立ち呑み日記・眠い風邪 [困った!]

無断のお休み誠に失礼いたしました。カゼひいておりました。もンのすごーくねむーいカゼでありました。

そもそもは11歳のムスコがもらってきたんですね。

その日、ムスコはお昼に大好物ビッグマックにかぶりついたんです(前回の立ち呑み日記をご高覧くださいませ)。

いつもならもう目の色変えて、傍(はた)で見ているこっちが窒息しそうな勢いでかみつくんですが、いつになくちゃんと味わっている。

(そうよ、これからもそうやって食べてちょうだい)
と、ほめてやりたい心持ちでした。

が、これが前兆でありました。

午後、日本語塾へ向かう道すがらいきなり、
「眠い」
と、時にしゃがみこみそうになりながら目をこすり出した。

「これから勉強だっていうのになんですかその態度はッ」

ところがその翌日から、まったく同じことがオカーサン(ワタシです)の身にも起こったんです。もう、もう、眠くってかなわない。二匹を学校へおくり出すと、即座にベッドへUターンです。

そもそも朝起きても服をちゃんと着たら身体がしめつけられ苦しい気がして、ズボンはあれとしても上はパジャマを隠すようにセーターでお茶を濁しているほどです。

風邪ひいて眠る時って、昏(くら)い底なし穴へ落ちていく・・テナ感じの息苦しさが、ありませんか。

今回はそういうのが一切ないんです。枕に頭をつけると、実に心地よく、フーンワリ眠りに吸い込まれていく。これを極楽と言わずして何が極楽。

温泉旅館の夢さえ見ちゃいましたヨ、檜(ひのき)づくりの大浴場が目の前に広がり、足元に透明なお湯がひたひたと打ち寄せてくる・・

・・このお風呂につかっちゃったら年甲斐なく(あるいはそろそろそういうトシか)粗相しちゃうナと深層心理で思ったかどうか、湯気のたつ水面を睥睨(へいげい)したのみで目が覚めました。

目が覚めるも、今一度頭を枕に沈めてみるとまたしてもフーンワリ夢心地・・

・・しかしこの気持ちよさが同時に最大の「つらさ」でもありました。惰眠を貪っているという後ろめたさといったらありゃァしない。

起きなきゃ、と、心にムチ打つも、心地よさに抗えません。でもこれじゃいけない、いけないったら、いけないッ・・

熱が出ているわけでなし、咳鼻水も出ず、身体のふしぶしだってモンダイなしとなれば安静の必要などなし、わが身を起こせ、さあ、さあッ!  と、どんなに自己を叱咤激励しようとも、ダメったらダメ。

それでもオカーサンというのは終日寝ているわけにもいかず起きて家事をこなさなければ家庭がまわらないんですが、その間もひたすらにふっくらした我が枕を恋う。

同時に、
(これじゃただのダメ人間じゃないのッ)
と、深―く深―く反省もする。

数日間こんな調子でしたが、今朝目覚ましでガバッと起き上がった瞬間、枕は夜まで
「他人の関係」
という、いつもの心境になってました。

ムスコはおなかに来る風邪で学校を一日休みましたが、次の日のお昼には自家製ハンバーガーをまたぞろ噛まずにのみこむ勢いに戻りました。

カス写真でも入れたいんですが、いつもと同じにしてるつもりなのに「容量を越えています」とのこと。しばしお待ちくだされ。

前菜は、トマトとさいの目エマンタールチーズのサラダ
主菜は、七面鳥腿肉ロースト、レンズ豆煮込み、いんげん塩茹で、スパゲッティーミートソース(の残り)

立ち呑み日記・バーター [困った!]

(どうせイマイチだろうな)
と思いながら買ったすぐりのジャムが案の定、ビンに半分残ったなりになっている。

半分まで食べすすめたのは、購入主であるオカーサン(ワタシです)。

ひょっとしたらひょっとして意外にもヨロシイかも、と、最初のひとすくいには期待もあったんですが、そこから先は惰性です。すぐりのジャムらしい甘酸っぱさはあるものの、香りがひとッつもない。

