立ち呑み日記・煉瓦 [追究]

煉瓦はフランスとイギリスとでは積み方が違う、
ということを、週遅れでもらった『週刊新潮』の、建築家藤森照信のエッセイで知りました。

煉瓦といったら長四角、とこう漠然と思い込んで来ましたが、長方形にも長いのと短いのがあり、この二種類を組み合わせて積み上げるものだそうです。

その組み方は、長いのと短いのを交互に並べていくのがフランス式、長いのだけ一段、次いで短いのだけ一段というふうに並べていくのがイギリス式、だそう。

「かりに長いほうを『ツー』、短いほうを『トン』であらわしてみる」
と、藤森建築家は実にイメージしやすい表現をなさいす。

フランス式は、ツートンツートンツートン、次の段もまたツートンツートンツートン・・

イギリス式はツーツーツーツーツー、で、次の列がトントントントン、その次がまたツーツーツー・・

どうです、明快に見えるようではないですか。

日本では19世紀末に西洋建築が入って来た当初はフランス式を採用し、明治20年にイギリス式にとってかわられたそうで、積み方で当時の煉瓦建築の年代が見分けられるそうです。

ヘーエと思い、買い物に出たついでに近所の煉瓦の建物をしげしげ見上げてみました。すると、あらホントだ、全篇にわたりツートンツートン。

そういえば去年までワルガキが通っていた小学校も煉瓦づくりだったワとまわり道してみると、やはりこちらもツートンツートンツートン・・。

なるほどなあと思いましたね。

たまさかにイギリスへ鉄道旅行すると、見慣れたフランスの田園を行くユーロスターがふっとトンネルに吸い込まれて英仏海峡を越え、またふっと外が明るくなった途端、さっきと同じような煉瓦の建物が見えてくるのに、どこか違う。何がどう違うのかうまく言えないけど明らかに違う、違うったら、違うッ。

これ、煉瓦の積み方のせいだったんですね。

日本では明治時代にこそ煉瓦建築は華やいだものの、関東大震災で大打撃を受け、コンクリート建築へと変わって行きました。

それにしても、「コンクリート」と言われても別にどうとも思わないのに、「煉瓦・・」とこう言われると床しく素敵な印象が強く残るのは、どうしてなんだか。

おいしそうな印象さえ、残ります。揚げたラードのニオイがしてくるような気がして、カツレツやオムライスがむしょうに食べたくなってくる。

ワタシが子どもの頃は近所のそこかしこの空き地を遊び場にしたものですが、こういう空き地には瀬戸物などのかけらがたくさん落ちて(捨てられて)いたものでした。

その中に煉瓦のかけらを見つけると、瀬戸物の破片でゴシゴシやって赤い粉を作り出しては悦に入ったもンです。

その何が面白いの?
と、今となっては思いますが、赤い粉が少しずつたまっていくのに充実感が、あった。

同じような破片でも植木鉢や瓦の一片は固くて粉はほとんど出ず、うんと格下でした。

その赤い粉をどうするかというとどうもせず、空き地といえば転がっている土管あたりに指でなすりつけて、おしまい。

近年のフランスでは、煉瓦は扱いやすいので建売住宅の3軒に1軒は煉瓦造りだそうです。


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この週末はフランス全土で雨でした。パリでは日本大使館の近くにあるモンソー公園というところで子どもたちが雨宿りに大木の下に逃げ込んだところでなんと落雷があり、子どもが何人か怪我をするという事故も起こりました。怪我ですんでよかったです。

前菜は、トマトとオイルサーディンのサラダ
主菜は、七面鳥ささ身のカツ、薄切りじゃがいものクリームグラタン、いんげん塩茹で、グリーンサラダ

立ち呑み日記・カミカミ系 [ワルガキ]

「『オングレ』が食べたい」
と、オカーサン(ワタシです)が晩ごはんの買い物に出ようとしたら、11歳のムスコ。「オングレ」というのは牛ステーキの部位でスジがあり、みしっとした噛みごたえです。

カミカミするヨロコビ、テナ感じでしょうか。

「箸で千切れそうにやわらかーい」
というのを最良とする日本人の舌(というか歯ですね)には不合格の烙印を押されかねない部位ではあります。ワタシもパリに住み始めのころは敬遠でした。なにしろこめかみが痛くなる。

そのうちに慣れました。

とはいえ、牛肉といったら「ラムステーク」という、スジなく一点曇りなき赤身の部位が値段は高いが最高、さらにその部位の中心部であるクール(芯)・ド・ラムステークこそが最高の最高と、ずうっと思いこんできました。

