立ち呑み日記・夕方のカフェ [食前酒]

「無線LANがないと何もできない」
と、夕方、ピカピカのiPadを胸に抱いてべそさえかきはじめた、十歳のムスメ。

オトーサンをたきつけて、今しがたついに買わせてきたところです。箱を開けるのももどかしく、とにかく、とにかく動かしてみたい、この一心。

が、残念無念、うちに無線LANは、ちゃんと設営すればあるにはあるものの、うちやったままなんです。

のべつまくなしにつないで遊べないことを見越したからこそ買ったんだ、と、こっそり耳打ちに来たオトーサン(ワタシのオットです)。

近くの公園にはパリ市の肝煎りで無線LANがありますから、放課後や休みの日の一定の時間だけ出かけてつなぐ、と、そういう魂胆です。

しかしまあ、本日は買ったばかりだし、晩秋のことで日もとっぷり暮れ早々と公園も閉まったので、仕方ない、オカーサン(ワタシです)が肝煎りとなりましょう。

「カフェへ行きましょう」

今泣いたカラスの、よろこぶまいことか。

最近はパリのどのカフェも無線LANがあります。跳びはねるがごとく走り、フロアの真ん中あたりの、ソファー風シートに陣をとります。

夕方のカフェって、いいものですネ。

日のなかなか暮れない夏場はテラス席がうまり、生ビールなど前にみなさんのーんびりしているものですが、寒い季節はまたちょっと違います。

風がスカスカするテラス側を避け、奥の席でホッカリしながら、一杯やっている。

ガラス窓越しに、いつも行く肉屋にこうこうと明かりがつき、ご主人が本日最後の客に肉を包んでいるのが見えます。

ギャルソンが来たので生ビールと、ハッピーアワーの割引があるというので、ワルガキ二匹はにぎにぎしくもノンアルコールカクテルを、とりました。

ムスメはさっそくiPadに指をすべらせ、名前だのを登録しているもよう。

フロアを見回すと、ノートパソコンを開けている人にまじって早めの夕食に向かっている人が、あんがい、います。

フランスの夕食は8時過ぎからなので、ツーリストか、今宵は一人だから帰り道にさっとすませちゃおう、と、いう人か。

なに食べてるのかナと横目をつかってみたところ、ステーキとフライドポテトとか、オニオングラタンスープ、とか。

典型的なカフェ料理です。

やってきた生ビールをぐびりとやって、フーとひと息ついてみると、これから晩ごはんのしたくに戻るのが、どうにも億劫になってきました。

とはいえ、今朝買った鱒(ます)を食べないことにはどうしようもない。

「ゲームはここではしませんよ」
と、夢中になっている二匹にクギをさし、ノンアルコールカクテルが空になったところで、うちに帰ることにしました。


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ヴァンドーム広場の手前からパチリ。宝飾店がぐるりと取り巻く広場です。 

前菜は、ラディッシュ、バターと塩で
主菜は、牛ひき肉ステーキ、野菜のクスクス






立ち呑み日記・泡と仰天 [食前酒]

先日ワルガキ二匹連れて遊びに行ったロンドンで、パブには入れないというので、ホテルに缶ビールを持ち帰ったんですね。

どうしてパブに入れないかというと、子どもは、午後5時以降、お酒のある場所に足を踏み入れることまかりならぬ、という法律があるのだそうです。

なんとまあとおどろきましたが、ホテルで缶ビールをプシッとやったら、もっと仰天することが待ってました。

プラスチックの使い捨てコップにとっくりとっくり注ぐと、じゅわわわわとクリームムースのようなぶ厚い泡が立ち、おさまるのを待って、デワデワイタダキマース・・

・・と、飲んでいる間は気がつかなかったんですが、一本あけようかというときに、ぎょっとしたの、なんの。

缶の中に、何か入ってる。コロンとした、大きめのビー球みたいなものです。すわ異物混入? と、青くなりかけました。

実はこれ、注いだときに泡がとっぷりたつよう、わざと入れてある窒素ガス玉、なんだそうです。

ヘエエと目を見張り、そしてなるほどイギリスには「バタービール」が生まれる土壌があるのだなあ、と、しみじみ感心しちゃいましたヨ。

「バタービール」は『ハリー・ポッター』に出てくる架空の飲み物ですが、ロンドン郊外の室内型テーマパーク「メイキング・オブ・ハリー・ポッター」で、実際に飲むことができます。

