立ち呑み日記・男子の巻きスシ [ランチ]

小学校が半ドンの水曜日のお昼、10歳のムスコがなかよし二人を招いて巻きスシパーティーをすると意気込みました。

パリではスーパーの冷蔵コーナーにもスシ(鮨、ではありませんぞ)を見かけるまでになっている今日この頃。

11時半に学校が退けたらその足でうちに来て、各自午後から習い事もあることで13時15分まで。その旨親御さんにも知らせたほうがよかろうと、招待状形式の手紙を書くようムスコに指示しました。

ムスコは千切ったレポート用紙に、言われるままにウナギののたくった字で必要事項をしたためましたが、きれっぱし二通は当日の朝の登校後にリビングに箒(ほうきをかけていたら、ソファの下からチョコ染みまみれで発見されました。

それでも二人はムスコともども意気揚々とやって来ましたヨ。二人ともおうちの人の了承をちゃんと得て来たと言います

ただ今フランスは10年来の熱波到来中で、家の中でも30なん度という大変な暑さ。

クーラーは一般的でありませんからね、上気した汗くさい三人が頭をそろえただけで家の中がムワンッと3度はさらに上昇しました。

おのおのひどく重そうなリュックをそのへんへ置く。ついでに暑いので靴とムワッとした靴下も脱ぐ。

リュックにはその日の授業に使うものだけ詰めればよさそうですが、
「家に置くと忘れる(ないしはなくす)」
「学校の机の中だと宿題の時忘れる」
という理由から流浪の民のごとく全財産背負っているもよう。

うちのムスコのリュックも岩みたいです。

さて巻きスシですが、「のりまきまっきー」という玩具を交代に使って好きな具を巻いていきます。玩具といっても二本の棒に通したビニールのキャタピラを棒でくるくるして、次いで海苔を巻き込んでいくとたちまちに出来上がるスグレモノ。

本日の具は、ツナマヨ、カニカマフレーク、短冊にしたあまからの卵焼き、キュウリと炒りごま、タラマ(ギリシャの魚卵とクリームりペースト)。

生魚は、この暑さで万が一があってはと避けました。

冷蔵庫には山椒和えの昆布の佃煮もあったんですが、フランスの子どもたちの口にはどうかと見合わせています。

さて、やり方をちゃんとおしえてあげようと、テーブルを取り囲むムワンッと熱を持った汗のかたまりをのぞきこむと、ムスコが得意げにさっそく説明を始めてました。

「好きに巻けばいいんだよ」

その説明通り、マチスくんは海苔を取り、短冊の薄焼き卵をみっしり並べています。

まず酢飯をのせるのよ、と、言いかけましたが、「好きに」ですもんネ、背後で見守ります・・

・・おっとそこで気づいたが、キミたち手ェ洗ったか。

まあ仕方ないとしましょうか、マチスくんは海苔にみっしりの短冊たまご、次いでキュウリと酢飯とをまるめた「スシ」をがぶりと盛大にほおばっています。

三人は交代でのりまきまっきーをくるくるしては口に運んでいるようでした。

そのあと、ベタベタの手をズボンで拭いて例によってwuiiUが始まり、帰り際にレミくんが「家の鍵をなくした」と上に下に探しまわるひと幕もありました。

鍵は、レミくんの半ズボンのポケットの中から出て来ました。


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長い歴史のある英語の本の古本屋さんの前でパチリ。手前左の緑色のオブジェは19世紀に百万長者のアメリカ人篤志家がパリ市にプレゼントした水道で、今も自由に汲んでいいことになっています。

前菜は、メロン
主菜は、牛肉団子入りカレーライス、いんげん塩茹で、グリーンサラダ

立ち呑み日記・udon [ランチ]

街中で汁麺を注文すると、ワタシはたいてい反省し、少なからず後悔しますね。

だったらそういう店に足を向けなければいいだけのハナシですが、昼時に所用で出かけた帰り、気軽なテイクアウト中華の前を通りかかったんです。

本日、パリは真夏日の30度越え。

ますますもって熱い汁麺日和からほど遠いわけですが、日陰の涼しげな窓際席でアジア美女が白いどんぶりの汁麺に向かっていたんです。

同じアジアでも、日本人とは食べるリズムが違うものですネ。

日本人は麺となるとのびるのを念頭に一気呵成とツルツルズルズル、間断をおかず食べ進みませんか。蕎麦しかり、うどんそうめんしかり、ラーメン、つけめんのたぐいもまたしかり。

