそうで、こういう発想ってユダヤならではではありますまいか。カトリックの日曜学校ではそうならない気がします。

写真はしばしお待ちくだされ。

前菜は、クレソンのスープ
主菜は、牛ステーキ、フライドポテト


立ち呑み日記・ラグジュアリー [買い物]

なんでまたこォんなにも高いのよッ、
と、売り場で独り、口がとンがらずにいられませんでした。

今、東急ハンズみたいなデパートの物干しコーナーに来ているところ。

日本から持ち帰った洗濯バサミ付き物干しが壊れていたのをうっかり失念してこの夏の一時帰国で買い忘れのまま戻って来たので、仕方ない、同様のものを探しに来たんです。

すると、あることはあったんですが見るからにちゃっちくて、それがアータ8ユーロ(約1200円)ってどうよこれ(ばんッ、と、いきなりアータの肩をはたく)。

これ、日本なら100均ですよ。ということは68サンチームの代物ですよ。というより、100均の品物のほうがずっとちゃんとしてますよッ。

こういうモノはもう、日本にかないませんね。

夏に丸々一か月も日本に滞在して、老母とイトーヨーカドーに行くたびに毎ッ度、
(買わなきゃ)
と思いながら、忘れたんですね。

なぜというに、
(買うのはでも今日の今日でなくともいいナ)
と、すぐにカゴにとらなかった。

忘れたと気づいたのは、パリに戻る前夜。

ついでに言いますと、三角の油入れ、あれも二十年越しで買い忘れております(フランスには存在しないんですヨ)。

さて、この洗濯バサミ付き物干し、買うか買うまいか迷うまでもなく敵意をもってシッカとにらみつけ、でもやっぱり多少の逡巡(しゅんじゅん)を経て、袖にすることにしました。

「ア、ソ、別に痛くも痒くもないけど」
と、8ユーロのそれがツンとすまして向こうのほうから視線を反らしたような気がして、くやしいったらない。

いえね、この東急ハンズみたいなデパート、BHVという老舗なんですが、最近、庶民派から高級志向へと路線変更したんですね。

最近の言い方で言うと、「ラグジュアリー」に、なった。

ギャラリー・ラファイエットというフランスの大デパート、ご存知ですか? 昨年、そこの傘下へ入ったのだそうです。

BHVといったら生活に密着し、フランス全土に支店がいくつもある、日曜大工に特化した気軽な百貨店、と、思い込んでいましたが、もはやその時代はとっくに終焉していたんです。

知りませんでしたが、各地方都市の支店は21世紀に入る直前に大半がのれんを下ろし、今日ではパリ近郊とリヨンに2つ3つ残るのみなんだそうです。

代わりに本店が大変革。

以前は、洋服「も」一応買える、という感じだったのが、二階にわたってファッション専門となり、代わりに広いワンフロア全体を占めていた家具売り場が消滅しました。

うちの食器棚もソファーベッドも小タンスも、結婚して半世紀近い間にみんなここで買ったものです。台所の品々もまたしかり。

BHVには学食で見かけるようなペナペナの食器からル・クルーゼなどの高級鍋まで各種そろっていたものですが、ペナペナが駆逐され、目にも楽しい素敵なモノばかりとなりました。

くだんの洗濯バサミ付き物干しはあれとしても、その横にあった洗濯バサミが一袋なんと18ユーロ(約2400円)と目を剥くお値段なれどデザインがカワイくて、毎日使うものなのだしこういうのもアリかなあと思っちゃいましたヨ。


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信号を待ちながらパチリ。

前菜は、千切りニンジンと青リンゴのサラダ
主菜は、鶉(うずら)のマスカットとコニャック風味焼き、ニンニク入りじゃがいもピューレ、いんげん塩茹で


立ち呑み日記・ユダヤ商人 [買い物]

この水曜の宵はユダヤの新年でした。

うちはオトーサン(ワタシのオットです)がユダヤ系なので、元旦のお屠蘇のあるお正月とともにユダヤのほうもやります。

なにをするかといいますと、甘(うま)き年になるよう、リンゴにハチミツをとろ~りとかけて祝う。ヒデキか~んげき、と、どうしたって毎年言わずにはいられません(心のなかで)。