原作の描写そのままに、繊細な泡がとっぷりたった、バタークリーム味のサイダー。ビールで培われた泡の技術が生きているわけです。

イギリスのお隣りアイルランドが発祥のギネスビールなどは、まさに泡のビールですよネ。

コップに注ぐと泡だけなのが、気長に待つうちに、少-しずつ、少ーしずつ、下から黒い部分が現れてくる。ダブリンに嫁した友人によると、分厚く覆うこの泡は、「クリームそのもの」

しかも気候のせいか、アイルランドで飲む、というより「食べる」ギネスの泡は、他の国で同じように注いだものとは、クリームの味がハッキリ違うそうです。

同じ英語圏でも、アメリカはビールの泡を、まるっきり好まないのだそうですってネ。日本以上にキンキンに冷したところを、泡がたたないよう、たたないよう、コップに注ぐ(そうです)。

ある時ニューヨークから友人がパリに遊びに来て食前酒にビールを出したら、いきなりラッパ飲みをはじめたのでたまげたことがありました。

アメリカでビールは、ラッパのみこそ正調の飲み方(ホントです)。コップに注ぐと泡がたってのみにくいし、第一ビールをのんでいる「感じ」がまるっきりしない、と、言います。

そのアメリカが発祥で、泡のたつ飲み物と言えば、コーラが、ありますが・・

ペットボトルのコーラ、それもダイエットコーラにメントスの粒を落とすとたいへんな泡、どころではすまず、大噴射するそう。

「メントス・ガイザー(間欠泉)」としてこのことは若者を中心に世界的に知られ、実験の映像をユーチューブに載せている人がたくさんいる、というのにもまた、仰天しましたです。


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街がクリスマス仕様になってきました。一年、はやいですねえ・・

前菜は、トマトとグリンピースとさいの目エマンタールチーズのマヨヨーグルト和えサラダ
主菜は、仔羊の腿肉ソテー、レンズ豆の煮込み、モロッコいんげん塩茹で

立ち呑み日記・アペロの宵 [食前酒]

灼(や)ける陽がようやく翳り始める午後8時過ぎ。

スペイン国境に近い友人フランソワーズ宅で、夏休みの居候、と、しゃれこんでいたんですが、一日で一番うれしいのは、なんといってもこの時間。

たっぷりしたお昼ごはんのあと、日陰で本など読みながらとろとろヒルネし、のっそり起きて子どもらのダイヤモンドゲームにつきあい、ネコなどじゃらしているうちに、ふと、庭全体が影になっているなあ、と、気づくわけです。

おりしも、夕方から近所の川へ釣りに出かけていたフランソワーズのつれあいが、仲間とともに帰って来る。

つれあいとお仲間によると、
「釣れてもよし、釣れなくてもよし」

釣りざおの先に、モンシロチョウやらトンボやらがとまっているのをポケーとながめ、内輪ウケに終始するバカバナシに興じ、天下国家を論じ、タバコを、パイプを、ふかす。

漁業権を支払っていないので、万が一の万が一、マスなどの大物がかかっちゃった場合はすかさず逃がし、クチボソみたいな小魚だけ、かかったときは持ち帰る。

この8月の頭に、100歳2か月で大往生となったフランソワーズのお母様は、毎年漁業権を払い、95歳まで、自分で車を運転して、急流でマスの大物を釣っていました。

われわれ家族が夏の居候となる直前に永のお別れとなりましたが、旅立ちの服装は、いつもの釣りに行くときと同じ迷彩柄のキャップを目深にかぶせ、カーキ色のパンツにポケットつきシャツを、一人娘のフランソワーズが選んだそうです。

