立ち呑み日記・絶品バーガー [ランチ]

いつものパン屋にいつものように行くと、カウンターにいつもはない丸パンが4つ、残っている。ふっくらやわらかそうで、上に白ごまのほかカボチャの種のようなナッツがぜいたくにかかっています。

「新製品?」
と、聞いてみると、
「ハンバーガーのバンズ、レストランの注文品の余りだよ」

コレハコレハととびつきましたね。うちはワルガキ二匹がお昼にいったん帰ってくるし、ハンバーガーといったら大好物です。

ふだんはスーパーのパンコーナーにある特売品のバンズで作りますが、それだって自家製ハンバーガーのおいしさといったら。

肉屋でたった今挽いてもらった肉をさっと焼いてはさむわけですから、ファストフード店のがパッサパサに思えてくるほどです。

作るのも簡単です。

フランスの肉屋の牛挽き肉は客の目の前で挽くものなので、一人前120グラムあて
「形成してください」
と、たのみます。

ひと昔前は肉屋のご主人が石けん箱みたいな型にぎゅっと押しつけて形成してくれましたが、今の肉挽き機は挽き肉が出て来る口がそのまま「型」になっているので、右から左に楕円形が出来上がります。

家に帰ってこれをひとまず冷蔵庫にしまい、フライパンをあつーくしておきながら、薄切りトマト、レタスの葉、それにケチャップとマヨネーズを目の前に準備。

バンズは火にかけた金網でかるーくあたためておきます。

家族一同が食卓に着いたところで冷蔵庫から楕円の挽き肉をとり出してジャッと焼き、薄切りトマトやレタスとともに一気呵成とバンズへはさみこみます。

ケチャップとマヨネーズもたっぷり。

挽き肉は挽きたてなので芯はレアで赤く残しますが、ハンバーガーの場合はでも、ある程度焼きこんだほうがバンズとの兼ね合いからおいしいようにも思います。

マ、このあたりは好みでありましょう。

クックパッドで見かけるレシピでは、バンズまで手作りなさる方がけっこうおられるようです。たかがハンバーガーとあなどるなかれ、なかなか大ごとです。

さて、レストラン仕様の焼きたてバンズ、どんなにスバラシイことになるでしょうか・・

・・結果から先に言いますと、期待過大、でした。

いえね、そりゃもう、まずいわけないんですヨ、しかしただその、なんといいますか・・・

いつもならフォークとナイフを用いて賞味する牛ひき肉ステーキと、ちぎって食べるパンとの合体にアグアグッと噛みつくうちに、
(こんなにもあわてふためいて口に押し込まないとならないとはどうも残念)
テナ気持ちに、なぜかなっていくんです。

(イヤイヤ、おいしいハンバーガーを食べているのだ)
と、思い直してまたひと口。するとまた、
(せっかくの肉と、それに上等なバンズ「なのに」、一気にかぶりつくのは惜しいなあ)・・

・・この矛盾はどこから来るんでしょうか。どうやったらこのジレンマから抜け出せるのか。ハンバーガーにはやっぱり、多少なりとも「ジャンク」の部分が残っている方がいいんでしょうか。


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歩きながらパチリ。目の前の橋は映画「ポンヌフの恋人たち」のポンヌフです。

前菜は、トマトとツナのサラダ
主菜は、鶏ロースト、じゃがいもロースト、いんげん塩茹で、グリーンサラダ

立ち呑み日記・コシのあるなし [ランチ]

焼きそばの麺を茹でるのにお湯を沸かしながら、つらつら考えた。

人類はなぜ、コシのある麺とそうでない麺とに好みが分かれるのか。

「麺はコシが命でしょうが」
と、ワタシなど思わないでもないですが。

「なん言いよーと(なにをおっしゃる)」
と、反論なさるのは福岡の方々です。
「麺はやわらかいもんにきまっちるじゃなか」

博多うどんといったらふわっふわのやわらか~なものなんだそうです。

「そうやに」
と、それに絶大な賛同をお示しになるのが、三重県の方々。

伊勢うどんもまた、箸で持ち上げるだけで切れそうなほどやわらかと聞き及びます。

「ほっこげな、じょんならん(あほみたいな、手に追えん)」
と、肩をそびやかすのが讃岐の人々。

これに反論するのはなかなかむずかしいです。讃岐うどんといったら、今や駅ビルなどどのフードコートにも必ず入っているほど盛況ですからね。

コシは無いがかたい、という麺も、またあるのだそうです。

岡山うどんがそれで、かたいので慌てて食べるとブツブツ切れるが、ゆっくり味わうと出汁となじんで「たんわりした」風味がたのしめるのだそうな。

どうです、日本国内でさえこんなに違う。

おのおの、他の地方の麺を「麺」とみとめるのは
「断じて許せぬッ」
とは、まあ、態度を硬化させなくても(表面的には)、
「アチラはアチラとしてウチらはウチらで」
と、好みは曲げないことでありましょう。