エート今年はユダヤ暦の5775年、だそうです。

リンゴとハチミツの儀式のあとは、ユダヤ人でも北アフリカ系や中欧系など出身によって献立は異なりますが、家族友人とご馳走を食べます。

今年はちょうどこの日ユダヤ人街に行く用があったので、ユダヤ式ハム・サラミ専門店でパストラミ(塩漬け牛肉の燻製)をおごることにしました。

用というのは9歳のムスコがこの9月からなかよしのノアくんとオリヴィエくんとともに習い始めたチェス教室の送迎で、教室がこの店の真向かいなんです。

今回は日本人のオカーサン(ワタシです)が代表責任者となってすばしっこい三名を引き連れます。

三名は無事教室へ、だんごになってすべりこみましたから、今から近くのデパートで別の買い物をすませ、帰り際に本命をさっと切ってもらうことにしました。

そうやってデパートをうろつき、楼上レストランがリニューアルして日本食コーナーになったというので物見高くわざわざエスカレーターに乗り、しょうゆラーメン14.5ユーロ(約2000円!)というのに目を剥いて、迎えの時間ギリギリに教室向かいのハム・サラミ専門店に到着しました。

アリャー・・
と、臍(ほぞ)を噛みましたが後の祭り。

お店は大変な行列で、行列をなしているみなさんワインの試飲グラス片手におしゃべりに花が咲き、先頭の人がそれはもうゆーーっくり買い物してる。

お店でおしゃべりといったらユダヤ人ならずともフランス人全般がそうですけど、本日はなにしろ同胞の新年ですからね、しゃべるたねは無尽蔵です。

場違いの日本人(ワタシです)は行列の尻尾でじりじり待ちました。が、いっこうに進捗(ちょく)せず。

マーヴィン・トケイヤー著『ユダヤ商法』によると、ユダヤ商人5000年の知恵、といいますか、ユダヤ商人5775年の知恵を十戒風にまとめると、こうだそうです。

(1)正直であれ(2)好機をとらえよ(3)生涯にわたって学べ(4)時間を尊べ(5)笑え(6)使命感を持て(7)過去から学べ(8)話す倍聞け(9)弱者に施せ(10)家族を大切にせよ。

(5)(7)(8)がただ今特に重点的に実践されているもよう。

「今日は定時で店閉めるぜ、家族が待ってるんだから」
と、手を止めて話に聞き入っていたご主人がキッパリ宣言したので、(10)もまたしかりです。

そこへ教室から鉄砲玉三名がとび出て来たので、
「ちょっとだけ待っててちょうだい」

鉄砲玉三名はこれ幸いとばかり狭い舗道で鬼ごっこをはじめ時に車道にはみ出すので、行列の尻尾で背中に悪い汗をかきました。

やがてようやく前の方の会計が済み、やれうれしや、牛と仔牛のパストラミ各5枚ずつとサラミ20枚、包んでもらえました。


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本屋が立ち行かなくなるのを目の当たりにするのは実に悲しいです。

前菜は、トマトと千切りニンジンサラダ
主菜は、鶏ロースト、じやがいもロースト、モロッコいんげん塩茹で、グリーンサラダ


立ち呑み日記・名前入りボトル [買い物]