舌に吸いつくような赤身で、噛むそばからノドがひっぱるんですヨ。

値段が張るといっても日本の銘柄牛とは雲泥の差で、街角の肉屋ならキロ30ユーロ(約3400円)前後です。

クール・ド・ラムステークといったらフランス人のうちのオットの大好物で、肉屋に行くと必ずこの部位を買ってきます。家族四人400グラムというところでしょうか。

「としよりはラムステークを好むもんさ」
と、いつだったか肉屋のご主人が言っていたものでした。

スジがないので噛みやすく、均一にあっさり。そこいくとオングレは皿の上でのナイフの入れ方や噛み具合によって味が微妙に変化します。

「肉好きはオングレやバヴェットだね」
と、肉屋のご主人。

バヴェットも牛肉の部位で、オングレと近いところに位置しているみたいです。両者ともに、噛みごたえがある。

どう違うの?
と、聞かれるとあれですが、噛みごたえそれぞれ。

あとほかに「アレニエ」という部位などもあり、この箇所は部位が小さいのでめったに店頭にのぼらないのだそうな。

「アレニエ」もまたカミカミ系です。うちの近所の肉屋では、鹿肉など常備でない肉がのる丸皿に、「アレニエ」は特別待遇で鎮座します。

「お、『アレニエ』があるじゃないか」
と、とびついている紳士を見かけたこともあります。

この紳士、相当な肉好きと見受けました。

マ、フランス人にとって牛肉の部位を指定するのは、日本人がまぐろの中トロだの赤身だの中落ちだの血合いだのを当然のごとく食べ分けるのと同じですけどネ。

クール・ド・ラムステーク、ワタシは最近少々飽きて来ました。

どこもかしこも上品であっさりで非の打ちどころないんですが、それより切り方やカミカミでうまさが変化するほうが、おもしろい気がするんです。

これは好みでありましょう。

ムスコのなかよしのエンゾーくんなど、オングレのオの字が聞こえて来ただけで「ウエー」だそう。

なぜというに、噛むのがメンドウ。牛肉なら噛まずとものみこめそうな挽き肉ステーキばっかりをオカーサン(エンゾーくんのオカーサンです)に要求するそうな。

エンゾーくんはしかし固くなったバゲットをおやつ代わりにガリガリカミカミするのが大好きで、エンゾーくんチにはうちの台所みたいに残り物の固いバゲットの切れ端の山は、ないそうです。

前菜は、アボカド、レモンで
主菜は、牛挽き肉ステーキ、蒸しブロッコリーと赤ピーマン焼きを添えたカレーライス


立ち呑み日記・ギターのお稽古 [ワルガキ]

11歳のムスコがギターを習い始めました。

「やりたい」
と、本人が言い出したのではなく、オカーサン(ワタシです)の独断です。

ムスコは無類の不器用で、ミミズののたくったヒッドイ字をなんとか常人並みまでにするのに、
「手をうんと使わせるといいですよ」
と、担任の先生からアドバイスをいただいたんです。

先生の、今32歳になる息子さんが小中学生のころやはりミミズののたくりで大いに気をもみ、あやとりやらお菓子作りやら、手を使う遊びをしゃかりきにやらせたそうです。

その甲斐あり、今、息子さんは庭園設計士におなりだそう。

「あやとりしない?」「お菓子作らない?」
と、しかしながらうちのバカムスコへ猫撫で声を出そうが、答えは歴然です。

「パソコンでゲームしてるから、しない」

キーボードを触る程度では手作業ほど脳への刺激にはならないんですね。

そこでギターという浅知恵。幸いオトーサン(ワタシのオットです)のギターがありますし、家族づきあいをしているギターリストの友人もいます。

友人は出稽古を快く引き受けてくれました。

「ただね」
と、友人。「お宅にあるようなフォークギターは初心者の、ことに子どもには弾きづらいよ」

フォークギターは弦が金属で板が狭いので初心者は指が痛くて押さえづらい、そこへいくとクラシックギターはナイロンの弦で板が広く、弾きやすいのだそうです。

部活に「クラシックギター部」って、あったなあ・・
と、遠い日の、女子校時代の光景が心によみがえりましたね。

セーラー服で、ギターケース提げて登校し、たまさかにクラスのレクリエーションとなると「ビューティフルサンデー」あたりを足のリズム刻みもカッコよく弾き語りしていたもンです。