なにしろ格安の大量生産品。おいしいほうのジャムを切らしたので、急場しのぎにカゴにとったんですヨ。

こないだチーズ屋で買ったジャムがことのほかヨロシく、パンやクラッカーにどっさりのっけてぱくぱくいきましたからね。

フランス南西部などでは塩味のきいた羊乳チーズを薄切りにしてジャムをのせて食べるので、チーズ屋にジャムが置かれていることはままあるんですヨ。

パリでは、スーパーのジャムは2ユーロ(約270円)、チーズ屋などで扱う小生産者のものが5~7ユーロ(700~1000円)、と、いったところでしょうか。

値が張るからヨイというものでもなく、こういうものは相性でありましょう。格安品だからといってひどくまずいというものでもない。

ただ、おいしいのとそうでもないのが卓上にあればおいしいものばっかりはけていくのは自明の理です・・

・・と、いいますか、はけるのが早いから
「これってすごくおいしかったのね」
と、改めて気づかされる、ってこともあるわけですね。

まずいほうのしか知らなければ、
「うちの家族はみんなジャムがそんなに好きじゃないワ」
という感想(ないしは決めつけ)に留まる。

美味しいのを初めて知って、嫌いと思い込んでたけど食べず嫌いだった、なんてことは往々にしてあることです。食べず嫌いが克服できるのは素晴らしいこと。

それはそれとして、まずいものがいつまでも残る場合、どうしたらいいんだか。

「まずいジャムをおいしく食べる方法はありますか」
という質問を、ヤフー知恵袋で見つけました。

いずれ悩みはみな同じ。

料理の下味に、タルトの砂糖代わりに、と、さまざまなアイデアが出されているのかと思いきや、返答はたったひとつでした。

「レモンと砂糖を足すといいですよ」

多少なりとも味にアクセントがついた、
と、質問者は喜んでおられるようでした。

ワタシもまたこれが大いにヒントになりましたね。

うちのまずいほうのジャムは酸味と甘みはチャンとあるので(ないのは香りと、やはり究極的に『美味しさ』が、ない)、レモンと砂糖を足した日にはさらにまずくなるのは必至。

何にも足さなきゃいい、逆説的ですがそういうヒントをいただきました。どうするかというと、おいしいジャムを食べる時にちょこーっと付け足す。

バーター、です。ホラ、TVドラマなんかでも、人気俳優と同じ事務所の格下タレントが組として出演してたり、しますよネ。

ワタシなどこの方法で、賞味期限が5年越しの煎茶をこないだの一時帰国の折にスーパーで買った新鮮な深蒸し茶に少―しずつまぜてうまあく片付けているんです・・

・・テナこと提案してみたんですが、家族からまるっきり無視されました。


P1000225.JPG
はっ。写真撮り忘れてたと気づくも寒くて外に出るのはちょっと。そこで冷蔵庫からハムのパックをとり出してパチリ。

前菜は、ニンジン千切りサラダ
主菜は、牛挽き肉のトマト詰め焼きとキャベツの詰め焼き、ねじりマカロニのペストソース(バジリコ・ニンニク・松の実のオリーブオイルソース)、いんげん塩茹で

立ち呑み日記・パスポート更新 [困った!]

11歳のムスコのパスポートの更新に在パリ日本大使館へ行きました。

有効期限は、数日後に迫った今月18日。実はこのことに気づいたのが、先月下旬、一時帰国で日本に発つ前夜のことでした。

天を仰ぐとはこのこと。

日本へ入国できたとて、フランスに戻る時、
「有効期限が短すぎてまかりならぬ」
と、羽田のカウンターでつっぱねられたらどうしよう・・

4日月曜から新学期が始まる都合上、どうあっても滞在は伸ばせません。

「成田まで来て家族海外旅行がドタキャンになりました(泣)」
という投稿を、フェイスブックで見つけた矢先のことなんです。

この方は学期休みにベトナム旅行を家族一同前々からたのしみにしていた。小学生二人の子どもたちは人生お初の飛行機で、前夜は興奮のるつぼだったそう。

ところがなんということ、大荷物たずさえ空港のチェックインカウンターでEチケットと家族四人のパスポートを差し出したところで、
「お客様・・」
と、実に心苦しそうな声で渡航できない旨伝えられたといいます。

