立ち呑み日記・肉屋とオジサン [買い物]

毎度行く肉屋に雌鶏を買いに行った、土曜の朝10時近く。

平日はワルガキを小学校に送った朝一番で行くと、年配のマダムがひとりふたりとやって来ます。が、土曜の10時近くは違いました。

列をなすのは中年のオジサンばっかり。たまの土曜日に買い物をかって出たんでしょうか。

こちらはいつものくせでせかせか向かうと、目の前をテレンコ、テレンコした歩調で肉屋の赤いひさしの下へ吸いこまれていく、またしてもオジサンの姿。

このオジサン、間違いなくこの界隈で顔を見知っているんですが、どこのどなただかとんと思い出せません。たいへん恰幅がよろしく、首がうもれているほど。その見えない首に、金の太いチェーンがキラリ、と、光っています。

オジサンの顔も見知っていますが金のキラリにも見覚えがあります。

ハテどこで顔を合わせたのだっけ・・・マ、いいでしょう、「ボンジュール」と、その場の全員へなんとなく挨拶して、大きな背中の後ろに着きます。

先頭のオジサンが骨付き仔羊腿肉の大きな塊を提げて去ると、「ここんとこをこのぐらい」と、次のオジサンが冷蔵ケースをぐるぐる指さしました。

よいしょっ、と、肉屋のご主人がラムステークという上等の牛赤身肉をとりだします。
「ステーキでいいね」

ノンノンノーン! と、このオジサンは人差し指を立てて左右に激しく振りました。
「切らないでよ。金串でそのまま炙(あぶ)るんだからサ」

男の料理は豪快と言いますが、本当ですネ。

『野郎の料理』とでも訳せる、有名無名老若を問わず男性たちの得意料理レシピ集の前書きにもあったんですが、男が料理するとなるとまず肉の塊ですね。

片や女性がご馳走に腕をふるうとなると、同じ肉でも鶏料理に向かうそうです。

そういえばワタシもまた、今宵は来客があるのでプロポという雌鶏一羽の水炊きポトフ風鍋にするつもりです。

いよいよ上着なしでは寒くなってきましたからね・・

「知り合いに料理下手なネーチャンがいるんだけどさ」
と、肉の塊が切れ分けられていくのを見守っているオジサンが、おしゃべりをはじめました。

女のひと、ってちゃんと言いなさいッ、と、これがうちの子どもだったらコワイ顔して一喝するところですが、よそのオジサンですからね。

「ネーチャン、鶏の丸焼きを食わせるっていうんでおそるおそる訪ねて行ったら、鶏をくるんだビニールをかぶせたまま焼いちゃったんだなこれが」

「かぶせてあったのね」「衛生的ではあったね」
と、肉屋のご主人も含め、オジサンたちは意味深に言い合ってニヤニヤします。

「しかしあることだよそれ」
と、ワタシの前の恰幅のいいオジサンが話しをつなぎました。

なんとこのオジサンも、お連れ合いが耐熱皿へ仮に置いたスーパーの鶏を、間違ってそのままオーブンに入れてしまったことがあるそう。

ビニールが溶けてひっどいニオイがアパート中に充満し、まったく閉口したそうです。

「悪臭で隣人に警察へ電話された日には形無しだね」
と、肉屋のご主人。

これでようやく思い出しました。この恰幅のいいオジサンは、近所の警察署のエライほうの方でした。


P1010341.JPG
1789年のフランス革命で壊されたバスチーユ牢獄の土台。今では近所の中学高校生の憩いの場になっているようです。

前菜は、黒大根の輪切り、油漬け塩ニシン、プチトマト、フムス(ヒヨコ豆のペースト)、ニンジンステイック
主菜は、プロポ(雌鶏の水炊きポトフ)

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