♪たがいにギターかき鳴らすだけで・・
と、「Yayaあの時代を忘れない」にあるように、青春とギターこそは切っても切れない関係・・

・・と、思い込んで来ましたが、バリでは子どもの習い事によくあるみたいなんですヨ。子ども用ギターも格安で見つかるようです。

「ギターはね、上を見ればキリがないけど、値段の安い楽器なんだよ」
と、ギターリストの友人(今やムスコの師匠です)。

本人用をぜひ買っておやんなさい、11歳の身体なら大人用でダイジョブ、
と、それはもう強くすすめるんです。

おしえてくれた楽器の大型格安量販店に行くだけでもと行ってみると、あらマほんと、49ユーロ(約5300円)からある。

ただ、このテの格安ギターは第一歩を踏み出すにはちっとも悪くないが、弾き慣れるにつれ安っちい音が鼻についてくるようになり、近い将来必ず買い替えたくなるものだそうです。

「ですから、おすすめはこれ」
と、お若い店員さんはヤマハの149ユーロ(約1万5300円)ナリをとり出しました。

ポロロ~ン、と、響き渡る音が、なるほどさっきの格安品とは大違い、ドシロートの耳にも厚みや奥行きやつやまで感じられる。

日本製品の素晴らしさに大いに気をよくし、即座にお財布開いちゃいました。

このギターを、ムスコはさすがにうれしそうに抱え、
♪ラ・ソ・ファ・ミ・レ・ド・シ・ラ・・
というたどたどしいのを、毎日練習することになっています。


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はっ。写真撮り忘れてた。大急ぎで窓からパチリ。

前菜は、トマトとツナのサラダ
主菜は、七面鳥ささ身ムニエル、マカロニとカリフラワー・ブロッコリーのホワイトソースグラタン

立ち呑み日記・1933年の冷茶 [おやつ]

1933年シカゴ万博で日本館の喫茶コーナーで供されたという抹茶アイスティーを、学生時代の友人で茶人にして静岡茶研究家の友人におしえてもらいました。

欧米人の舌に合わせて考案された飲み物で、当時の資料をもとに、つい先日静岡県で開催されたお茶フェスティバルでも再現したそうです。

その作り方は、こうです。

「2合のコップに」茶さじ3分ないし4分の抹茶と砂糖を氷水に入れて強く振ると、「ヒスイを溶かしたような清涼の感を生じる」。ここへ「パインアップル一片と赤い櫻の実一粒を置き、レモン一片を加へ」、ストローをさし、煎餅3枚を添える。

どうです、昭和8年に、こんなオシャレな飲み物があったなんて。日本館の喫茶コーナーは大人気で、百席あるところ入りきれないお客も多く、日に1800杯も売れたそうな。

2合、というのが、いかにもアメリカ人に合わせた量のような気がします。

2合といったら360ミリリットル、スターバックスの「トール」(大)が350ミリリットルだそうですから、たっぷりもたーっぷり。

日本人にはのみ切れないくらいではないでしょうか。

じっさい、友人が再現したのは-ほんの三口ほどの、ガラス製麦茶コップでした。パイナップとサクランボとレモンの香りが移った甘くてつめたい抹茶、暑い日にさぞヨロシかろうと思います。

煎餅3枚、というのに、ワタシなど大いにひっかかりました。これ、日本人が字づらから即座に思い浮かべる塩煎餅では、ない、ん、じゃ、ないでしょうかネ。

お茶の時間に、英国ではサンドイッチなど軽食を確かに食べますけど、お茶に塩煎餅は「ない」気が、するんですよねえ・・

フランスなら塩煎餅は食前酒のつまみ、今日ではタイ産の日本風あられがスーパーで塩味ピーナツと並んでいます。

お茶の合いの手というなら、クッキーやらの甘いお菓子。フランス語でいうところの「チュイル」のような薄焼きクッキー3枚、だったんじゃないでしょうか。

当時の子どもにおなじみだった英字ビスケットではないし、薄焼きクッキーを表す適当な日本語が見つからないところからレポートに「煎餅」と書かれることになった・・

「うーんどうかしらねえ」
と、友人はワタシの説をだまって聞くのみでした。

資料にはそれ以上のことは書かれていないので、どんな「煎餅」かは不明、とのこと。

「断然、薄焼きクッキー」
と、ワタシはなおも自説を押し付けましたね。

だって、昭和8年のシカゴで、1日1800杯カケル3枚、つごう5400枚もの米粉からなる塩煎餅が、毎日調達できたでしょうか。クッキーだったら地元の材料でなんとでもなる(ンじゃないかなあ・・)。