なぜというに、ベトナム入国にはパスポートの有効期限が六か月残っていなければならないのに、下のボクちゃんのパスポートのみ、ついうっかり五か月分しかなかった。

年末年始の観光旅行のわけだし五か月もあったら十分じゃないの、と、頭をかすめぬわけにはいきませんが、決まりは決まりです。

同じことが、うちら家族にふりかかって来てもおかしくない状態です。だからといって一時帰国をとりやめるわけにはいかない。

日本滞在中にパスポート更新を考えてはみましたが、申込みから丸一週間かかるところ、週末と天皇誕生日と官庁の年末休業をかんがみると、無理。

ただ、どの国も入国に際しパスポートの有効期限を条件にしているわけではなさそうで、フランス大使館のHPを開いてみたんですが、明文化はなし。

と、いうことはダイジョブ?・・

・・と、心千々に乱れながら、楽しかった滞在を終え羽田のチェックインコーナーでおののきつつ、家族全員のパスポートを差し出します。

今は、カウンターでなく各自がATMみたいな機械にパスポートをかざしてチェックインするんですが、ムスコのパスポートだけ、ピーピーいうばかりで通らず、
「おかしいですね、やはりカウンターへどうぞ」

お代官様に直訴する水呑み百姓よろしく、
「どうか飛行機に乗せてくださいッ」
と、かきくどく心づもりでしたが、カウンターではこれといってやり玉にもあげられず、にこやかに発券してくださいました。

うちの子どもらは父親がフランス人なのでフランス国籍もあり、フランスの入国審査では念のためフランスのパスポートも共に持たせました。すると、フランスのパスポートがあれば日本の方は開きもしませんでした。

やれやれ。これにて一件落着。

とはいえこのままパスポートを引き出しにしまっちゃうと更新を忘れそうです。そこで机の上に出しておいて時差ぼけの目で日々にらみ、時間みつけて本日出頭。

前回の5年前はオカーサン(ワタシです)が本人に代わり署名しましたが、今回はムスコ自らミミズののたくり字でやりました。


P1000201.JPG
バス停でパチリ。写真中央の木立はクリスマス飾りです。


前菜は、オイルサーディンとトマトのサラダ
主菜は、七面鳥ささ身のムニエル、ファルファーレ(りぼん型パスタ)のトマトソース、いんげん塩茹で、グリーンサラダ

立ち呑み日記・配管工事 [困った!]

ただ今配管工さんが入り、うちの階(最上階)の床下に埋められた水道管の補強工事でホコリのケムもうもうとなっているところです。

この夏の終わりに、階下のお宅で原因不詳の水漏れがあったんですね。夏の休暇で8月いっぱい家を空け、パリに戻ってみたらひと部屋ものの無残にずくずくになっていた。

この水はさらに階下、もうひとつ階下へとひと夏かけて浸み落ち、何階もの壁紙を、じゅうたんを、ダメにしたんです。

なにしろ8月のことでどこも空き家状態、バカンスから戻り、気力充実してまたがんばるゾと鍵開けて家に入ったら水浸しですからね。

みなさん目をサンカクにして、うちの扉をドンドンしました。

が、うちは日本への一時帰国では毎度ながら水道の元栓を切って行ったし、水回りに何ら落ち度はありません。

「床下よ、床下!」
と、階下の隣人が、いまいましそうにうちの床と建物の廊下を、足でドンドンしました。

うちの建物は、築350年という古色蒼然です。

ホラ、よくパリの風景というと、大通りに面して石造りに灰色の屋根の歴史ある同じような建物がずららららっと並んでますよネ。

あれはオスマン様式といって18世紀から19世紀の高級建物で、建築当時には当時まだ存在しなかった電気の到来を見越してエレベーターホールが建築されていたほどの新式。

うちの建物は1650年ごろの庶民向け建築物ですから電気のでの字も先人の頭にのぼらず、エレベーターはスペースが無いため後づけ不可能という古ぼけ具合です。

20世紀に入ってから各戸への上・下水道が設置されましたが、どうしたわけかうちの階下のお宅の天井裏に集中して配管されていて、水まわりの不具合はその頭上で起こる。

ワタシら家族の住む最上階だけはでも最近のものなんですヨ、わずか50年です。1960年代初頭に、屋根裏をデベロッパーが住居に改築して分譲した。このとき、上・下水道ともに水道管を階上へ伸ばした折にやっつけ仕事があったもよう。

9月初旬、配管工さんが腹ばいで床に耳をつけ、水音を確認しながらタイル床を叩き割りました。不具合はうちの床下でなく、玄関外すぐわきの廊下の床下にありました。

うちと向かいのお宅へと二方へ分かれるYの字に溶接してあるところから水がしみ出ていた。50年来の金属疲労です。

「マジかよーッ」
と、配管工さんはお口あーんぐり、水道管が補強用のプラスチックホースにくるまれないまま金属管じかに埋められていた。

でも、Yの字の溶接は
「芸が細かい」
そうで、
「やっつけ仕事で50年持ったんだから大したもの」
と、配管工さん。

玄関前からうちのバスルームまで電動ドリルで掘り起こして金属管を総とっかえし、Y字を力の負担の少ないT字にしてプラスチック管で補強。

工事は三日間、ひとたび仕事が始まると手際のいいこと、さすが職人芸と見惚れました。

が、8月末に起こった不具合が12月も半ばを過ぎた今やっと進捗するのがフランス、と、このあたりはとっくのとうに諦観しておりますです(しかも埋めたところへのタイル張りは別会社で今のところスケジュール未定)。


