立ち呑み日記・かぶせ歯 [困った!]
「歯科技工士さんに直接歯を見せてください」
と、歯医者さんにおねがいされ、歯科技工士さんの自宅兼アトリエへ出向くこととなりました。
前歯の一本に、セラミックをかぶせることになったんです。
今回の歯と対称の位置にある歯もかぶせ歯ですが、よくできていて自前と見分けがつかないくらいです。
今回は、治療台で鏡を手渡され、
(うーむ・・)と、なりました。
一本だけ、
かぶせましたーッ、
というごとく、あからさまに色が違う。
「こ、こんなのいやですッ」
と、色めきたつまでもなく、四十代美女の歯科医師先生は美しい眉をピクリとさせ、
「彩色させ直します」
この先生が手際よく作った仮歯は左右の歯となじんだ自然な色合いで、かぶせ歯とはわからないほど。このままでいいとさえ思いました。
「それは無理なの、仮の歯は長きにわたってはもちません」
先生はスマホをワタシの口すれすれに近づけ写真までとり、修正しとなりました。で、その修正ができ上がって来たんですが・・
やはり色が違う。
歯科医先生は眉間に大いにシワをよせ、
「ダメだわ、一からやり直してもらう」
昨今の歯医者さんは虫歯の治療のみならず、審美に大いに重きを置いているものだそうです。
先生の父君も歯科医師で、ワタシはもともと父君の患者でしたが、大(おお)先生のあぶらがのっていた1970~80年代は、
「インプラントを大いに奨励したものだよ」、
二代目である娘の時代となった今は、
「なんといってもホワイトニングだね」
とのことです。
さて、三度目の正直、こんどこそガハハと笑っても悪目立ちしない口元になれると喜び勇んで登院。
本来一回のみでお役御免となる仮歯を入れたり抜いたり何度も繰り返したために、当初はあんなに自然な形だったのが今は吸血鬼のキバみたいになってますからね。
でも、治療台にのるや、ふだんならすぐさまおしゃべりがはじまる先生が無口になったので、
(またしてもしっぱい)
と即座にわかりましたね。
色が、やっぱり違う。質感も違う。
そこでこの文章の冒頭に戻るわけですが、先生はその場で技工士さんに電話をかけ、製作者の前でワタシがニッカリしてしかと見せることとあいなりました。
技工士さんはパリから車で20分の閑静な住宅地にアトリエ兼住まいがあるとのことで、パリの中心地で待ち合わせ、迎えに来てくださった技工士さんの自家用車で向かいます。
技工士さんは六十がらみのレバノン人で、1970年代中ごろのレバノン戦争でフランスにやって来て医大受験に失敗し、歯科技工士への道へと方向転換したのだそうです。
アトリエは小さな庭に面したガレージを改造し、いかにも職人仕事にふさわしい、手作り感あふれる一角です。
セラミックのかぶせ歯は、彩色して専用窯で焼いて完成。
が、後日、胸ときめかせて登院するとあろうことか、ほんとうにあろうことか、またしても色が違う。質感が違う。くっきり違う(泣)。
先生がため息つきつつおっしゃるには、腕のいいベテラン技工士さんなのに半年ほど前に最新式でコンピューター制御の窯を導入して以来こうだそうで、仕方なく別の技工士さんに発注をかえ、一からやり直すこととなりました。
こちらもようやく暖かくなってきました。
前菜は、無酵母クラッカーを砕いたパン粉のすいとん入りスープ、鯉のつみれ(缶詰) 過ぎ越しの祭というユダヤのおまつりのお節料理です。
主菜は、鴨の抱き身ソテー、いんげん塩茹で
と、歯医者さんにおねがいされ、歯科技工士さんの自宅兼アトリエへ出向くこととなりました。
前歯の一本に、セラミックをかぶせることになったんです。
今回の歯と対称の位置にある歯もかぶせ歯ですが、よくできていて自前と見分けがつかないくらいです。
今回は、治療台で鏡を手渡され、
(うーむ・・)と、なりました。
一本だけ、
かぶせましたーッ、
というごとく、あからさまに色が違う。
「こ、こんなのいやですッ」
と、色めきたつまでもなく、四十代美女の歯科医師先生は美しい眉をピクリとさせ、
「彩色させ直します」
この先生が手際よく作った仮歯は左右の歯となじんだ自然な色合いで、かぶせ歯とはわからないほど。このままでいいとさえ思いました。
「それは無理なの、仮の歯は長きにわたってはもちません」
先生はスマホをワタシの口すれすれに近づけ写真までとり、修正しとなりました。で、その修正ができ上がって来たんですが・・
やはり色が違う。
歯科医先生は眉間に大いにシワをよせ、
「ダメだわ、一からやり直してもらう」
昨今の歯医者さんは虫歯の治療のみならず、審美に大いに重きを置いているものだそうです。
先生の父君も歯科医師で、ワタシはもともと父君の患者でしたが、大(おお)先生のあぶらがのっていた1970~80年代は、
「インプラントを大いに奨励したものだよ」、
二代目である娘の時代となった今は、
「なんといってもホワイトニングだね」
とのことです。
さて、三度目の正直、こんどこそガハハと笑っても悪目立ちしない口元になれると喜び勇んで登院。
本来一回のみでお役御免となる仮歯を入れたり抜いたり何度も繰り返したために、当初はあんなに自然な形だったのが今は吸血鬼のキバみたいになってますからね。
でも、治療台にのるや、ふだんならすぐさまおしゃべりがはじまる先生が無口になったので、
(またしてもしっぱい)
と即座にわかりましたね。
色が、やっぱり違う。質感も違う。
そこでこの文章の冒頭に戻るわけですが、先生はその場で技工士さんに電話をかけ、製作者の前でワタシがニッカリしてしかと見せることとあいなりました。
技工士さんはパリから車で20分の閑静な住宅地にアトリエ兼住まいがあるとのことで、パリの中心地で待ち合わせ、迎えに来てくださった技工士さんの自家用車で向かいます。
技工士さんは六十がらみのレバノン人で、1970年代中ごろのレバノン戦争でフランスにやって来て医大受験に失敗し、歯科技工士への道へと方向転換したのだそうです。
アトリエは小さな庭に面したガレージを改造し、いかにも職人仕事にふさわしい、手作り感あふれる一角です。
セラミックのかぶせ歯は、彩色して専用窯で焼いて完成。
が、後日、胸ときめかせて登院するとあろうことか、ほんとうにあろうことか、またしても色が違う。質感が違う。くっきり違う(泣)。
先生がため息つきつつおっしゃるには、腕のいいベテラン技工士さんなのに半年ほど前に最新式でコンピューター制御の窯を導入して以来こうだそうで、仕方なく別の技工士さんに発注をかえ、一からやり直すこととなりました。
こちらもようやく暖かくなってきました。
前菜は、無酵母クラッカーを砕いたパン粉のすいとん入りスープ、鯉のつみれ(缶詰) 過ぎ越しの祭というユダヤのおまつりのお節料理です。
主菜は、鴨の抱き身ソテー、いんげん塩茹で