「遠くへ行くといったらこの格好より思い浮かばないもの」
と、グラスの氷を指でまぜながら、フランソワーズ。

テラスで食前酒を、と、みんななんとなく席に着いたところです。

アペロ、と、アペリティフのことを、フランス語の略語でいうんですが、夕刻の外気の中で、のーんべんだらりと過ごすアペロほど夏休みらしい時間は、ほかにないほどです。

飲み物はまず、フランソワーズなど、60年代に青春をおくったメンメンなら、一も二もなく
「クーバ・リブレ(『解放キューバ』)」

ラム酒のコカコーラ割りで、当時はツイストやらゴーゴーやらを踊りながら、時にナンパし、ナンパされつつ、
粋がって杯をあけたものだそう。

とはいえこればっかりだとのみ口甘く、飽きてくるので、フランスの南地方と言えば、リカールやペルノーなど、アニスのお酒、やっぱり、これに尽きます。

水を注ぐと白濁し、のみ口すっきり、ただし、飲みすぎると、頭グラグラのただならないことになりますがネ。マ、なんでものみすぎればそうなります。

子どもらにはリンゴジュースなどあてがい、デワデワ、と、オカーサン(ワタシです)もまた居候として勝手知ったる友人の台所から出来るだけ長いコップをさがしだし、カルピスをつくる要領で、白い飲み物を自分のために、たっぷりつくる。

おつまみのポテトチップやオリーブの実をぽちりとつまみ、ぐびりとのみ、日暮れ時の微風を受け、どうでもいいハナシに興じる。

アー、フランスの夏だなあ・とまあ、そんなこんなの十日間を過ごしておりました。


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フランソワーズ好みの白い飲み物は「カザニス」、すっきりしたのみ口です。

前菜は、トマトサラダ、揚げ春巻き
主菜は、牛肉と玉ねぎの中華炒め、鴨のつけ焼き、広東風炒飯、ブロッコリーの炒めもの


立ち呑み日記・炭酸がダメ [食前酒]

7歳のムスコの大親友サッシャくんご一家がうちに初めて晩ごはんにやって来ました。デワデワ、と、いうように、大人たちは、お持たせのシャンパンをあけ、いよいよ宴が始まります。

子どもたちには、「シャンポミー」。

ホラ、不二家のシャンパン、って、ありましたよね、あんな感じのシャンパンボトル風炭酸飲料で、子どものパーティー気分を、いやがおうでも盛り上げてくれる小道具です。

中身はただのリンゴサイダーですけどネ。

ところがサッシャくん、乾杯! と、コップを盛大にコツンとやるや否や
「ふつうのリンゴジュースない?」

炭酸にめっぽう弱いんだそうで、以前、生れて初めてファンタを飲んだらノドがひどくチカチカして、以来、敬遠の姿勢を貫いているんだそう。子どもはそうかもしれないわねえ、と、冷蔵庫からありきたりのリンゴジュースを出してきてあげました。

サッシャくんだけにあらず、大人でも炭酸がダメ、というひとって、あんがい、いませんか。

ダメ、というひとが、例外なく糾弾するのが、
「ノドが痛くなるからダメ」

チカチカッとするのが、炭酸好きにはたまらないんですが、これが針のようにノドの粘膜を刺激し、いつまでもいつまでもイガイガと残るんだそうです。

炭酸が大の苦手という我が友人(大人です)などは、シュワシュワが息苦しくて呼吸不全になるとまで、言いつのります。

しかしだからといって、サイダーを、コーラを、毛嫌いするというわけでもなくむしろその逆で、
「味は大好き。暑い日はとくにしょっちゅうのみたい」

憎むべきは炭酸、ということで、コップについで小半日放置し、気が抜けて、うんとうんと、もひとつうーんと寝ぼけた味になったところを
「おいしー」
と、ごくり、またごくりと飲むものだそうです。

そうするとビールやシャンパンはどうなるのかというと、
「乾杯だけして手はつけない」

なんとなれば、ワインはもとより、梅酒やらウーロンハイやら各種カクテルやら、世の中には炭酸無しのおいしいお酒がゴマンとある。

自分好みのそういうお酒を選べばいいだけで、宴(うたげ)の場で何ら困ることはないそうです。

ハナシはややそれるようですが、昭和40年代、「純喫茶」と呼ばれた喫茶店では、ホットコーラ、なる飲み物が存在したそう。NHKの朝ドラ「ゲゲゲの女房」にも何度か登場していました。