抹茶アイスティー、今だって和風喫茶店などの名物になりそうです。薄焼きクッキー3枚ついて800円ナリ、って感じでしょうか。

お茶を、湯でなく水から出すと、苦み成分が抑えられるといって最近流行ってるんですってネ。

水どころか茶葉に氷を置いて、溶けていくしずくでゆーっくり抽出すると、それはもう極上の冷茶ができ上がるそうです。

「お茶のエスプレッソって感じよ」
と、お茶専門家(ワタシの友人です)お墨付きです。


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 本日のおやつです。ミルクチョコを敷いてマシュマロを置き、オーブンで軽くあぶる。13歳のムスメがどこからか仕入れて来たやり方で、すごーくおいしいんだそうです。

前菜は、トマトとさいの目エマンタールチーズのサラダ
主菜は、ミートソースマカロニのグラチネ(チーズ焼き)、いんげん塩茹で

立ち呑み日記・賄(まかな)い [主菜]

夕方5時、11歳のムスコの習い事を待つ間に行くカフェの、これまたいつものひっそりした奥の席についたら、目の前のカウンターで白い上っ張りの料理人さんが賄(まかな)いを食べ始めたところでした。

ひと皿盛り合わせで、鶏ももローストにフライドポテトの小山と、全体にかぶさるレタス連峰。実にてきぱきとしたナイフさばきで食事をおすすめです。

アアなんと美味しそうなこと。

賄いってどうしてこう心惹かれるんだか。部外者には食べる術(すべ)がないからでしょうか。

ワタシなど時分どきを前に食べ物屋の前を通りがかってお店の人がお客然と席に着いているのが目に入ったら、もう条件反射に得意の横目でしッかと確認しちゃいます。

(どれどれ、賄いはなにかナ)

カフェの場合はたいていメニューの料理の流用です。カフェの料理といえば肉料理とたっぷりのじゃがいも、ないしはソースをからめたサーモンや白身魚とライス、テナ具合。

時分どきに一般のお客さんが食べているのと寸分たがわぬはずなのに、それよりさらに美味しそうに見えるのは本ッ当にどうしてなんだか。

あれでしょうかネ、十二分に腹ごしらえして肉体の労働に精を出した後にのみ味わえる「うまさ」や「充足感」の予感がまた伝わって来るんでしょうか・・

・・とこう書いていて思い出しましたが、ワタシにも賄いを食べた日々が、そういえばあったんですヨ。

学生時代、友だちに誘われて今はなき赤坂プリンスホテルのレストラン部でアルバイトをしたことが、短期間でしたがあるんです。

仕事は、支給された従業員服に着替え、これも支給の食券携えて社員食堂で定食に向かうところから始まりました。

「食べるのも仕事のうちなの?」
と、瞠目したもンです。

とはいえ夜のシフトだと夕方4時半ごろの出社でうちの晩ごはんの時間よりずうっと早く、お腹は別にすいてない。

「それでもちゃんと食べてください」
と、担当責任者から念を押されました。

マ、若いですから、おなかすいていようがいまいが目の前においしそうなおテンコ盛りがあれば右から左に平然と平らげられるわけですが。

しっかり食べておかないと仕事のたてこむ時分どきにヘパッてつかいものにならくなる、と、アルバイトを采配する責任者はわかっていた。

と、いいますか、それが飲食業の基本なのでありましょう。

ちっともおなかすいてないのに平らげたっていうのに、この時の社員食堂の日替わり定食が
「美味しかったナー」
と、30年もたってしみじみ思えるくらい、美味しかったんです。

ただし、定食の内容は忘却の彼方。

「美味しかったナー」
という感覚のみが残っているんですね。

仕事は、ワタシらアルバイトも制服姿ではありますが社員や研修を受けた契約社員ではないのでお客様の前に姿は出せず、厨房からホールまでの長い廊下を料理のお盆を持ってひたすら行き来します。

この間先ほどの満腹がこなれていくる中で、
(さっき食べた定食美味しかったナー)と、
曲がりなりにもこの自分がちゃんと仕事してるんダという充足感から記憶にしかと刻まれたのだと思います。


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はっ。写真撮り忘れてた。大急ぎで窓からパチリ。この直後に雨が降り出しました。

前菜は、ラデイッシュ、バターと塩で(ちぎったバゲットにのせて齧るととおってもヨロシイです)
主菜は、鶏ローストとじゃがいも(の残り)とベシャメルソース(の残り)とねじりマカロニのグラチネ(チーズ焼き)、いんげん塩茹で、グリーンサラダ