でもなぜそうなっちゃったんだか。

先ほどコシに一票入れさせていただきましたワタシはといえば関東圏出身ですが、生まれながらの「コシ派」だったわけではないように思います。

子どもの頃は、オカーサンがゆがいた乾めんにしても、コシは関係なかった。

たまさかに出前をとってもらえると、これなどのび加減が当たり前です。

時に家族で食事に出かける洋食屋さんのナポリタンしかり。茹であがりの麺をさらに炒めるわけですからね。

大学時代、学食の麺類にコシなどのぞむほうがどうかしてる。ですが、まさにこのころですね、コシに目覚めたのは。

街のそこかしこにスパゲッティー専門店が隆盛して、「アルデンテ」という茹で方が広まった。

そのころ関東圏では讃岐うどんのさの字も知られてませんでしたが、このとき「アルデンテ」が定着したからこそ、後に首都圏進出が果たせた、の、では、ないでしようか。

「アルデンテ」、イタリアの隣国だというのにフランスではまるで好まれないんですヨ。フランスはソフトめんのごとく、卵を練りこんでふにゃらーっとさせた麺が一般的。隣国なのになぜこうも好みが分かれてしまったのか。

日本の隣国の中国もまた、麺はやわらかいものみたいです。

パリのラーメン屋さんでかいま見ると、のびないよう私語はつつしみ一気呵成(かせい)とすすっているのは日本人、のびることおかまいなしにのーんびりおしゃべりしながら時に箸さえ置いてゆーっくり食べているのが中国人です。

さて、ただ今より茹でるのは中国仕様の生麺。

ワタシはコシが欲しいので、沸騰した鍋に重曹をざざっとこぼして茹がき始めました(こうするとかんすいの代わりになって麺がしまるんですヨ)。


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夕暮れの17時20分ごろ、ノートルダム寺院背後の公園にて。これからものの3分もしないうちにとっぷり暮れました。

前菜は、トマトサラダ、大根の葉のナムル
主菜は、的矢鯛の塩焼き、トマトソースマカロニ、いんげん塩茹で


立ち呑み日記・小皿のしょうゆ [ランチ]

「ぐちぐち、お小皿におしょうゆ残してるッ」
と、この夏一時帰国した折に居酒屋で再会した女子校時代の旧友たちに糾弾されたことを、お昼に焼き餃子を食べようとお小皿におしょうゆをつぎながら、思い出しました。

居酒屋でも焼き餃子をとり、やれうれしやとお小皿におしょうゆとラー油をたーっぷりとったんです。あろうことかワタシは少女のころ身に着けたはずのお行儀を忘れ去っていた。

ワタシたちの通っていた、そりゃァもう厳格では右に出るもののない女子校は、私学のことで田園に建つ学寮や臨海学校や十日もかける修学旅行など、泊りがけの行事がちょくちょくありました。

こういう時の三度の食事は、食べ物を大切にしてきちんといただくことを念頭に、
「ぜったいのぜーったいに」
残したらいけないことになっていた。

そのぜーったいのぜーったいは筋金入りで、お茶碗のごはんつぶは当然として、大根のつま一本、千切りキャベツの一片もお皿にはりついたままにはできません。

お刺身などで小皿にとったおしょうゆを余らせようものなら天下の一大事、お茶に落として飲む決まりでした。

「身体に悪いじゃない」
というお声が聞こえて来たようですが、しかり。

ではどうするべきというと、小皿におしょうゆを考えなしにたーっぷりとるのではなく、食べ切れる分量のみ、とる。

その分量を
「あらかじめ見極めなさい」
というわけです。

「お刺身のおしょうゆはほんのひとたらし、それも最後に大根のつまでしっかりぬぐうのがクセになったワ」
と、居酒屋でぴかぴかの小皿を前に、旧友。ワタシとて、当時はそれが当たり前でした。