日本語学校の待ち時間に行ったカフェテリアで9歳のムスコがコカコーラに手を伸のばしたら、名前入りボトルでした。

それがムスコの名と同じイニシャルだったので、もしやと冷蔵棚の奥まで頭をつっこんでゴソゴソしてみると・・

名前発見。いやはや喜んだの、なんの。

「いつも飲むのより格段においしい」
そうです。

日本でも名前入りコカコーラ、大好評だったそうですってネ。

夏前のワールドカップ・ブラジル大会に先駆けたキャンペーンで、秋口の今はもう下火になっているそうですが。

日本では250種ほどの名前があったそうです。

でもたったそれっぽっちでは、キラキラネーム大隆盛の昨今、めったなことでは自分の名前に行きあたらないのではないでしょうか・・

・・と思ったら、佐藤、鈴木、渡辺、安藤、藤田など、苗字も含まれていたそうな。これでずいぶんたくさんの方が含まれました。

SakuraiやOhnoなど「嵐」のメンバーほか有名人を想起させる苗字もいろいろあったそう。

「250種ほどにしぼるように」
と、本国のほうから各国へお達しがあったんでしょうかネ、フランスもまた、昨年9月の第一弾は同じく250種だったそうです。

「ジュリアン」「トマ」「マリー」が、このキャンペーンを紹介するコカコーラのホームページの写真に写ってます。

フランス人の名前は、365日に振り分けられているカトリックの聖人名から採られていることが多いので、250もあればおつりがくる、と、いう計算だったんでしょうか。

「モハメッドがない」「アリもない」「ボクの名イスマエルもぜひおねがい」
と、しかしそのHPの記事に続くコメント。

かつての植民地の、北アフリカ系の名前が第一弾のキャンペーンではまるっきり入ってなかったみたいです。

人種が当然のごとく入り混じっている今日のフランスで、これでは偏りがあり過ぎだったのではありますまいか・・

・・ンなこと日本人のオバサンに言われなくともわかってますッ、と、今シーズンは1000種に増やしてのキャンペーンのようです。

ハナシはキラキラネームに戻りますけど、光宙(ぴかちゅう)くんや心愛(ここあ)ちゃんなどはこういうときはまことに残念ですネ。

澄海(すかい)くん、法律守(ぽりす)くん、永久恋愛(えくれあ)ちゃん、などは、アルファベットにすると実に明解な名前なんですが。

役所の戸籍課に勤めている友人によると、出生届にはフリガナの欄があるものの、この書きこんだ用紙は5年だか保存した後廃棄処分され、あとは戸籍のみになるのだそう。

戸籍にはフリガナはつかないので、本人とその子や孫など本人を知っている人がいなくなる百年後くらいに、今日の日本人の難解な名前の読み方が不明となる可能性が大いにあるのだそうです。

でも、難解な読み方の名前って昔からありましたよネ。

ホラ、古文でならった凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)、この歌人なんて1200年も前の平安時代からどうやって読み方を後世に伝えたんだか。

ぼんかわちのつくね、
と、ワタシなど級友とともに口の中でまず念じ、そのキラキラネームを暗記したもンでした。


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このあと一日のうちに豪雨になったり晴れ上がったりせわしいことになりました。

前菜は、トマトサラダ、ラディッシュ
主菜は、ハンバーグステーキ、グリンピースとさいの目にんじん、モロッコいんげん塩茹で

立ち呑み日記・貴方とへだてる [買い物]

スーパーのレジにあいもかわらぬ行列が出来ている。

日本のスーパーのレジとフランスのそれとは、しくみが少々異なります。日本のスーパーのレジはホラ、カゴをカウンターに置けば担当の方がピッとやって別のカゴへ入れ直してくれますよね。フランスはベルトコンベアーになっていて、お客が品物をこの上へ載せるんです。

ベルトコンベアーはどう察知するのか、前方に隙間が出来ると自動的に動いて少しずつつめていく。で、出来た隙間にまた乗せる。

隙間が出来たところへ、次の客もどんどん載せだします。

そこで、全部載せ終ったら今度はキャッシャーの前に置かれている小さなついたてを取り上げ、ほうり投げるがごとく、ピシャリと置くんですね。

(混ぜないでよね)
とでも言いたげな、いかにも無慈悲で冷徹なピシャリ。

「メルシ」
と、しかし後方のひとはたいてい、心から喜ばしくニッコリほほえんで感謝するんです。へだててくれてありがとう、おかげでたすかります、という感じに、ニッコリ。

このベルトコンベアーがもし日本のスーパーに採用されたら、こうはならないんだろうなあ・・と、いッつも思うんですヨ。

日本なら、先方へ会釈などして失礼なきこと心をつくし、万事申し訳ながりながらそぉーっとへだてる。へだてるというか、へだてさせていただく。

あからさまなことしてほんとうにごめんなさいどうか気を悪くしないで、という情感にじませ、ついたてを置くわけです。

だって、ちょっと想像してみてくださいナ。

いつも行くスーパーのレジがベルトコンベアー式になっていて、あなたの鼻先へ、前の客がついたてをほうり投げるがごとくピシャリと置く。

ネ、(なんなのこのひと無礼なッ)と、ムカッ腹立っても、(ありがとう)などという気分には金輪際ならないでしょ?