P1000181.JPG
歩きながらパチリ。

前菜は、トマトとツナのサラダ
主菜は、タリアテッラ(きしめん風パスタのミートソース、いんげん塩茹で

立ち呑み日記・イケアの家具 [困った!]

イケアの、寝室用小タンスが届きました。

正確には、届いたのは自分で組み立てるキットです。縦長の物入れで、引き出しが6つ。これまで使っていたものが(イケアのではないです)壊れて惨澹たる状況だったんです。

みなさん、イケアの家具、組み立てたことあります? ワタシは友人(フランス人女性)の手伝いで経験済みでした。

彼女は理系の研究者で、理詰めにはめっぽう強いものの手作業に縁遠いという女性、そこへ理詰めにも手作業にも縁遠い女性(ワタシです)が加担してどうなるものかとあやぶみましたが、実に難なく完成しました。

このときおしえてもらったのが、
「台所からありったけの小皿を出して来て釘など細かい部品をまず仕分ける」

イケアのキットには、ネジや留め金など細かい部品をまとめた袋が入っているんです。説明書がまたよく出来てるんですヨ、図と指示記号だけで明快。

鼻歌まじりで仕分け、いよいよ組み立てとあいなりました。

まず支えとなるH字型をつくり、そこに土台になる板を載せます。H字の横棒に酷似した別の棒があってやや迷いましたがうまくいき、土台にする四角い板もぴったりはまりました。

次いで、両側に来る長方形の板二枚に、引き出し用のレールを取り付けて行きます。これまた図面を凝視に凝視を重ね、われながら見惚れるほどの出来。

土台板の両脇にねじをはめ込み、いったん床に垂直にして、左右に縦長の板を「コ」の字になるようはめ込みます。

で、「コ」から「凹」へヨッコラショと起こすんですが、逆風が吹き始めたのはここから。

思いのほかの重さで左右の板が自力で立たない。手を放すとグラッとなり、支えのねじのところでバキンと壊れそうになる。

ここで壊れてしまっては一巻の終わり。

安い家具、とはいえ280ユーロ(約4万円)が右から左へドブに投げ捨てたも同然になるわけですからね、様子をのーんびり見に来たオットに必死の形相で手助けを求めます。

オットはしかし、不器用にかけては右に出るものはない男、左右の板を平行に保たせねばならぬところ、
「このほうがかっこよくない?」
と、何の気なしに上部を寄せて三角形に近いカッコにしたりする。

「そ、そんなことしたら折れちゃうでしょうがッ」

ワタシは説明書をにらみ背後に入れる板を差し込みますが、これまたスルスルと入らず。それでもなんとか押し込み、人差し指でつついたら倒れそうながら、自力で立ちました。

倒れる前に、上から板をはめてしまいます。ここですでに青息吐息、でもこれから6つある引き出しを組み立てなければなりません。

座ったままできるからラクチンとふみましたがとォんでもない、ねじをまわすのも20箇所以上もあると相当に力が要りました。

休んで翌日に持ち越したいところながら、古いほうの物入れからぶちまけたTシャツ類がそのへんに山となっている都合上そうもいかず。

晩ごはんの時間も迫っている、という切迫感のなかで、最後は肩で息しながら完成をみました。

その疲労感といったら、次の日に熱が出て寝込んじゃったほどでした。


P1000171.JPG
世界のユダヤ系家庭ではただ今クリスマス同様のプレゼントのもらえる行事「ハヌカ」の真っ只中です。「スマホったらスマホ」という10歳のムスコに「だめです、他のもの」と、ただ今最前線で攻防中。

前菜は、アボカド、レモンで
主菜は、タラのムニエル、インゲン塩茹で、櫛状に包丁を入れてオーブン焼きにしたじゃがいも(最近日本で流行ってるんですってネ、カタカナのちゃんとした名前もあるはず。北欧のレシピだそうです)


立ち呑み日記・焚書 [困った!]