これなどまさに、炭酸がダメ派にかっこうの飲み方だと、先の友人は力説するんです。

ワタシは、炭酸大好き。大、大、大好き。ガス入り水を買い置きして朝な夕なにごくり、安い白ワインと割って食前酒にごくり、と、着々と消費しております。

そういえば先日一時帰国した折にテレビCMで観たんですが、ブラックコーヒーの炭酸飲料が、出たそうですってネ。

あれって、おいしいんでしょうか。


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本日の主菜はこれで炒め煮にしました。手抜きはなはだしい料理です。

前菜は、ラディッシュ、バターと塩で
主菜は、残り肉と玉ねぎのトマトソース、野菜入り炊き込みご飯、いんげん塩茹で

立ち呑み日記・白い飲み物 [食前酒]

昨日は赤い飲み物のハナシだったので、今日は、白い飲み物のハナシです。

白い飲み物、と、いえばもうこれは、カルピス・・と、思ったら、矢も盾もたまらず飲みたくなって、アジア食材店に、かけこみました。

今は紙パックなんですネ。イソイソ買ってきて、手を洗うのももどかしく、卓上のミネラルウォーターで割って、飲みました。

ウーム・・・

おいしいにはおいしい。が、いまひとつ物足りない。何が足りない、と、コップの白い飲み物を、しげしげ眺めて気づきましたが、氷がはいってない。とはいえ、乾燥した土地柄、氷の出番はめったになく、つくり置きが、ありません。

やっぱり、氷が途中でカラランと鳴ってくれないと、カルピスを飲んでいる「感じ」が、出ないものですネ。あと、ミンミン蝉の鳴き声と、風鈴ちりりんも、できれば効果音として、欲しかった。

さらにぜいたくを言わせていただくと、CMでしか見たことのない、朝顔型のコップ、あれで一度でいいから飲んでみたいなあ・・

・・と、うらやみながら、目の前の室温のカルピスを、飲み干しました。

最近の希釈用の濃縮液は、子どもがつくって飲むというより、オトーサンオカーサンの晩酌の焼酎割りに使われる場合が、多いんだそうです。

子どもらはもっぱら、カルピスウォーター。と、いうことは、今日の子どもの間では氷無しが主流なんでしょうか。ワタシらのころは、エアコンもなかったし、カルピスの氷で、涼を感じたのでありましょうか。

フランスの白い飲み物といったらまず、パスティス、です。黄金色の、40度もあるお酒で、水で割ると、たちまちに白濁する。

ギリシャのウーゾも同じ種類ですが、ウーゾは、タパスみたいなおつまみの数々をしっかりしたためながら、飲むものだそうです。

パスティスは、食前酒なので、せいぜいオリーブをつまむぐらい。

ホラよく、インド料理屋さんの最後の口直しに出てくる、ういきょうの粒、ありますよね、あれの香りなんですが、歯磨き粉でうがいしているみたいな、独特の風味があります。

うえーペッペッ、と、慣れるまではニオイさえ忌み嫌うのに、いったん慣れると、やみつきになるお味。

「パスティスみたい」
と、初めてカルピスを目の前にしたフランス人は、かなッらず、言います。

前回、アジア食材店でカルピスの希釈用を買った暑い日、たまたま訪ねてきたフランス人に、カルピスを出してあげました。

「これ、すごくおいしい飲み物ですね」
と、ごくごく飲み干したフランス人。

「アニスの香りがとてもいい」
とのことでした。

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オペラ座の前の大通りはあいかわらず混んでます。

前菜は、トマトとキュウリと春雨の中華風サラダ
主菜は、ミラノ風(パルメザンチーズ入り)仔牛のメンチカツ、白飯とカレーソース、インゲン塩茹で

立ち呑み日記・赤い飲み物 [食前酒]