かようにフランス人はあなたと私を隔てるのを喜ばしく思うわけですが、親密な状況下においては後発なんですよね。

すなわち、コンドーム。

エイズの猛威によりここ二十年の間に完全普及しましたが、目的は性病罹患を避けるためで、日本のように避妊ではありません。

避妊は、ピル。1970年代初頭に解禁になり、今日では娘が16歳の誕生日を迎えると母親とともに産婦人科の門戸を叩くのが社会現象となっています。

それ以前は、コンドームは普及していないわ、中絶手術は禁止されているわでなかなかたいへんだったようです。

あおりをモロに食らったのが、性解放の追い風に乗ったヒッピー世代。

いえね、先日バカンスで居候していた友人宅で、六十五がらみの大姐御(アネゴ)お二方が食前酒まわった勢いで武勇伝をおはじめになったんですね。

お二方とも当時ショービジネス界に身を置き、今日のフランスで知らぬ人のいないアノ俳優やらソノ司会者やらをペロッとやり、クレージーキャッツの替え歌でいうなら、
♪ドーバー海峡渡った旅が五万回~・・

当時のフランスでは中絶手術は御法度で、英国で施術する裏ルートがあったものだそうです・・

・・テナことスーパーのレジの尻尾でボケーっと思い出しているうちに、ようやく番がまわって来ました。


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2014年夏のバカンスも完全に幕を閉じました(涙)。週が明けると新学期です。

前菜は、メロン、フムス(ヒヨコ豆のペースト)とセロリ
主菜は、仔羊腿肉ロースト、じゃがいもと香り茸のソテー、いんげん塩茹で、グリーンサラダ

立ち呑み日記・お弁当の準備 [買い物]

スーパーがお昼でおしまいになる日曜の午前中、大急ぎでかけこんだら、レジに顔見知りのオトーサンが三人も連なって並んでました。

いずれも9歳のムスコのクラスメートのオトーサン。挨拶しながら、カゴの中を抜け目なく横目でのぞきこみます。

翌月曜日、近隣の森へ校外学習なんですヨ。方位磁石の使い方を習ったので、班に分かれ渡された地図で目的地へたどり着くのが課題です。

こういう校外学習の日は、学校から給食代わりのお弁当が支給されることが多いんですが、今回は、
「各自で持参してください」

お弁当すなわちおにぎり、と、打てば響くように日本人のオカーサン(ワタシです)は思うわけですが、
「おにぎりはやだなの」
という問題発言を、ムスコからあろうことか受けました。