あのころワタシは立原正秋が好きで、よくかぶりついていたものでした。

立原正秋の小説にはどれも作家自身を投影したような勁(つよ)く女にモテる孤高の男が登場し、最後に必ず、紬(つむぎ)の着物が似合い気品あって控えめながらも芯の強い女性と結ばれます。

この、紬の着物の美女が主人公の男を待つ間のふとした不安を描写する、鮮やかなシーンがあるんです。

おしょうゆの小皿を洗おうと水に浸けると、おしょうゆがぱっと水にほどけ二度と小皿に戻らないさまに、
(彼は二度と私のところへ戻らないのでは)とはっとする。

(食べ切れる分量だけお小皿にとってたらそうならないのヨ)
と、十代のワタシは得々と彼女におしえてあげたい心境でした。

「あたくし『おしょうゆケチ』なの」
と、岸恵子も以前、テレビのトーク番組でお語りになっていたものです。

大女優がパリに住み始めたころおしょうゆは貴重品で、お客様を家に招いて和食の一献の後、お小皿の残りを集めて濾し、家族の普段の食事に使ったものだそうです。

今やフランスでおしょうゆは普通にスーパーに並ぶまでになりました。

それで、というわけではないんですけどワタシ、お小皿につい、やらかしちゃう。ことにラー油と半々にするとき、どっちも足りない気がしちゃうんですよねえ・・

やはりそれはよろしくない・・

・・と反省しながらあれですが、本日も焼き餃子3ケには多すぎる量をついとってしまい、お小皿にラップかけて冷蔵庫にしまいました。


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半袖でもいいくらいのぽかぽかの一日、夕暮れてきました。

前菜は、クルミをのせたアボカド
主菜は、七面鳥ささ身エスカロップ(そぎ身)のムニエル、小粒じゃがいものニンニク風味ソテー、いんげん塩茹で、グリーンサラダ




立ち呑み日記・ペスト [ランチ]

お昼にスパゲッティーでも茹でましょうかネ、
と、鍋にお湯をぐらぐら沸かしていると、ワルガキ二匹が気配に気づき、
「緑! スパゲッティーなら断然、緑!」

緑とは緑色のソース、すなわち、「ペスト」のことです。「ペスト・ジェノヴェーゼ」が正式で、バジリコの香りが際立ち、おいしいですよネ。

そしてまことに経済的。

夏に日本に一時帰国した折にもしょっちゅうつくって食べましたが、「カルディー」でイタリア産がひとビン380円くらいで買えました。

日本産の、売り場にタラコソースなどと並んでいる袋入りはもっと安かったです。こちらは日本風味つけといいますか、どことなく昆布だし風味が奥にひそんでました。

欧州人の二匹はどちらかといえば、奥に何もひそまないほうが好みのようです。

パリのスーパーのスパゲティーソースの棚にもビン入りで種類がいくつかありますが、メーカーによって味が微妙に違います。

「『微妙』ですとッ、まるっきり違うじゃないですかッ」
と、本場の方々から叱られそうですが。

イタリアで「ペスト・ジェノヴェーゼ」という時は、ペストの本場リグーリア地方の原産地証明銘柄のみだそうです。

原材料も、リグーリア地方産バジリコ、松の実、パルミジャーノとペコリーノ(羊乳チーズ)、エキストラバージンオイル、と、決まっています・・

・・・ということは、真正「ペスト・ジェノヴェーゼ」となると格安どころかお値段張るもの、なの、かも、知れません。

ワタシがよく買っているスーパーの普及品には「ジェノヴェーゼ」の文字はありません。イタリアメーカーのは濃厚で、原材料名を見ると松の実のほかにカシューナッツがたっぷり折りこんである。

最近はフランスのスーパーが自社ブランドで出しているものがさらに安いので気に入ってます。こちらは松の実もカシューナッツもおしるし程度で、あーっさり。

(なるほどねえ)と思うんですけど、フランスには「ピストゥー」というペストの親戚が、あるんですヨ。ピストゥーのほうが、ペストの祖先らしいです。

ペスト・ジェノヴェーゼの本場、イタリア・リグーリア地方は地中海沿岸の、フランスから見るとニースを通り過ぎモナコに接するところから始まる一帯で、その陸続きでこちら側のプロヴァンス地方に伝わるのがピスゥーで、やはりバジリコとニンニクとオリーブオイルのソースです。