郵便局へ用を足しに出ました。

ずうっと雨続きだったのが、久々に
くっきり晴れ上がった、夕方。

最近は日没がうんと遅くなりましたから、
夕方といっても、日暮れ時でなく、
午後の普通の時間みたいです。

が、あくまで夕方。

どうしてそう夕方に拘泥しているかと
言いますと、カフェのテラスで、みなさん、
食前酒を召し上がっていらっしゃる。

ああもうそんな時間なんだ・・

のんびりできていいなあ、と
実に、実に、ねたましい。

タンクトップで、足を投げ出している
二人連れのマダムの小卓に、異なる
二つの赤い飲み物が、ありました。

これが、傾きかかった陽射しを
反射して、きれいなの、なんの。

小皿のクラッカーを間にはさんで
一方は、ロゼワインです。

もう一方は、もっと目の覚める赤で、
薄い層をなすピンクの泡からすると、
モナコ、でしょうか。

ビールをサイダーで割って、グレナデンシロップで
赤く色をつけた、フランス風のカクテルです。

うらやましいなあ・・

夕方のカフェのテラスぐらい、赤い飲み物が
似合う場所は、ほかにありますまい。

オ、あちらのテーブルでは、キールをお召し上がり。

グラスに汗をかいているところからして
うんとつめたいことがわかります。

ワタシもまぜてくれないかなあ・・

モナコやキールは、ちょっと甘いので、ワタシは
ようく冷えたロゼワイン、これでいきたいところ。

以前ブリュッセルに行って知りましたが、
ベルギービールには、まぜものなしで
最初ッから赤いのが、あるんですネ。

クリーク、というサクランボの甘いビールもそうですが、
ウメボシみたいな酸味のある、さっぱりした赤いビール。

エートあれ名前なんていったっけ、
と、検索してわかりました。

ローデンバッハ、でした。

今ごろ、ベルギーのカフェのテラスでは、
こういうビールのグラスが、夕方の
陽射しを赤く受けているんでしょうか。

お酒をたしなまない方は
ディアポロ・カシスなんか、どうでしょう。

炭酸とカシスシロップを割った飲み物で、
フランスの子どもが、たまさかに
カフェに連れてきてもらったときによく、
大人ぶって注文しています。

子どもでなくったって大好きです。

現に、向こうのテーブルの学生カップルらしき
お二人が、赤くてシュワシュワしたのを
ごくり、またごくりとやりながら、
何かのテキストをめくっている。

まぜてーッ、と、心の中で絶叫しながら、
郵便局が閉まらないうちに、
仕方なく、道を急ぎました。


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修復作業中。こわそうですねえ・・

前菜は、アボガド、レモンとヘーゼルナッツで
主菜は、スケソウダラのニンニク風味白ワイン蒸し、じゃがいもピューレのおろしチーズ焼き、インゲン塩茹で

立ち呑み日記・コボウ抜き [食前酒]

仕事で日本に行っていた食通の親戚からゴボウチップス、というのを、もらいました。

どれどれ、と、すぐさま袋をびりりと開け、食前酒のおともに、カリカリすると、うす焼きせんべいみたいな表面に黒いテンテンがあり、なるほど、ゴボウ味です。

「ゴボウはサラダが一番うまいね」
と、親戚。お昼によく、コンビニやパン屋などのおかずパックで買って食べていたそうで、胡麻油と醤油とマヨネーズがまざった濃い目のドレッシング和えで、しゃきっとした歯ざわりがお気に入りだったみたいです。

そういやゴボウサラダ、久しく食べてないナ。と、いうより、ゴボウ自体を長いこと食べてなかった。

みなさんのところでは、お正月のおせち料理にゴボウの煮しめ、はいりますか。うちの実家は、はいります。5センチくらいにすぱんすぱんと切ったのちにちょこっと面取りして、やつがしらや、クワイや、にんじんや、しいたけを煮た煮汁で、最後に煮る。

でないと、全体が黒っぽくなっちゃいますからね。

このゴボウの煮しめを、一年間待ち焦がれたぞよと両手すり合わせて箸をのばすか、と、いうと、そこまでの興奮はなく、やつがしらや、クワイや、にんじんや、しいたけと均等に、お正月らしい静粛のうちに、取り皿にとりわける。