なんとなれば、こないだ日本語学校の帰りに立ち食いしたサンドイッチがことのほかよろしかったのでそれが食べたい。

そのサンドイッチはバゲッドに鶏肉、薄切りトマト、レタスの一片がはさまっている平凡な、どこでも見かける代物です。

みとめましょう。似たような鶏肉と薄切りトマトとレタスのきれっぱしをマヨネーズでつないだバゲットサンドを、今回のお弁当の主軸に据えることにします。

そうと決まれば早めの手配が必要です。なにしろ日本と違い、日曜は食料品店がどこもお昼まで。

レジに連なっているオトーサン方のどのカゴにも徳用サイズのサンドイッチ用食パンが屹立しています。ワタシもこれですませられれば明日の朝ラクなんですが。

バケットは前日の買い置きだとパサパサになってしまうので、当日の朝7時半の開店時間と同時に、ふだんは行かないほうのパン屋へとびこむ算段です。

なぜふだんは行かないかというと、このパン屋のバゲットは外側こそカリッとしているものの、中がフニャフニャのスカスカ。

でもサンドイッチとなるとこういうバゲットでないと噛み切れないんですね。

「そう、いつも買ってるおいしいほうの店のバゲットじゃ、ダメ」
と、オトーサンのおひとかたに話しかけられました。

このオトーサンは愛する一人娘のため、台所にありあわせのバゲットでサンドイッチづくりを予行演習してみたところ、
「こんなの噛み切れない」
と、拒否にあったそう。

9歳というのはお弁当にあれこれ口出すとしごろなんでしょうかネ。

横目で観察したオトーサン連のカゴの中身はどれも似たりよったりで、食パンのほかにハム、小分けになったチーズ、ポテトチップス、ミネラルウォーターの小瓶。

フランス人のお弁当は、サンドイッチで腹八分までもっていきポテトチップスでおなか満杯にするみたいです。

小分けのチーズも小袋のポテトチップスもうちにまだあるので、水筒がわりのミネラルウォーターの小瓶とプチトマトをかごにとりました。

おっとマヨネーズ切らしてた。

いったん列を離れ急ぎで取りに行き、ついでに本日のお昼にするつもりでスパゲッティーのトマトソースもとります。

レジで支払いをすませ、やれやれ・・

・・と、ここで、肝心の鶏肉を買ってなかったことに気づき、大慌てで閉店間際の肉屋へ走りました。


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びっくりしたなあもう・・

前菜は、ミニアスパラ、ミニコーン、プチトマト
主菜は、フォーフィレ(牛ステーキ)、パフリカとナスのオリーブ油炒め、チーズ入りポレンタ

立ち呑み日記・尾かしら付き [買い物]

ただ今単身一時帰国しておりまして(一昨日の立ち読み日記をご高覧ください)、お祝い事があり、親族を代表してワタシが鯛の尾かしら付きを買ってくることになりました。駅ビルの地下食品売り場に行けば常時二、三尾が塩焼きで並んでいる、とのこと。

鯛の尾かしら付きを目にするのは、かれこれ10年来です。

鯛はパリの魚屋でもよく見かけ、白ワイン蒸しやなんかでたまに食べるんですヨ。が、「鯛」とは思っても、「尾かしら付き」とは思わなかった。

島国日本では、鯵(あじ)や鯖(さば)などの大衆魚は一匹まんまが当然なのであえて尾かしら付きと言う必要がないところ、高級魚の鯛を切り身でなくまるごと全部というので、「尾かしら付き」と言うのだそうです。

かれこれ10年前に目の当たりにした尾かしら付きは、ワタシの初産にパリ在住日本人の友人が届けてくれたもの。

2キロもある立派な鯛で、タルト皿でオーブン焼きにしたのだそうです。身の厚い、とおってもおいしい鯛でした。

今回は小ぶりなところを一尾。

ところが、おしえてもらったおかず売り場にその姿は見えず。ど・う・し・よ・うー、と、全権大使(ワタシです)は大いにうろたえ、三角巾の女性店員さんにあわくってたずねました。

「魚売り場に鯛がありますから、ございますよ」
パックになっている鯛を、今から焼きましょうとおっしゃるんです。

これです、と、隣りの冷蔵ケースから小ぶりな鯛900円ナリを手に取って見せてくださいました。
「焼き代として別途300円かかります」

二つ返事でおねがいし、焼き上がるまでの30分ほど売り場をふらふらさまよって待つことになりました。

尾かしら付きってワタシらが子どものころは今よりもっと、のれん街の花形でしたよネ。花形というより、手の届かない存在。

「買ってー買ってー」と、どんなにねばっても許可が下りることのなかった存在。

のれん街にはきまって尾かしら付き専門のカウンターがあり、小ぶりなのからひとかかえもある特大までロウ細工の食品サンプルが並んでました。

われわれ子どもはガラスケースに顔くっつけてその雄姿を眺め、実物は結婚披露宴の折詰で、賞賛をもって取り囲んだものでした。

あれってオトーサンオカーサンがうちで待っている家族を思ってあえて残して来たのではなく、その場では箸をつけてはいけないならわしがあるんですってネ。

そもそも二の膳に出されるもので、その場でいただく一の膳とちがい二の膳のものは持ち帰るべきお土産だそうです。

やや干からびても見える折詰の尾かしら付きは、身をはずし、頭と骨をぐらぐら煮て出汁をとりうしおにして家族そろって食べた記憶があります・・

・・と、遠い目をするうちにわが小ぶりな尾かしら付きが焼き上がりましたが、それがまあ、化粧串でみごとに身体が波打ち、背びれがピンと立って、実に立派。

アッツアツの湯気があがり、今この場でかぶりついたらどんなにいいかと思いましたが、そんなことしようものならせっかくのお祝いの席が台無しですから、蒸れないよう穴をあけたラップをかけてもらい大急ぎで帰途に着きました。