ただし、ピストゥーには松の実やおろしチーズは入らない。

ピストゥーは、白インゲン豆とマカロニ入りのミネストローネ風野菜スープに浮かべ、さらにおろしチーズをどっさりかけて食べるのが代表的です。

さて、スパゲッティーが茹で上がったので、ビンをパカンとあけてスプーンでかきだし、手早く和えたら出来上がり。(おかずはほかにオムレツと塩茹でブロッコリーです)

夏にマルシェで新鮮な生のバジリコが安く売られていたのでペストを手作りしてみたら、なかなかおいしくできました。

が、そのおいしさは瓶入りの格安品と寸分たがわぬおいしさ。

だったらバジリコを毟(むし)ったり松の実を炒って摺(すっ)たりと手間かけるよりは瓶入りを買った方が安くていい、と、思うに至りました。


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この日曜は素晴らしい小春日和でした。散歩しながらパチリ。

前菜は、トマトとニンジン千切りのサラダ
主菜は、フォーフィレ(牛肉)ステーキ、いんげん塩茹で、残り物のカレーライス、グリーンサラダ

立ち呑み日記・ラーメンセット [ランチ]

「日本人ですか?」
と、お腹すかせて入った、日本人街の和食堂のカウンターに着いたら、ほぼ同時期に隣りについたフランス人青年に話しかけられました。

「この店で日本人に出会うとはめずらしい」

ンなこたァないでしょう、
と、立錐の余地なく混雑している店内を見回せば、あれマ確かに日本人の姿はなく、フランス人や外国人観光客の家族連れ、アジア人にしても韓国語や中国語のガイドブックをテーブルに載いている人たちばかり。

この店は、ワルガキの日本語塾が退けた後など前を通るといッつも混んでいて、入ったのは今回が初めてです。

本日は近くで所用をすませ、時分どきを過ぎてお腹がきゅうきゅうにすいているところで
(ラーメンセット食べてくかナ)
と、前のめりに日本人街へやって来たんです。

するとまあ、3時も近いというのにどの店も大変な行列。

そのなかで比較的列が短かったこの店の、外の写真メニューにラーメンセットがあるのを再確認してすぐさま決めました。

とにもかくにも
「しょうゆラーメンと餃子のセット、おねがいしまーす」

「日本料理お好きですか?」
と、隣りでも注文が終わった青年に声かけてみると、
「大っっっ好き」

日本人街には毎日のようにお昼を食べに来ているのだそうな。日本人だったら、この向かいにある日本人経営による讃岐うどん屋のほうが好みなのでは、と、うがった分析もしてみせます。

「こっちの店はどちらかというと欧米人好みだと思うんですよ」

確かに、日本人は前菜として枝豆の小皿を一人一枚あて抱え、空になるまで手を休めることなくもくもくと食べ続ける、テナことしませんよネ。

日本人がこの店に来ないなんてことはないと思いますが。現に日本人のオバサン(ワタシです)がここにいる。

そうこうするうちに、青年の前に牛丼が来ました。

青年は、(あ、たのみ忘れてた)という感じに中国人のウエイトレスさんへ、
「アイスグリーンティーおねがい」

見回すと多くのテーブルで、抹茶をといたような飲み物が林立しています。のんでみようかな、と、思わないこともなかったんですが、マ、カウンターに置かれたカラフの水道水でよしとしましょう。

青年は、牛丼にお醤油をじゃんじゃんかけて食べ始めました。なんでまた、と、聞きたいところですが、個人の好みもあることですしね。

「つゆだく」という日本語をおしえてあげてもよかったんですが、厨房にもフロアにも日本人はいないところで通じるはずもなく、なんとはなしに「当店の牛肉はブラジル産です」という貼り紙を眺めます・・

・・とそこへ、いよいよわがセットの餃子が登場、次いでしずしずとしょうゆラーメンも来ました。

お味はというと、日本でいうならデパートの屋上やスーパーの軽食コーナーなどによくある感じの、可もなく不可もない、安定したふつーうのおいしさ。

が、あまりに前のめりだったからか、スープを一滴残さずさらってもなおオナカイッパイにならず、店を出たその足で向かいの日本風菓子パン屋さんでミニカツサンド買っちゃいました。


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今宵の晩ごはんの牛肉。焼く前に冷蔵庫から出して室温に戻しているところデス。