くずれかけている文庫本の山を単行本の柱で支え直しつつ、進退きわまれりとため息つくまいことか。

同時に、買い物カートにぎっしり詰めたところがこちらへ倒れかかってくるのをしっかとおさえます。

このカートの中の本は、折を見てオペラ座界隈のブックオフ・パリ支店へ持って行こうと1年以上も前にえり分けたもの。

すぐ持って行けばよかったんですが、エレベーター無しの最上階から下ろすのは骨ですし、えっちら引いてバスに乗りこむのがまたひと苦労。

のばしのばしにしてきた結果がこれです。

その間にも一時帰国し、スーツケースの重量が許す限り新古本屋さんで気軽に本のまとめ買いをしてきているので、
(これもう読まないだろうナ)
という本の山が逐次できあがっていくわけです。

折を見てブックオフ・パリ支店に持って行けばいいだけのハナシですしね。

それがここへきて13歳になったばかりのムスメがちゃんと独立した一室が欲しい、ついては本の山で納戸状態になっているところへ
「オカーサン、いらない本片付けてッ」
と、再三ぶつけてくるようになってきた・・

・・と、そこへ隣人がトントンしてきて、
「買い物カート持ってたらちょっと貸してくれない?」

うちも隣人もエレベーター無しの最上階ですから日々の買い物にカートはかえって邪魔なんですが、ちょっとした荷物を友だちのところから持ち運んでこなくてはならないのだそうな。

そこで重いおみこしをあげて、買い物カートに詰まっている本を今日明日中にでブックオフ・パリ支店へ持っていこうと決意が固まったわけです。

以前もこうして不要の本を買い取ってもらったことがあるんですが、文庫本1冊20サンチーム(約30円)、単行本50サンチーム(約80円)、シメて24ユーロ(約3000円)にもなりました。

代金もさることながら、一度は愛した我が本が生き延びていくというのがしみじみうれしいものでした。

そうと決まれば、ブックオフ・パリ支店の住所はどこだったっけかな、と、すぐさま検索します。

「エ?」
と、目を疑いましたね。

ブックオフ パリ
と、グーグルに打ちこんだら、
ブックオフ パリ 閉店
とこう、筆頭で出て来るではないですか。

おっとりがたなでブックオフ・パリのHPを開いてみれば、
「買取りは2015年6月末に終了となります」
という衝撃的な赤文字の一文。

なんとまあ、年内撤退が決まっているのだそうです。

重いカートをえっちら引いて行った鼻先で断られるよりずっとマシでしょうが、それにしてもこのカートいっぱいの本と、そのほかに山となすもう読まない本、いったいどうしたらいいのか。

焚(ふん)書、などというオソロシイ言葉が頭をよぎりました。いくらなんでも我が手でゴミ箱におくり焼却場行きの運命は、つらい。

カートを借りに来た隣人は女性誌に出て来るような素敵なアパルトマンに住んでいるんですが、大の読書家で、どの本も読了後は近くの大学前のベンチなどに置き捨てるそうです。

興味のある人が持ち帰ってくれるのを期待してのこと。

「本はためこまず読んだら即座に別れるのがコツ」
とのことなんですがねえ・・


P1000145.JPG
マルシェの生産者の屋台に並びながらパチリ。たいへんな人気で小一時間の行列は必至なんですが、並ぶ甲斐ありどの野菜も他の追随を許さない美味しさと安さです。

前菜は、トマトとさいの目チーズのサラダ
主菜は、鶉(うずら)のコニャック風味葡萄煮、ニンニクをきかせたじゃがいもピューレ、いんげん塩茹で、グリーンサラダ

立ち呑み日記・テロと水漏れ [困った!]

テロとシリア空爆で戦々恐々としているご時世というのにまことにもってあれなんですけど・・

「国家緊急事態」が宣言された日、息をつめてニュースにかじりついていたまさにその時のこと、台所で水漏れが、したんですよねえ・・

実をいいますと3.11もそうでした。こうなると偶然では片付けられますまい。世に大惨事が起こるとなぜッ、うちの水まわりに余波が及ぶのか。

「なんじゃこりゃあ」
と、日本語に直すとこう、ジーパン刑事もかくやという声をフランス人のオットがあげたので、何ごとと見れば足元に広大な水たまりです。

階下にしたたれば保険屋さんを巻き込んでの大問題ですから、手じかの布巾を総動員させて応急処置。

諸悪の根源はたいてい、排水管の流れがよくないところへ食器洗い機が一気に排水したときに管の継ぎ目からあふれ出るせいなんですが、今回は別の理由によることが、いつも来てくれる配管工さんによって明らかになりました。