ところが、どの国かは確定できないんですが、時に箸を置いてゆったりした時間の中で汁麺を賞味しているアジア人を一度ならず目撃しているんです。

今日もそうでした。湯気の立つ大どんぶりを前に、箸を置いてスマホをいじり、しばらくしてまた口に運ぶ。

それが目に入ったとたん条件反射で店内に吸い込まれたんです。本場アジア人が食べている店なら間違いない、と、天の声が聞こえてきた、気がしました。

この店は、カウンターで注文して前払い、しかるのちに席に着くシステムでした。

フランス語があまり通じない年配女性の店員さんから漢字ばかりのメニューとフランス語のメニュー両方が手渡されました。

蔬菜麺、というのになぜか心惹かれ、蔬菜とは野菜のことじゃなかったっけ、と、フランス語メニューで確認するとその通り。が、麺がudonと表示されている。

中華スープにうどんはあれだなあと、
「麺は黄色い中華麺でおねがいします」
と、いちおう申し出てみると、
「ウィー、ウィー、シノワー(そう、そう、中華)」
と、分かってくれたかそうでないか、女性店員さん。すぐさま割と長々した中国語で厨房にオーダーを入れます。

このあたりは、賭けです。

こちらの意向がちゃんと通じていたら中華麺にかえてくれる(日本のとは少々違いますけどネ)。そうでなければ先方の意向のままに来る。

賭けは、負けでした。ひやむぎほどの太さのudonが、それもうんとやわらかなのがみっしり。

澄んだスープは化学調味料も塩味も際立ち、背後からニンニクのパンチもきいて、ジャンク風のクセになるような味。

まずいかと聞かれればとォんでもない、では美味絶佳かというと、(・・・・ウムムム)。

思うんですけど、日本でラーメンといったら今でこそ店主こだわりの素材厳選にして逸品ですが、昭和の時代は店主こだわらずの素材平凡が、ことに町内のそれなど一般的だったのではないでしょうか。

ホラ、「ふぞろいの林檎たち」で、柳沢慎吾の実家がいまひとつぱっとしない中華屋でしたよネ。あれ、当時のラーメン屋の典型ではありますまいか。

今またそのパートいくつかが作られるとしたら、父親の年齢を迎えた柳沢慎吾店長率いるこの店は、食べログにひっぱりだこの「昭和の名店」になっているはず。


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今年初30度越えの今日はホント暑かったです。歩いてて信号待ちのときなど影探しちゃいました。

そこを当時のままというごとく、いまひとつぱっとしないながらまずいとも言えないのが、パリのよくある汁麺屋、の、ような、気がします。

前菜は、フムス(ヒヨコ豆ペースト)をラディッシュやセロリですくって。
主菜は、鮟鱇の頬肉ムニエル、にんにく風味じゃがいもピューレ、いんげん塩茹で


立ち呑み日記・サキマ [ランチ]

「自家製サキマあります」
なる店頭の黒板の文字に頭をひねりながら、近所に新しく出来たばかりのテイクアウト中華をのぞきこみました。

間口の狭いこの店舗、うんと以前は馬肉屋さんでしたが、長らく鎧戸が下りていたところ。

ホコリをかぶったなりの鎧戸がきれいさっぱりとりはらわれ、内装工事の間も、
(ここ何屋さんになるのかナ)
と、物見高く横目をつかっていたわけですが、テイクアウト中華といったら同じ通りにすでに一軒あるのでやや失望しつつ、それでもショーケースの品揃えにはいちおう興味があります。

そこへきて、「サキマ」なる未知の食べ物があるという。しかも自家製です。

「ご近所さんですか?」
と、店の中から見目麗しい青年が出てきて、生粋のフランス語で感じよく話しかけられました。

テイクアウト中華の店員さんといったらふつう中国人、それもつい最近フランスに来たばかりで言葉が九分通り通じない方が多いので、ちょっとびっくりして美貌の青年をまじまじ見つめちゃいました。