前菜は、野菜ポタージュ
主菜は、フォーフィレ(牛肉)ステーキ、じゃがいもソテー、いんげん塩茹で、グリーンサラダ


立ち呑み日記・韓国ランチ [ランチ]

久々に日本人の友だちとランチすることとなり、電話口で
「韓国料理が食べたいなあ」
と、言ってみたら、快く賛同をもらえました。

今よりずっと若かった、パリに住み始めの頃は日本人仲間とレストランへ行くとなればきまってアジア料理で、卓を囲んで日本語で盛大におしゃべりするのが珠玉のたのしみだったもンです。

が、ここへきて、日本語ピーチクはかわらずとも、必ずしも全員が全員、外でアジア料理を食べたがっているわけではないと気づきました。

なぜというに、外国生活が長くなればそれだけ台所に立つ機会が増えて腕が上がり、醤油ベースなどわれらがソウルフード・アジア料理は日常的に自分で作って食べられるまでになっているから。

「せっかくだし家では食べられないものにしない?」
というわけです。

ただ、ワタシの場合、韓国料理といったら家では食べられないものの部類なんです。心から残念なことにうちの家族は韓国料理の味つけが大のニガテなんですね。

辛いのがダメ。

「辛くない韓国料理だってあるでしょうが」
と、いうお声が聞こえてきたようですが、然(しか)り。

チャプチェなどちっとも辛くなく、醤油と胡麻油のよーくしみこんだむっちり春雨のおいしいことといったら、たまりませんよネ。

「まあね」
と、肩をすくめるのみのわが家族。「でもやっぱりステーキとポテトフライのほうが好きだナ」

さて、いよいよお出かけですが、韓国料理店は今やパリに美味しい店がたくさんあります。

ワタシがパリに住み始めた1980年代後半はめずらしく、そのうちの一軒は安くて美味しいと韓国人留学生の間でつとに知られているようでした。

語学学校の同級生キョンジャちゃんに連れられ、ワタシは生まれて初めて食べました。今でこそ日本で韓国レストランといったら身近でしょうが、当時は焼き肉どまりでしたからね。

人生お初の感想は、
(ニンニクがずいぶん利いてるもんだなあ・・)

キョンジャちゃんはこのとき、目の色かえて「ジャンジャンミョン(ジャージャーメン)」をたぐってました。味噌や醤油味かと思ったら意外にもビーフシチュー風ルーで、これが韓国では日本のラーメンのようなB級グルメなんだそうな。

そして韓国本国には、パリのようにジャンジャンミョンとプルコギがともにあるような店は存在しない、とのことでした。

日本にお好み焼きと寿司が並ぶ和食店がないのと同じですよネ。

今回友人と待ち合わせたのは、食べログで見つけたオペラ座界隈にある店。お昼のセットは、ナムルなど野菜三品がのった小皿と餃子四ツないしは烏賊の辛味サラダ、それにビビンバなどメイン一品の定食で、13~15ユーロ(約1600~2000円)。

最近は別添えのご飯茶碗でなくメインディッシュの洋皿におテンコ盛りにしたご飯がつくのがアジア系料理レストランの流行りみたいです。

友人と無事会え、メニューを検分して餃子と烏賊の辛味サラダを半分ずつ分けることにして、二人ともメインはチャプチェにしました。

友人は、つい先日の晩ごはんにもチャプチェを作ったところだそうです。


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ア、今日写真撮り忘れた、と、たった今窓からパチリ。なかなか寒くなってきました。

前菜は、カボチャポタージュ
主菜は、鶏ロースト、じゃがいもロースト、いんげん塩茹で、グリーンサラダ

立ち呑み日記・錦糸卵 [ランチ]

日本から遊びに来た友人から長期保存できる錦糸卵をもらいました。

こんなのあるんですネ。

デワデワ、たからのもちぐされにならぬよう、ともにもらったちらし寿司のもとといっしょにさっそく食べることにします。

日本のこういうスグレモノの食べ物をいただくともったいなくて後生大事と戸棚にしまいこみ、はっと気づくと賞味期限が切れている、ということが、これまで何度あったことか(泣)。

錦糸卵って、なんだか胸がワクワクしません?