配管工さんはシンクにジャーと水を流して耳をすませ、配管工さんいうところの「水道管のゲップ」がグルッグルッグルッと小気味よく聞こえたところで、
「元凶は食器洗い機本体だね」

あーついに来たかと諦観しましたね。

今いちど食器洗い機のスイッチを入れると案の定、排水の段階になったら扉の下方から水がジュワー・・

扉内側のゴムがダメになった。

何年前だったか、まったく同様の水漏れでメーカーに紹介された修理屋さんに来てもらったことがあるんです。

「次に同じことが起きたら買い替えですよ」
と、そのとき宣告されました。

昨今の電化製品の寿命は5年、もって7年、と、このとき修理屋さん。
「うちはドイツメーカーだから品質万全だけど寿命は寿命だからね」

修理屋さんによると、購入時にメーカー保証の2年間が過ぎてからの有料の保険をすすめられるだろうが、
「これが良し悪しなんだな」

人差し指のピストルをこめかみにあてて
「ロシアンルーレットみたいなもの」
とさえおっしゃいます。

扉内側のゴムがイカれてくるのがだいたい4年めからで食器洗い機の不具合の多くはこれ、にもかわらず、これは故障でなく「摩耗」なので保険の対象にはならない、ゆえに掛け損の印象のみ残るそうな。

(よかったー保険かけとかなくて)
と、胸をなでおろしつつ安くない修理代を支払いました。

うちの食器洗い機は世紀をまたいだ16年選手、別れとはさみしいなあ・・と、感慨にふけっていてはいつまでたっても日に三度お皿の手洗いをしないとならない。

おっとりがたなで量販店へ繰り出します。

簡単に見つくろえると思ったら、うちのはビルトイン式なので、扉の化粧板をどうするかであたふたしちゃいました。

量販店では化粧板なしの姿でしか買えないとのこと。

「アーラ、ねじまわしで自分でつけ替えればいいのヨ」
と、年季の入った女性店員さんが扉のどこにネジがあるのか細かくおしえてくれたので、なんとかなりそうです。

ただ、この女性店員さんには大変申し訳ないんですが、あとで調べてみたら別の量販店に種類が多いことがわかり、浮気してそちらで買うことにしました。


P1000160.JPG
 明日はここにマルシェがたちます。暗くてなんだか真夜中みたいですけど夕方6時。日が短くなりました。

前菜は、トマトとオイルサーディンのサラダ
主菜は、焼いたメルゲーズ(羊肉のピリ辛生ソーセージ)を添えたなんちゃってクスクス



立ち呑み日記・移動祝祭日 [困った!]

薄皮をはぐように、すこーしずつ日常に戻って来ています。

とはいっても、警察官や迷彩色の軍人が機関銃胸に抱えて警備しているのに出合うなかでの日常ですが。

今日たまたまノートルダム寺院前広場に来たら、鉄パイプの柵で迷路のごとく区切ったところで、重装備の警察官が、それはもう入念に手荷物検査したのち通してましたヨ。

パン屋も肉屋も魚屋もスーパーのレジも、あれだけしゅんとしていたところへ軽口が戻って来ました。

今、みんな笑いたいのだなあとしみじみ思いますね、と、いいますか、「笑うべき」と、みんなが奮起している感じ。

フェイスブックを開けると、フランス勢はほんの昨日までトリコロールにライトアップされたエッフェル塔やフランス国内はもとより世界各地で歌われる「ラ・マルセイエーズ」が続々現れて来たものですが、今日はハッキリ違いました。

youtubeからひいたショートコントやおバカ映像が躍っている。

コントも、宗教や政治をもとにしたヒネリのきいたものでなく、往年の喜劇映画の抜粋など安心して見られるものばかり。

友人の、お箸が転げても可笑しいおとしごろのイザベルなどは、ストッキングをかぶった半裸の男が電線音頭みたいなのを早回しで繰り返すだけの、おもしろいんだかそうでもないんだかの映像をシェアして、心境をコメント欄に綴ってました。

「これ見てmdrじゃない私って鬱?」

mdr(mort de rire)とは英語のlol(lots of laugh)に同じです。

「希望は微笑みを呼ぶが、時に微笑が希望を呼ぶ」
という言葉をシェアしている友人もいました。

ウン、ホント、笑うと心があったかくなるよナ。

「私はテラスにいます」
というスローガンのように(昨日の立ち呑み日記をご高覧ください)、今宵はカフェのテラスでボジョレーヌーヴォーをクイっといきながら笑っているでしょうか・・