青年は身のこなし方もしゃべり方もフランス人そのものですが、よーく拝見するにうちのワルガキと同じく欧亜の血が混じっているもよう。

案の定、お父さんがフランス人、お母さんが中国人二世だそうです。

このテイクアウト店は、パリ市内の商業地区で母方の実家が経営する中華料理店の2号店だそうで、料理はすべてそこから毎朝届くそう。

なるほど間口に合わせて小さなショーケースには品数は少ないものの、パリによくあるテイクアウト中華にはないような料理が並んでいます。

たとえば、炒飯といえば判で押したようにグリンピースとさいの目ソーセージと卵が入っているものなんですがそうではなく、海苔と錦糸卵がざっくり混ざっている。

して「自家製サキマ」とは一体何なのか。

「サキマご存知ない?」
と、青年は素っ頓狂な声を上げました。「中国全土で最も一般的なお菓子ですよ」

小麦粉の揚げ玉をバットに広げカラメルとからめて固まったところを名刺大に切ったお菓子で、そのへんのスーパーで袋入りを気軽に買えるものだそうです。

北京風はこう、上海風はこうと各地で風味や形が違い、万事せわしい中国では一般家庭で手作りなどせず、市販品を買うのが一般的。

「でも、市販品はまずいんだなあ」
と、青年は顔をしかめます。「ボクに言わせりゃあれはサキマじゃない」

店にも出している母方のおばあちゃんの手作りこそが本物で、それ以外は認めないとまで断言します。

どれどれ、と、日本人のオバサン(ワタシです)もひとつ買ってみることにしました。名刺大が四つも入って1ユーロ(140円)です。

「サキマって、漢字ではどう書くのかしら」
と、尋ねると、
「ごめん、ボク中国語まるで解らない」

後で調べて知りましたが、沙琪瑪、シャーチーマというそうで、日本ではサチマとも呼ばれているそう。浅草の雷おこしみたいにさくっ、むっちりした素朴な風味で、いかにも手作りらしく甘味控えめです。

ついでにお昼ごはんも調達しちゃいましたが、マーボー茄子がことのほかヨロシかったです。


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ただ今街路のマロニエ真っ盛り。

前菜は、トマトサラダ
主菜は、鯖塩焼き、いんげん塩茹で、いんげん塩茹で、白飯




立ち呑み日記・絶対無二 [ランチ]

SNSに友人があげた味噌ラーメンセットの写真をくいいるように見つめながら、考えた。ラーメンとは、なぜこんなにも狂おしいのか。

「今から食べまーす、イタダキマース」
と、フェイスブックなんかでラーメンの写真をみなさんもよくお見かけになることと思います。

ワタシもです。ワタシなどそのたびに画面いっぱいいっぱいまで大きくしてじーーーーーっと見つめます。

つやつやでパリッとした焼き海苔がきわ立ち、その下方で汁の中に見えつ隠れつしているちぢれ麺。味噌ラーメンセットの汁はいかにも濃厚にとっぷりした色をたたえています。うすもも色のチャーシューが水面に沈下し、うず高く盛られた刻みネギの横にはキツネ色のメンマ。しかもラーメンどんぶりに並んで、カリッと焼けたセットの餃子がつごう6ケ。

「セット860円です」
とのことで、これをユーロに換算してハアとため息つかずにいられません。

860円といったら6ユーロ、パリでこの値段ではセットどころかラーメン単品でも食べられません。

ついこないだ日本人街のオペラ座界隈で吸い寄せられるごとく入った、味噌ラーメンが評判という店のラーメンセットセット(餃子6ケ付き)は12ユーロでした・・・ということは倍の値段ですぞみなさん(どんッ、と机を激しくたたく)。

とはいいながらパリは大きな街ですから、ラーメン屋は一軒と言わず、あります。

「A店よりB店のほうが好き」
と、それこそえり好みできるくらいは、ある。

それだというのに「ラーメン」と言われると浮足立つんですね。これはいったいどうしてなんだか。

「この一球は絶対無二の一球なりッ」
と、松岡修造さまがウインブルドンに出場した試合の真っ最中に、信条を大声で吐露していたことに自身はまるで気づいてなかった、と、過去のVTRを見ながらのトーク番組でおっしゃっていましたが。

「この一麺は絶対無二の一麺なりッ」
と、ラーメン屋ののれんをくぐる時のワタシは、そこまでの心持ちになっているんです。どうかすると松岡修造さまと同じく自分で気づかないまま声を張り上げていた、かも、しれない。

(それがいけないんだろうなあ・・)
と、今更ながら反省しましたね。

熱に浮かされたごとくラーメンどんぶりをかかえ、無我の境地で汁と麺を交互に味わい、おいしくておいしくてたまらないなか迎える終焉・・

(別のラーメンにすればよかったかもナ)
と、今の今まであんなに熱狂したというのに最後にかなッらず、軽く後悔するんです。しょうゆラーメンなら塩ないしは味噌を恋い、Aの店で食べたのならBへ行けばよかったと思い残す。