薄く、細く、黄色いお素麺みたいながられっきとした卵焼きで、冷し中華もちらし寿司もお蔭で「感じ」がでる。

一度でいいから錦糸卵のおテンコ盛りを手づかみでわしっとほおばってみたいナー、と、ワタシなど子どもの頃夢見たものでした。

当然ながら、今にいたるまでその夢叶わず。

「では叶えて進ぜよう」
と、今不意に神様が現れて、おごそかに告げられたらどうでしょうか。

「・・・あのでもやっぱりいいです」
と、すぐさまお断りしそうです。

なぜというに、大人になって久しい今では錦糸卵ばっかりそんなには食べたくない。

かといって冷し中華やちらし寿司にまるっきりないのはさみしいです。やはり、ちゃんとあってほしい。それも黄色いのがたーっぷり散らされていてほしい。

「だったらわしっといきたいであろうが」
と、神様に追及されそうですが、わしっとは行きたくないんです。

ノドつまりそう。やはり、ほどほどがいいです。

錦糸卵を家で作る時、ワタシはこれまで成功したためしがありません。薄焼きオムレツの乱切り、テナ感じになっちゃう。

クックパッドで調べてみたら、乾かし焼きにするには焼き上がってもすぐにはフライパンからはがさずにしばしそのまま置いておくといいんだそうです。

「火の前で待っていると長く感じるのでその間別のことをします」
というアドバイスが穿(うが)っています。

で、パサっとなったところで悠然とはがし、くるくる丸める。そのほうが細切りにしやすいそうで、なるほど、これなら乱切りになりそうにありません。

錦糸卵どーっさりは子どもの夢だなあ・・と、重ね重ね思いますね。

いえね、はるか昔になりますけど、通っていた女子校に「感謝音楽祭」という行事があったんですね。両親はもとより保証人や恩師を大講堂にお招きしてコーラスを聞いていただく。

仕事のある方が来られるよう午後6時ごろから始まり、幕間に持参のお弁当を食べていただくんです。

「感謝をこめて出来るだけ生徒手作りのお弁当を」
とのことで、がんばる生徒も多かったです(ワタシは親に来てもらいお弁当なしでズルく逃げました)。

当日、ワタシの席の斜め前の級友が恩師をお招きして、手作り弁当を得意げに「どうぞ」と差し出しました。背後からのぞきこむと、素敵な曲げ木のお弁当箱に錦糸卵がみーっしり敷き詰められている。

ヘーエおいしそうとさらにのぞきこむと、錦糸卵の下はおかずもなく白いご飯のみ。

親や先生や保証人の年齢になってみれば、まぶたが落ちてくるようなコーラス発表につき合わされる上に生徒の手作り弁当はちょっとあれかなと思います。


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窓からパチリ。秋深まってきました。

前菜は、トマトサラダ
主菜は、残り肉(ステーキ)とじゃがいもの赤ワイン煮、いんげん塩茹で


立ち呑み日記・なつかしの味 [ランチ]

実家近くの中華料理店「S屋」に、念願かなってやっと行けました。

「S屋」といったら、子どもの頃のたまさかのお昼、
「とって食べましょう」
と、いうことになるともう天にも上るうれしさだったもンです。

当時、地元のワタシと同年代ならみんなそうだったと思います。

「S屋」といったら「S屋」のおじさんがオートバイの背後に岡持ちつけてやって来るもので、店に食べに行くなど考えもしませんでした。

ダンダンダンダン・・と、オートバイが近づいてくるのを玄関で耳をすませて今か今かと待つもどかしさ。玄関には早くも家で一番大きな四角いお盆が置いてあります。

「まだぁー、まだぁー」
と、さんざんッぱらやったころ、いよいよ、ピンポ~ン・・・

このときの興奮といったらなかったです。

「お盆に載せられないからちょっとどいて」
と、オカーサン(ワタシのオカーサンです)から叱られようと、顔をうんと近づけずにはいられません。

ラップでぴんと密閉された、ワタシの五目そば、オトウトのオムライス、同居の祖父のレバニラ炒めなどがいよいよ食卓にのります。

中学だか高校だかの学校帰り、「S屋」の冷やし中華が
「どうッしても食べたい、食べたいったら、食べたいッ」
と、茶の間で示威運動を繰り広げた結果、みごととってもらう幸甚を得たこともあります。