・・と、こう書いたところで窓を開けてみたところ、うちの界隈は飲み屋が多いんですが、小雨がやんだところでまあまあの人出。

風に乗って笑い声も聞こえてきます。

「フランス人は古来からお祭り気質なんですッ、ヘミングウェイの『移動祝祭日』、アータがたご存知ない?」
と、テレビのインタビューでデヴィ夫人風に毅然とお話しになった70代のごくごく一般的なマダムのコメントがふるっていて、ほんの三日のあいだにフェイスブックで何万件とシェアされ、そのことがインターネットのニュースでもとり上げられたほどです。

アタクシたちフランス人は呑み、食べ、はしゃぎながら、何千万人のイスラム教徒の自由信仰を尊重してともにあるのであってああいう暴虐は断じてみとめないのよッ。

このマダムの一言が引き金となり、目下、『移動祝祭日』が本屋に品切れ状態なんだそうな。

『移動祝祭日』は、1920年代初頭にパリで過ごしたヘミングウェイの青春譚です。酒場でたっぷりのみ、街角のカフェで憩い、ある時は仲間たちと自動車で田園へドライブへと、まばゆいパリの日常が描かれます。

この本、通常は年に8000部ほどしか売れないところ、今年は1万5000冊まで増刷が決まっているそうです。


P1000157.JPG
信号を待ちながらパチリ。

前菜は、トマトとさいの目エマンタールチーズのサラダ
主菜は、タラそぎ身フライ、ニンニク風味じゃがいもピューレ、いんげん塩茹で

立ち呑み日記・夢の缶詰 [困った!]

この夏日本に一時帰省しているとき、実家の老父がパンの缶詰というのを買ってきました。

フランスから来た孫を喜ばせようとしているのは火を見るより明らか。

これじっさいは備蓄食で、
「2009年にスペースシャトルに搭載」
だそうですから、たいへんな技術の結晶です。

ヘーエどれどれ、と、手に取りながら、アアいかにも1970年代のオトーサンの買いそうなものだなあ・・と、しみじみしちゃいましたヨ。

カラーテレビの「ひみつのアッコちゃん」(再放送でなくお初のです)あたりにかぶりついていたころのワタシなら目の色かえてすっとんできて、
「あけて! 今すぐあけて!!」
と、盛大にやったはずです。

「慌てなさんな」
と、そのころのオトーサンといったらやたら威張ってもったいをつけ、この缶詰がいかにめずらしいかとうとうと講釈たれたはずです。

あのころ、缶詰って今よりうんと、うーんと価値がありましたよネ。桃やパイナップルやみかんの缶詰を「あける」となると嬉しかったもンでした・・

・・・とこう書きながら記憶の闇をぬって不意に思い出したんですが、通称「モコモコ」という缶詰アイスが、そのころありました。凍らせた缶を開けると、あわ雪のようなシャーベットがモコモコーっととび出てくる。

「モコモコ」を開ける時のワクワク感といったらなかったです。

あと、今なら「カルディ」がありますし、外国の珍味といったってさして驚くことなく試しますが、あのころは輸入食料品店であてずっぽうに外国製の缶詰を買ってみたりすることがままあったように思います。

うちなどもそういうところからエスカルゴの缶詰が晩ごはんのおかずにのぼったことがありました。

「フランス人はでんでん虫を食べるらしい」
と、1970年代初頭、昭和ひとケタのオトーサンといったら学生時代にジャン・ギャバンをはじめとするフランス映画に惑溺してますから知識があったところ、モーレツ社員として残業こなして帰る道すがら、輸入食料品店に積まれた缶詰の実物に出合う。