なぜ、素直に充足できないのか。

「最近近所に出来た行列店に行ってみたよン」
と、時同じくして幼なじみがやはり、い・か・に・もおいしそうな正油ラーメンの写真をフェイスブックにあげていました。
「並ぶほどの味でもなかったよ」

幼なじみにつくづく敬服しましたね。絶対無二の一麺などまるで求めてないこの気軽さ。

今後はワタシも気追わずにラーメンにあたろうと思います(と、味噌ラーメンセットの写真をじーーーーーッと見つめる)。


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今日の写真撮り忘れた! と、窓からお向かいの建物をパチリ。

前菜は、ニンジン千切りサラダ
主菜は、トマト・赤ピーマン・キャベツの肉詰め、いんげん塩茹で、カレー風味ミニマカロニ


立ち呑み日記・クレープ [ランチ]

「お昼にしょっぱいクレープが食べたい」
と、12歳のムスメが言い出したので立ち食いクレープ屋へ行くことにしました。

「しょっぱい」クレープとは、ハムやなんかのはさまっている、お食事になるクレープ。

東京でも最近はホイップクリームの原宿風だけでなく、蕎麦粉生地の本格派クレープリーが目白や表参道などお洒落な界隈で繁盛していると聞きます。

お値段もなかなかだそうですってネ。

フランスでクレープは、土地が痩せてぶどうの栽培が出来ず蕎麦の実の産地であるブルターニュ地方の名物で、パリからこの地方への玄関口、モンパルナス駅周辺にはクレープ屋横丁があります。

蕎麦粉のが、ムスメ言うところの「しょっぱい」クレープ。

ブルターニュ地方においてクレープリーはたとえるなら回転寿司ぐらいの気楽さと安価で、
「ハム!」「次はたまご」「今度はチーズいっちゃおうかな」
と、単品の具でどんどんおかわりしていくものだそうです。

が、ブルターニュ地方以外ではふつうこの方式はとりません。

推測しますに、パリなどこのやり方に慣れない土地では単価の安いところ一、二枚のみとって長居され商売あがったりになるばかりだからではないでしょうか。

そこで「ハム・チーズ・ほうれん草」など一枚にはさむ具材を増やして単価をつり上げ、かつ、一枚でオナカイッパイになるようにできているんだと思います。

モンパルナス駅近くのクレープ横丁もあんがいいいお値段です。

そこいくと屋台はサンドイッチのお値段。こういう屋台では蕎麦粉でなくしょっぱいのも甘いのも小麦粉です。

うちの近所は学生街で、立ち食いクレープ屋といったらつくだ煮ができるほどあるんですヨ。そのなかでも行列が途絶えない屋台が、あるんです。ここの盛りのよさは他の追随を許さぬほど。

行列のしっぽをつかみメニューの看板を見上げてグーと鳴りだした胃袋と相談ですが、「卵・ハム・チーズ」にムスメもオカーサン(ワタシです)もいたく心惹かれました。

偶然にもわれわれの前に並んでいた革ジャンの青年二人組も同じものを注文したところ。

円形焼き台に半分に折ったクレープが二つ置かれ、まず隠し味の薄切り玉ネギがパラリ、その上から卵を割ってフォークでかき混ぜるようにならします・・

・・その横の焼き台にも半折クレープが二つ置かれました。やれうれしや、こっちがわれわれ親子のぶん。

卵におおむね火が通ると、おろしチーズをまんべんなくどーっさりいきます。この上からハムです。塩・コショウをパッパッパッパッと気前よくやり、この屋台ではレタスとトマトのサービスもあるので、
「たーっぷりおねがいします」

ずいぶんな嵩(かさ)になったところをヘラで返しながら折りこむと、誇張でなく仏和中辞典ほどの厚みになります。

お会計して、持ち重みするところを受け渡され、デワデワ
「いただきまーす」

隠し味のスライス玉ネギがきいてとおってもヨロシく、お腹にズシンときました。

が、ハムに塩気があるところに加えての塩パッパッは午後いっぱい尾を引き、喉の渇きといったら灼熱の砂漠にいるがごとくでほんとうに弱りました。


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いよいよ四月に入った夕暮れ時。

前菜は、トマト・さいの目キュウリ・千切りニンジンのサラダ
主菜は、七面鳥腿肉ムニエル(粉ふって焼く)、ベシャメルソース、ミニマカロニ、カリフラワーといんげんの塩茹で