フチの赤いハム、キュウリ、玉子の細切りののったそれはオートバイに載って来たためやや伸び加減で、またそれが「とった食べ物」らしくて風情がありました。

その味をもう一度、というわけです。

「S屋」は、今は完全に絶滅した地元商店街から少し離れたところにポツンとあり、たまたま前を通りかかった時にいまだ健在と知りました。

ただし出前はもうやっていないもよう。

ここは駅から徒歩20分も離れた平々凡々たる住宅地だというのに店に人の出入りがなかなかせわしくあるようで、老母によるとタクシーの運転手さんにそれと知られているのだそうな。

人生お初、「S屋」のドアをガラガラ・・

「S屋」のおじさんの姿はもうなく、かわりに堂々たる雰囲気の女将が仕切っていて、傍らで若い女性が鍋をふっておられました。

女将は、おじさんのお嬢さんだそう。

「うちにもオジョーチャンみたいな娘がいるんだよ」
と、おじさん、岡持ちを片付けながらそういえば言ってたなあ・・

メニューを見れば、懐かしの五目そばもオムライスもレバニラ炒めもちゃんとあります。でもこの日はとても暑かったので、
「冷やし中華おねがいします」

おじさんのあの味かと思ったら、それよりもっとずうっと格段においしかったです。

高度成長期のあの当時とでは素材が違い、フチの赤いハムなどもはや存在せずもっと上等なハムが入っていて麺にコシがあり、盛り付けも目に鮮やか。

「S屋」のおじさんの心技を踏襲しながら、二代目の女将独自の手腕で店が繁盛しているのだとよくわかりました。

おいしくて、息もつかずにツルツル、あっという間につゆ残すのみとなったころドアが空き、
「ワンタンメン、固めで」
と、いかにも通らしいお客さんが入って来ました。

写真はしばしお待ちを。

前菜は、トマトサラダ、玉子豆腐
主菜は、鯵(あじ)の干物、いんげん塩茹で、ピザ

立ち呑み日記・食べ盛り [ランチ]

猛暑だった日のお昼前(ここ数日ゆるみましたよネ)。

スーパーに買い物に行くと、部活の仲間らしき15~16歳の少年5~6人が手分けして買い出ししているのに出合いました(ただ今夏の一時帰省で日本におります)。

リュウとして逞(たくま)しいこと。「エグザイル」みたいです。漏れ聞こえてきた会話によると、近くの河原でバーベキュー大会とあいなるもよう。

この暑いのにまあ、と、聞くだにひるみますが、電車から見えるその河原には気温36度もなんのそのでずらりと並んだテントからケムが上がっていて、冷房のきいた車内で「エッ」と思わずのけぞっちゃったほどです。

この暑いのにまあ・・

「特上カルビは予算的に無理だよな」
「一人一枚あて食ったってしょうがないだろ」
と、少年たちはやりあっています。

カートをのぞき見れば、鶏肉のパックが棚から全部とりましたというほどに山盛り。隙間には焼肉のたれが何本もつっこまれています。その下のカゴにはウインナーがこれまた山盛り。

食べ盛りですもンね。焼きそばにするらしき蒸し麺もまた別のカートにどーっさり入ってました。

野菜がまるっきりないじゃないの・・・・と思う間もなく野菜のカートがやってきました。キャベツ半身が4ケ、ニンジン2パック、きゅうりも3パックあります。キャベツとニンジンは刻んで焼きそばに、キュウリは丸ごとかぶりつくんでしょうか。

それにしてもこれ全部でいくらになるんだか。2万円はゆうに超えそうです・・そうはじき出したら、少年らに代わって心配になって来ちゃいました。

これ全部平らげたところでお腹の足しにもならないんじゃないかしら。

バーベキューといったらみんなでワイワイ立ち働きながら食べるわけです。立ち働くとなればますますもってお腹がすく。

部活でただでさえお腹空かせたところ、炎天下でさらに立ち働くとなれば食べても食べてもお腹イッパイに届かないはず。

予算などいくらあっても底なしです。

知り合いに名門国立大学アメリカンフットボール部の主将をつとめたヤングエリートサラリーマンがいるんですが、彼が後輩にご馳走する際のノウハウをおしえてあげたくなりましたね。

「うまい寿司ご馳走するぜ」
と、後輩の現役生らを太っ腹に誘う。

じっさいちゃんと寿司屋のカウンターに座らせるわけですが、その前にまず「吉野家」ないしは「すき家」になだれこみ、大盛りをガツンと食べさせておく。

「エー」と不満の声が後輩から上がると、
「お前らをいきなりカウンターに座らせたら俺の財布が危ういよ」
と、ホンネを吐露。

ケチな先輩となるどころか逆に大いになごみ、ではいよいよカウンターにつくとまず、にぎりの並を強制的に一人前ずつ。しかるのちに大トロだのイクラだのお好みとなるそうで、彼も先輩のやり方を踏襲しているのだそうです。