「ゴボウがやわらかく煮えたわね」
ぐらいは、言うかもしれません。

キンピラゴボウは、どうでしょうか。

彼女に作ってもらいたい料理ベスト10、テナ統計に、顔をだすかと思ったら、さにあらず。カレーライスや肉じゃがやオムライスなどと同等には、あつかってもらえなかったようです。

かわりに、子どもに食べさせたい料理、テナ統計の、常連のもよう。

と、いうことはですよ、肉じゃがなら、カレのオカーサンに対抗できても、キンピラゴボウでは、とうてい勝ち目はない、と、いうことでありましょう。

つまりは、アク抜きのあんばいやささがきなど、長年台所で培われた腕がモノ言う野菜がゴボウ、と、いうことなんでしょうかネ。

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もう少し何か植わっていてもいいかなあ、と。クリスマスのリボン
飾りぐらい欲しいです。

前菜は、野菜ポタージュ
主菜は、鶏ささ身のクリームソテー、カリフラワーとブロッコリーとマカロニ入りグラタン

立ち呑み日記・台所の熱燗 [食前酒]

ここのところグッと寒くなりました、
と、友人知人や、見知らぬブロガーのみなみなさまが、御日記にお綴りになり、また、つぶやいておられます。こちらパリも寒くなってきたんですが、みなみなさまの文章は、
だから今宵は熱燗にします
と、続きます。

日本酒かあ、うらやましいナ。なつかしい東京の街角の縄のれんが目に浮かんできます・・

「いらっしゃい、カウンターどうぞ」
と、うまい具合に席もとれたもよう(笑)。とりあえずビール、と、普段ならいくところですが、今夜は冷えるし、いきなり熱燗いっちゃいます。

間、髪を入れず、つきだしが来る。キンピラゴボウだったりすると、うれしいですネ。胡麻がたっぷりかかってるナ、などとしげしげながめるうちに、お銚子とオチョコがやってきます。

オチョコは、ぐい呑みを好まれる方もおられましょうが、選べるのならワタシは、唇にあたるところが薄手で口径が広めの、磁器の盃が好きです。

デワデワ、その口径の広い盃に、熱燗を、とくとくとく・・

これをそーっと口にもっていき、熱いところをきゅっと吸うわけです。かーっ、と、お酒が身体中にしみわたり、たまりません。

すぐさまもう一献、とくとくとく・・

ハァー・・さっきまでの冷えがウソのように、身体がポカポカぬくもってきます。よしその調子その調子、どんどんいきましょう。

かけつけ三杯め、とくとくとく・・

ようやく人心地ついて、つきだしに箸をつけ、あまから味が口中に満ちたところで、さらにもう一献、、
とくとくとく・・。

本格的なつまみは、壁のおしながきから、エート、もつ煮込みと、厚揚げ焼きと、季節の銀杏串焼き、おねがいしまーす・・

ところでみなさん、食堂のみ、って、ご存知ですか。

昭和の時代からあるような大衆食堂で、お酒をのむことだそうです。つまみは、一品料理のポテサラやハムエッグ、ハムカツなどなど。

ポテサラは、酢が利いて少々ゆるめで、キュウリなんかも入っていて欲しいなあ。これを割り箸で掻きとるようにして口にはこび、舌がひんやりしたところで、熱いところを、きゅっ。

・・と、そんなこんなをデレーッと考えていたら、熱燗のあつーいのが、のみたくてのみたくて、どうにもこうにも、たまらなくなりました。

日本から持ってきたのが一本くらい残ってなかったかな、と、押入れをゴソゴソすると、やれうれしや、黄桜1.5リットル紙パックを発見。

ホクホクとセロハンをひきちぎり、耐熱カップに一合とって、大急ぎでチンします。戸棚の奥から、徳利をひっぱりだし、そろいのオチョコも探し出しました。

で、オリーブをつまみに、きゅっとやったんですが、熱燗を、台所の立ち呑みというのも、なんですかこう、落魄(らくはく)、テナ気分になりました。

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最近はカフェもテーブルに灰皿を置かなくなりました。

前菜は、野菜クリームポタージュ
主菜は、鱒(ます)のムニエル、じゃがいもピューレ、インゲン塩茹で

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