立ち呑み日記・ラビオリ [ランチ]

給食のない水曜日、お昼は
「ラビオリが食べたい、食べたいったら食べたいッ」
と、示威活動に精を出す10歳のムスコ。

みとめましょう、と、スーパーへ走りました。

ラビオリってホラ、ひと口大の四角い具入りパスタ。フランス人は大好きで、給食にもよく出ます。

それどころか缶詰ラビオリとなると格安でB級グルメ以下のC級、スーパーでどっさりカゴにとっていようものなら、
(このひとそういうヒトなのね)
という烙印を押されるまでの食べ物です。

そういうヒトとはどういうヒトかといいますと、日本でいうならスーパーでカップラーメンばかりをどっさりカゴにとっているようなヒト。

ただ、カップラーメンの場合は
「食べ比べしてフェイスブックに載せるつもりなんだよね」
というそぶりもできましょうが、缶詰ラビオリは種類も少なく、食生活の貧弱さが一目瞭然です。

オカーサン(ワタシです)はやはりなんとなく缶詰には手が伸びず、もっぱら冷蔵棚のラビオリを選びます。メーカーもいろいろ、リコッタチーズ&ほうれん草、ハム&チーズ、ミートソース等々具もいろいろあります。

パックには「二人前」とありますが、うちの二匹は一人でひとパック分ぺろっといっちゃいます(本日はミートソースにしました)。

あのひとパックが二人分とは食べ盛りでなくても少ない気がするくらいですが、本家イタリアではおそらくこれだけでオナカイッパイにするものでなく、パスタですからプリーモ・ピアッティ、すなわち前菜として腹三分で口に入れるものなのでありましょう。

フランス人はラビオリでガツンとオナカイッパイにしようとします。

三分ほどさっと茹がいて出来上がりで、オリーブオイルをかけまわし、めいめいの皿に必ず食べることになっているブロッコリーをあらかじめ盛り付け、「お昼ですよー」

・・ほかほかの茹で上がりを横目にふと思ったんですが、日本でラビオリって一般的とはいまひとつ言えませんよね。

いったいどうしてなんだか。

「日本には餃子があるからネ」
と、天の声が聞こえてきた、気がしましたが、ホントのホントにそのせいだけでしょうか。

確かにグーグルを見ると日本語のラビオリの情報は37万4000件、餃子は3千8百10万件、ケタが違います。

でも、ラビオリと同じイタリア発祥のスパゲッティーを考えてみてくださいナ。

日本にはもともとうどんやそうめんやそばがあるのにスパゲッティーはいまや国民食というほどなくてはならないものになっているんです。明太子スパなど独自のメニューも定着、「サイゼリア」だってあれだけ繁盛している。

ラビオリはなぜその時流に乗れなかったのか。餃子に追いつき追い越す日は未来永劫来ないのか。

思いまするに、スパゲッティーが家庭に入り込む過程に、「和風スパゲッテイー」がありましたよね、すなわち、醤油味。

他の追随許さぬ餃子もまた、たれに醤油は欠かせない。

つまるところそこじゃないでしょうかネ。ラビオリを日本で不可欠とするには醤油だれを開発する必要がある・・

・・と考えるとよけいに餃子にはかなわない気がしてきました・・


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黒いビニールはリュクサンブール公園のこの鉄条網の外側にずらららっと展示される写真です。夜はライトに照らされ、散歩しながら鑑賞するのはなかなかたのしいです。

前菜は、トマトサラダ
主菜は、牛挽き肉ステーキ、簡易クスクス、いんげん塩茹で




立ち呑み日記・給食ワンタン [ランチ]

なべ底に残ったカレーをこそいでワンタンのカワに包みカレーサモサにした、そのワンタンのカワが袋に半分も残っている。

これが中国人家庭ならすぐさまワンタンスープが出来上がることでしょう。

じっさい語学学校時代のクラスメートのワンさんなど学校帰りに屋根裏部屋の下宿に遊びに行ったら冷蔵庫をごそごそしてスーパーで買ったハムを取り出し、あっという間にワンタンスープをつくってくれたくらいです。