部活少年たちもまた河原に行く前に「松屋」ないしは「なか卯」で大盛りをやっつけ、しかるのちにバーベキューにのぞんだら
(いいのにねえ・・)
と、おしえてあげたい気持ちで眺めていると、
「餅も焼こうぜ」
と、一行は売り場探してさっさと行ってしまいました。


写真はしばしお待ちくだされ。

前菜は、トマトサラダ
主菜は、牛肉、帆立貝、ウインナー、ピーマン、ニンジン等の「焼き肉」、焼きうどん


立ち呑み日記・涼をとる [ランチ]

連日、20時過ぎてなお30なん度もある、パリ。(昨日の立ち呑み日記をご高覧ください)

涼をとるため、この週末はパリ市内五か所の大きな公園が深夜まで解放されたそうです。

どんな猛暑だって365日のうち長くても2週間ほど、しかも夏はバカンスに旅立つし、と、パリでクーラーがあるうちはまれで、暑いことおびただしいです。

また、付けようにも室外機を置く場所がない。

そこでてっとり早く着るものからとなるわけですが、道で見回すと老若男女ひと足早いバカンス仕様になってますナ。

朝晩は冷え込むし、南仏で見かけるような開放的な服装をしているのはふつう外国人観光客だけで、パリっ子は長ズボンやジャケット片手が多いものです。

仕事着ということもありますしね。

ところが今季はバミューダや薄手で露出のとても多いワンピースの人が、右向いても左向いても、いる。バカンス先で着ようとカバンに詰めこんだところから引っ張り出したんじゃないでしょうか。

それにしてもこう暑いとお昼に何食べたらいいんだか。

先刻マルシェの買い物帰りに通りかかったレストランのテラス席では、額の汗ぬぐいつつオニオングラタンスープをフーフーしているご夫婦を見かけました。

この炎天下になんでまた、と、アキレないこともないですが、こういう方々はおもに英国人観光客で、英国人にとってフランス料理といえばまずオニオングラタンスープのようです。

しかし、暑―いときに熱―い食べ物を食べるのは
「むしろよろしい」
と、いう方もおられますよね。

ワタシといたしましては、それは遠慮させていただきたい所存であります。

昨夜はカレーで、この暑さの中残りご飯を出しておいたら傷むので、冷蔵庫にしまいました・・

・・と、ここでピンと来たんですね。先日日本から遊びに来た友人からおみやげにもらった「冷や汁の素」で、食べてみよう。

冷や汁、みなさんご存知ですか? もともと宮崎県などの郷土料理で、21世紀に入ったころから全国区となった夏の冷たい味噌汁かけご飯。

ワタシも存在はもちろん知ってましたが、一度も食べる機会に恵まれませんでした。本場の冷や汁は、ほぐした焼き魚や刻み茗荷などを混ぜ込むものだそうです。

友人推薦の「冷や汁の素」は、つきぢ田村が監修している名料亭の味。どうです、まずいはずがありません。

そこで冷蔵庫から冷え冷えのご飯をとりだしてカフェ・オ・レボウルによそい、「冷や汁の素」のフリーズドライかやくの袋を切ってあけ、だし味噌の袋を切ってまたあけ、しかるのちに水道から水をじゃー。

スプーンでようくかきまぜ、牛乳がけコーンフレークを食べる要領で一気にいきました。口に入るたびに、涼しいこと。ピリッと辛味も利いて、おいしいこと。

が、汁かけ飯、さらには冷や飯でといったらアナタ、
「なんですお行儀悪いッ」
と、子どものころそれはもう叱られた食べ方で、おおっぴらに賞味するにはチクッとした罪悪感ぬぐいきれず、せっかくの涼と拮抗しちゃうところが、目下ワタシの課題ではあります。


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先日行ったアヌシーの旧市街です。日中は暑かったですが、宵からは涼しくてよかったナァ・・

前菜は、トマトとゆで卵のサラダ
主菜は、牛ステーキ、スパゲッティーペスト(バジリコ・砕いた松の実・パルメザン・オリーブ油のソース)、いんげん塩茹で、グリーンサラダ

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