こういう輸入食料品店ってなぜか遅くまで開いてますよね。

(エスカルゴ?)
と、学生時代、第二外国語あたりで勉強したフランス語がここへきて初めて役に立ち、ヨシいっちょ買ってみっかと手に取ります。

このエスカルゴの缶詰、オカーサン(ワタシのオカーサンです)が心底気味悪そうな顔してキコキコ開けていたものでした。

あとそうそう、缶詰といえばなんといっても「オモチャの缶詰」、ワタシなどみごと金のエンゼルを引き当てたことあるんですヨ(エヘンエヘン)。

胸躍らせ開けてみれば、グリコのおまけみたいなのがいくつか入っているのみで、ややガッカリでしたけどネ。

とはいえ缶詰の醍醐味はやはり開ける瞬間、缶詰には夢が詰まっている。老父もまたそう考えパンの缶詰なるものを買って来たわけです。

ところが、二匹は実にそっけなかった。「アリガト」と、いちおう言ったのみ。二匹にとって缶詰はランクの落ちた食べ物でしかないんですね。

仕方なくぎゅう詰めトランクに隙間作って押し込んでパリに持ち帰りましたが、ハテいつ開けるべきか、なかなか迷います。


P1000051.JPG
フランスは9月が新年度。超エリート校エコール・ポリテクニック(理工科大学校)の新入生がオバカをやっているの図。彼らが将来のフランスをけん引します。

前菜は、メロン
主菜は、オムレツ、鶏ロースト(の残り)、じゃがいもロースト、いんげん塩茹で






立ち呑み日記・とり入る [困った!]

暑いさなかに買い物から帰ってやれやれと氷水をのんでいたら、玄関の呼び鈴が震えるように鳴りました。

誰かと思って開けると、呼び鈴以上にうちふるえているお隣りのアメリカ人女性。

「ハトが家の中に入ってきて出ていかないの、おねがいなんとかしてえ!」

暢気なハトもいるもンだなあ、と、おっとりがたなでお隣りに行きました。するとあらまあ、物置きがわりの暖炉の棚の上に、灰色のがちょこんととまっている。

あまつさえくるっとした目をこちらへ向け、きょとんとします。

「き、気味悪くて近寄れないのッ」
と、ワタシの背後で隣人。

その気味悪さわかるなあ、と、ワタシなども思いますね。羽をばさっとする感じがオソロシイ。ワタシなど蝶と蛾が大のニガテなんですが、何がいやかって、翅(はね)ぐらいオソロシイものありません。

いずれも胴体のみだったらダイジョブなんですが(たぶん)。

でも、鳥は蝶や蛾などと比較にならないまでにダイジョブなので、隣人宅の居間を勝手に物色し、古新聞をまるめました。

「それよりこっちのほうがいいと思う」
と、隣人はデッキブラシをさかさまにして手渡してくれました。

このデッキブラシをハトの足元につっこむと、ばさり、と、羽を動かして素直に乗っかって来ました。そのままそおーっと窓際へ行きパッと振ると、ハトはたちまちに飛び立ちました。

これにて一件落着。ワタシも残りの氷水を飲みに帰ります。

その飲み干したコップをテーブルに置く間もなく、
「オーマイガッ」
と、カタカナで書いたような英語が聞こえてきました。

「た、たすけてェ!」
と、這うようにやって来た隣人は泣きべそ寸前です。
「さっきのハトが、ま、また入ってきたのよッ」

また同様にデッキブラシの柄で追い詰め、窓からえいっとやりました。外は30度の暑さですが、隣人は目の色変えて窓という窓を閉めにかかります。

そういや『サザエさん』でも家の中にスズメが入って来るシーンがあって、波平さんは手を叩いて喜んでたけどなあ・・と、思い出しましたね。

波平さんが、お正月に縁側に面した茶の間で年賀状を見ていると不意に鳥が家の中に入って来る。
「オオ、とり入るといってこれは縁起がいい!」

このハナシをしたら、隣人は目に涙をため、
「ならよかった、ほんとうによかった・・」
と、抱きついてきて心から感謝するんです。

なにもそこまでと恐縮していると、口に出すのもおぞましいというごとく隣人がためらいがちに話し出したんですが、アメリカでは鳥が家の中に入って来ようものならそりゃァもう、ひッどく悪い兆しなんですってネ。

死人が鳥になって語りかけに来た、とか、その家の誰かが死ぬ予兆、とか、「死」に根差したヨロシクない迷信が多々あるのだそうな。

調べてみたら、風水でもまた吉兆なのだそうです。

風水ではでも、鳥が家に巣をつくるのはとてもいい兆しだというんですが、こっちはどうでしょうか。

以前、うちの窓の下の雨どいにハトが居ついたことがあり、その小枝を編んだ巣の見事さに見とれるうちにあれよという間にどこもかしこも糞だらけとなり、大いに閉口したものでした。


PIC_0382.JPG
ただ今22時。夏は日が長いです。

前菜は、トマトとゆで卵のサラダ
主菜は、鶏丸焼き、じゃがいもロースト、いんげん塩茹で、グリーンサラダ



この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。