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実家にて発掘。「マンハッタントランスファー」やら「クリストファークロス」やらが入ってます。

前菜は、はたはたの酢漬け、大根おろし
主菜は、鯖の干物、スナップエンドウ、蒸しじゃがいも

立ち呑み日記・大人買い [買い物]

「フェーヴがハリー・ポッターだったワ」
と、アジア食材店でばったり会った日本人のオカーサン仲間に言われ、にわかに浮足立ちました。

フェーヴというのはガレット・デ・ロワ(王様のガレット)という、今の季節に食べるパイ菓子にしのばせてある陶器などの小さな人形やらのこと。

みごとフェーヴをひきあてると、本日の王様としてガレットについてくる紙の王冠をかぶせてもらえます。

今の季節と言いましたが、正確には1月6日、公現祭というカトリックの行事のお菓子で、1月末ごろまで店頭に並びます。

フェーヴ(そら豆)というくらいで、1970年代くらいまでは本物の乾燥そら豆が入っていたようです。

その後、陶器や金属でいろいろな形がつくられるようになり、今日ではコレクションの対象にまで発展しています。

パン屋やスーパーなどでガレットとは別にフェーヴのみシリーズ一式で売られていたりするほど。フランス版「大人買い」、テナ感じでしょうか。

子どもはフェーヴをあてるのがそれはもう楽しみで、切り分けるところからかたずをのんで真剣勝負です。

うちの11歳のムスメはハリー・ポッターの大ファンですから、オカーサン(ワタシです)としてはなんとしても買ってやりたい。
「そのガレット・デ・ロワの店ってどこにあるの?」

お住まいの近所の、ごくふつーうのパン屋だそうです。

パリの街はどこにでもパン屋があるところからガレット・デ・ロワはふつう近所でつごうするもので、わざわざバスや地下鉄に乗ってまでして買いに行くものではありません。

それを、バスに乗ってわざわざ買いに行こうと決心がかたまりました。

オカーサン仲間からはだいたいの場所をおしえてもらったので、そのあたりまで行けばなんとかなるでしょう。

幸いうちからはバスで一本、番地で言うとこのあたりと下りたバス停の近くに、ありましたありました、ごくふつーうのパン屋。

「フェーヴがハリー・ポッターですよね」
と確認をとろうとすると店員さんは少しばかり驚き、
「少々お待ちください」

奥でパンを焼いていたご主人としばしのやり取りの末戻ってきたところによると、ハリー・ポッターとクラシックカーのシリーズがあり、もはやどれが入っているかは判らなくなった、とのこと。

ガラスケースをじーとにらんで、入念に選びましたね。二三人用の小さいのがあったところから、二つまとめて「大人買い」です。

期待大いに高まるなか、晩ごはんのデザートに切り分けたんですが・・

ハリーポッターでもクラシックカーでもなく、ギターとドラムという楽器のシリーズが入ってました。これはいったいどうしたことか。

街のごくふつーうのパン屋さんのこと、おそらく常連客に毎度目新しいフェーヴがあたるよう同じものを大量に仕入れることなくいろいろなシリーズを少しずつ入れているのでありましょう。

代わりと言ってはあれですが、本日スーパーに行ったら映画「ホビット」シリーズのフェーヴ入りというのが特売になっていて、オマケにおどらされるかたちでついカゴにとっちゃいました。


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パリは暖かく春の花がほころびてました。まだ1月なのに。

前菜は、ニンジン千切りサラダ、トーストにのせたスモークサーモンとイクラ
主菜は、若雌鶏のロースト、じゃがいもロースト、モロッコいんげんとブロッコリー塩茹で

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