具は、ありあわせのハムとネギを包丁でとんとんしたもの。固形スープでさっとゆがいただけですが、すごくいい味でした。

同じようにやればいいんでしょうけど、なぜか機会を逸しているんですね。

残り肉とワンタンのカワでラザニアにする、というテもあります。が、他の残り物もある都合上、そうもいきませんでした。

さて、残ったワンタンのカワ、どうしよう。

こうやって後手後手にまわして冷蔵庫に放置し、はっと気づくと黒いカビが点々とついていることがこれまでに何度かありました(泣)。冷蔵庫のものをだめにすることぐらいくやしいことはありません。

そこで意を決して、オカーサン(ワタシです)がお昼に片付けようと心に決めました。

(給食に出たなあ・・)
と、遠―い小学生時代を思い出しましたね。

ここはひとつ懐かしの味の再現といきましょう。

懐かしの給食のワンタンスープは、具が多かったです。いちょうに切ったニンジンやダイコンや、鶏肉のつみれなんかがたんと入ってました。

そして肝心のワンタンはといえば、本来なら鶏肉のつみれあたりを包んでいてしかるべきなのに、なぜか単体で、それも数枚がくっついた形で入っていた。

(これじゃワンタンのカワスープ、それもくっついたワンタンのカワスープだよなあ・・)
と、小学生のワタシは先割れスプーンでツンツンしながら心の中で独りごちたものです。

なぜ口に出して言わなかったかというと給食の時間は私語禁止という決まりになっていたんですね。

調理の方がワンタンのカワを一枚ずつパラパラ鍋に落としていたらあんなにはくっつかなかったはずです。

くっついたワンタンのカワのスープ、ところがどうしてどうしてなかなかよろしかったんですヨ。

なにしろ食べ盛り、ピラピラとたよりないところをツルツルのみこむより、ゴロンとかたまったところへムニュウと歯を立てるほうが格段に「食べたーッ」という気がします。調理の方はそのあたりを見越してわざと数枚ずつまとめて鍋に投げ込んでいた、の、やも、しれない。

あの味をもう一度と、数枚ずつまとめてスープの中に落としてみました。なにしろそのほうがはけますしね。

結果から先に言いますと、ワンタンのカワがゴワゴワくっついて食べでがあり、申し分なく昭和の給食風になりました。

先割れスプーンはないので普通のスプーンででも十分趣が出ました。食パンもあいにくなかったので、固くなったバゲットを浸してみたらこれもヨロシかったです。

が、「牛乳を合いの手に」というのが今となってはどうッしても、できませんでした。


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いよいよ2月の学期休みになりました。

前菜は、クマト(青黒く甘いトマト)とオイルサーディンのサラダ
主菜は、残り肉のスパゲッティーミートソース、いんげん塩茹で

立ち呑み日記・たのしい土曜日 [ランチ]

土曜日に楽しかったことを、思い出してみようではありませんか。土曜日は、うーんと楽しかった。日曜日よりずーっと楽しかった。

なぜというに、翌日が日曜だから。日曜は、「サザエさん」が終わったら月曜のこと考えてないとなりません。

そこいくと土曜日は、「全員集合!」がある。「欽ドン」がある。「キイハンター」まで起きてても叱られなかった(後に「アイフル大作戦」「Gメン75」)。

土曜日は学校が四時間で給食もなく、四時間目のチャイムが鳴るとすぐさま掃除が始まります。そして帰りの会を経て、家路につく。

このときの、きゅうきゅうと目がまわりそうなお腹の空き具合が「土曜日ッ」という感じでしみじみよかったです。大人になると、あそこまでお腹空かせることってそうないんじゃないでしょうか。

帰り道に、友だちと肩を並べて何の話をしたもんだか。「しりとり」なんかもしたと思います。

「お昼オムライスだといいなあ」
なんて「夢」も語った。

「じゃあね」
と、曲がり角で友だちと別れて一目散に帰ります。

お待ちかねの昼ごはんは何だったでしょうか。ヤキメシ(だけ)、そうめん(だけ)、即席ラーメン(だけ)、などだったのではないでしょうか。

「ブロッコリーは残さず食べます」
と、今のオカーサン(ワタシなどです)が目を光らせるようには、当時のオカーサンはお昼ごはんにはそう神経をとがらせなかった気もします。

そもそもブロッコリーが出回ってなかった。

近所の「第一パン」で買って来たチョココルネとメロンパン(だけ)、なんてことも、ふつうにありました。

あのころのお弁当がだいいちポラ、お弁当箱の八割がたがご飯で、おかずちょびちょびだったですよネ。

忘れもしない、上野動物園にカンカとランランがやって来たころ、学校行事の関係で給食がなくお弁当の日があったんですが、級友の一人がご飯とおかずがお弁当箱に半分半分のお弁当を持って来たのでみんなでのぞきこんだものでした。このころを境に、お弁当はおかずの分量が増えて行きます。

子どもの空腹はあっという間に充たされ、さて土曜の午後いっぱい何するか。

エド・サリバンショーの再放送あたりを、まず観た気が、します。当然、自分が観たくて観るわけじゃないんです。オカーサンがテレビのチャンネルを合わせるから自然に目が行く。子どもにはそうおもしろい番組でもないんですが、だらだらとテレビにかじつきました。

「あーそーびーまーしょ」
と、やれうれしや昼ごはんをすませた友だちが呼びに来る。

このあとは五時まで、家の前の砂利道でゴムとびしたり、缶けりしたり、誰かの家でリカちゃんで遊んだり。

「月曜の宿題は今日のうちにやっちゃいなさい」
と、今日ビ、うちのワルガキなどは追い立てられしぶしぶプリントなどとり出しますが、ワタシは土曜日に教科書とり出したことなど、なかったなァ・・

・・・とまあ、遠い日に思いをはせながらいつものカフェテリアでワルガキの日本語学校を待つ土曜の昼下がりでございまする・・


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ずいぶん細く見えるなあとパチリ。

前菜は、トマトサラダ
主菜は、牛肉とにんじんの赤ワイン煮、蒸しじゃがいも、グリーンサラダ



立ち呑み日記・昼のスープ [ランチ]

晩ごはんにカボチャのスープが
「食べたい、食べたい、食べたい」
と、三日とあけず騒ぐワルガキ二匹。

つくるのはうんとカンタンです。

日本のもっくりしたカボチャではなく、よくハロウィーンの写真に出て来る大きなオレンジ色のカボチャから八百屋でひと切れ切り分けてもらいます。

鍋と人数にもよりますが、オジサンの胸に抱えきれない丸ごとから十分の一ぐらいでしょうか。八百屋の店頭にはふつう最初からこのくらいで切り分けてあります。

真ん中の部分にもしゃもしゃした髭に絡まった、種。

カボチャの種といったら中国などではかっこうのおやつで、からっと炒ったところを前歯で縦に割り、中の実を食べます・・
・・ト、理論上はワタシも食べ方を把握しているんですが実地面で難があり、毎度(もったいないなあ)と思いながらも、もしゃもしゃごと除去します。

実地面の難とは、前歯で縦に割るというそのコツがつかめないんですね。今回も仕方ない、捨てちゃいます。

このあとは大まかに切り分け、手に力を入れてカワをむき、表面をうっすらけずりとります。ホラ店頭でホコリなんかも浴びてますからね、万が一の衛生面を考えてのことです。

あとは適当に切って鍋にほうりこみ、ほんのちょっぴりの水を底にはって砂糖をぱらっとやり、フタして火にかけます。

日本のカボチャと違いしばらくするとぐずぐずになりますから、木べらでくずしてバターちょんちょん、牛乳注いで、手動ミキサーで、ガーッ。

あとは沸騰させないよう火にかけておくだけで出来上がりです。

カボチャのスープは、うちのワルガキのみならずフランスの子どもたちの好物みたいです。「好き好き大好き」の声をよく耳にします。甘くてデザートみたいで好き。野菜がカボチャしか入ってないところが好き。

子どもって素朴な味を好みますよネ。カボチャのスープに、よかれと思ってエシャロットやらナツメグやらを加えるととたんに「うげげ」とやられちゃいます。

で、そんなにも好きなカボチャのスープなんですが。

お昼ごはんに出て来るのは
「やだ、やだ、ぜったいやだ」
と、こうなんです。

なぜというに、きゅうきゅうにお腹が空いているところ、水分でどぶどぶに胃袋が重くなるのは、
「いらいらする」。

お昼はオムライスなりお肉と付け合せなりで胃をガツンとなだめたいというんですね。

(そうだったなあ・・)
と、遠い日々を思い出しましたね。

「胃に直接注入できないかなあ」
と、ことに体育の後のお弁当で、学校でたのむハムカツパンにかぶりつきながら級友の1人が言っていたものです。「噛んで嚥(の)むのがもどかしい」

フランスパンのサンドイッチを
「あーもう、おいしいけどお弁当にこれダメってママに言わなきゃ」
と、もぐもぐしながら身もだえししているコもいました。

フランスパンはおいしいけどしっかり噛まなきゃならない、今は一刻も早くガツンとオナカイッパイにしたい・・

大盛りラーメンライスとW餃子セット、なんていうのにかぶりつく時も、青少年の場合は大人の塩分調整とはもうひとつ別にスープを大方残す、んじゃ、ないでしょかネ。


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パン屋に並びながらパチリ。

前菜は、さいの目エマンタールチーズとトマトのサラダ
主菜は、牛肉とにんじんの赤ワイン煮、ミニマカロニ、いんげん塩茹で


立ち呑み日記・英国式昼食 [ランチ]

「ロンドンで食べた朝ごはんがまた食べたいなあ」
と、12歳のムスメが言うので、よしきたッ、と、お昼ごはんにつくることにしました。ムスメは学校が近いので、お昼はいったん帰って食べるんです。

英国風朝ごはんといったらかりかり焼きベーコンと目玉焼き、それにベイクドビーンズが三種の神器。

「焼いたトマトと炒めたマッシュルームも忘れられちゃ困ります」
と、イギリスの紳士淑女に正確を糺(ただ)されそうですが、つけ合わせの野菜は前夜のいんげんとカリフラワーの塩茹でが残ってますから、これをチンして代用とさせていただく所存であります。

あれもこれもお昼から料理するのも骨です。

さてそうと決まれば肉屋でベーコンを切ってもらいます。

フランス語で言うところの「ラール」とベーコンははたして同一のものなるや? と、いうのが、実を申しますとワタシのかねてよりの疑問でありました。

「ラール」は豚の胸三枚肉塩漬けで、長方形のデンとしたかたまりから薄切りにすると日本でもおなじみのベーコンの姿になります。

が、それとは別に、茶筒ぐらいの円筒形で、白い脂身のほとんどない、赤身でいかにもあっさりしていそうなのをその名も「ベーコン」として並べているんですヨ。

この違いは何か。

「ベーコンはこれ。ラールはあれ」
と、肉屋のお兄さんとはハナシがやや噛み合いません。

そこをしつこく問い詰めると、
「ベーコンは肩肉の塩漬け。部位が違うよ」

ショルダーベーコン、と、日本では呼ばれて区別されているものらしいです。

ベーコン、と、英語でお墨付きが出ているわけですから、本日のところはこっち(ショルダー)を買ってみます。

さて、英国でベイクドビーンズといえばハインツが有名すぎるほど有名だそうですが、スーパーには格安ブランドもあり、円にしてひと缶二、三十円というおどろくべき安値だそうです。

「底辺の食事だよ」
と、英国留学が長かったフランス人の友人が涙目になって言っていたものです。

彼は学食で食べるお金もなくなるとポケットの小銭かき集めてこれを買い、人目のつかない低木の陰などでイジイジ食べたものだそう。

格安品とはいえ本来は温めてお皿にとりわけて食べるべきものを、冷え冷えのまま盛り付けもせず学食から無断で拝借したスプーンをじかにつっこんでかっこむ落魄とわびしさ・・

「ベイクドビーンズなど二度とお目にかかりたくないのさ。幸いフランスのスーパーにはないしね」

しかしそれでは本日の英国風が精彩に欠けることになります。

スーパーの缶詰棚に目をこらしてみると、「白いんげん豆のトマト煮」が、ありましたありました! しかも格安の格安とまではいかなくとも、ごく普通に缶詰値段。

缶詰はフォアグラなど特別品でない限り庶民値段です。

さてこれらと目玉焼きで、お昼のなんちゃってイングリッシュブレックファストが完成したわけですが、やはりビーンズの味が違うように思いました。

英国の、三日続けると慣れて今度はやみつきになる味でなく、フランスの、三日続けると飽きる味といいますか、南仏料理のカスレをほうふつとさせる口ざわりでした。


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(寒いなあ・・)と、バスを待ちながらパチリ。バスチーユ広場の塔です。フランス革命の後の王政復古に反対する7月革命の記念に建てられたものです。

前菜は、バジリコ風味トマトサラダ
主菜は、残りもののカレーライス、赤と緑のパプリカグリル焼き

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