立ち呑み日記・河べり散歩 [おでかけ]

一点曇りなく晴れあがった連休(フランスもこの週末連休だったんですヨ)の最終日曜の午後も遅く、散歩にでも出ようかとのろのろ立ち上がりました。

久々に夫婦ふたりきりで、といいますか、うちのローティーン二匹は「行かない」ともう即答。せっかくの連休、思うさまパソコンいじっていたい、ト、まあそういうことです。

とりあえずセーヌ河べりにでも出てみますか。

テレンコ歩み出しかかったところで、家財道具を隙間なく積みこんだボックスカーから、ムスメのなかよしサミアちゃんとオカーサンが顔を出しました。

向かいの、官舎に住んでいるサミアちゃん一家は、なんと引っ越しだそうです。

官舎は定年になったら出ないとならないので市営住宅へ何年も前から申し込んでいたところ、この四月末に急に空きが出た。

この官舎にはムスコの大親友マチスくんも住んでいて、ムスメとサミアちゃん、ムスコとマチスくんの四人組でおやつ持って近所の公園に繰り出したもンでした。

マチスくん一家も去年、将来を見越して引っ越しているので、これで小学校時代のご近所四人組はいよいよ解散。

時は過ぎますねえ・・

・・と、ややしんみりしながらテレンコ続けると、割にすぐさま河岸にぶつかります。

セーヌ河岸にはブキニストという屋根付きの箱に並べた古本屋が風物詩なんですが、これを横目に石の階段を河べりまで下りて行きます。

水際すれすれには、座りこんでピクニックしている善男善女がずらり。反対側の芝生の植込みやベンチでもまた善男善女がそれぞれにペットボトルやワインを囲んでいます。

使い捨てコップでなくれっきとしたワイングラスで赤ワインを賞味しているグループがいたのでつい目が釘づけになると、案の定英語の会話が耳に入ってきました。

ホラ、よく英国製でバスケットに納まったピクニック用のガラスや磁器製の本格食器セット、見たことありません?

英国人はせっかくのおいしいものはちゃんとした食器で賞味しないと味気なく感じるものなんだそうです。

フランス人はどちらかというと実(じつ)をとるほうで、ピクニックの食器にはこだわらないように思います。手頃値段のワインを、使い捨てコップで気軽にいく。つまみも、買ったなりからじかにつまむ。

うちらも何か持って来ればよかったナ。

「プロスタグランジン」
と、しかしワタシのオットは理系なものですから河辺のピクニックなどさして目にもとまらず、不意に口を開けばそういうこと言い出すんですね。

テレンコ歩んでいる先に、柳の大木が触手を揺らしている。

柳には鎮痛の働きがあることが太古の昔から知られ、それをヒントに開発されたのがアスピリンで、その鎮痛作用の源がプロスタグランジンなるたんぱく質の分子なんだそうな。

「あらまあそうなの」
と、ツマ(ワタシです)はしみじみ関心深そうに生返事しながら、水面を往来する遊覧船に手をふります。

柳の木の向こうでは社交ダンス愛好家たちがアルゼンチンタンゴに興じていたので、踊りに不調法なワタシら夫婦はその背後にベンチを見つけ、傾きかけた日を浴びながらしばし眺めることにしました。


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ダンス愛好家たちを避け、のーんびりしたところをパチリ。

前菜は、鶏出汁の野菜ポタージュ
主菜は、ベシャメルソースをかけた鶏ロースト(の残り)・じゃがいもロースト(の残り)・カリフラワー

立ち呑み日記・コンドーです [ワルガキ]

「コンドーです」
を、11歳のムスコが、またやりだした。

ホレ、目のほうへ落ちてくる髪をザバッとふるあれ。

自意識ってのはまず髪の毛の先に宿るんでしょうナ、「コンドーです」の始祖(?)近藤正臣さまは、先日ユーチューブの「徹子の部屋」で拝見しましたけど今は銀髪の好々爺におなりで、「コンドーです」はまるでおやりになってませんでした。

ムスコは去年の今ごろからやりはじめ、今年初めに最潮時を迎えました。「コンドーです」と、頭をふるばかりでなく、右耳後方から髪をかき集めて片目を覆うばかりまでになった。

無理までして髪を前にやるゲゲゲの鬼太郎、テナ様相です。

「ちゃんと目ェだしなさい」と叱咤すれば、
「見えてるし」

「ヘンテコな髪形ッ」と、くさせば、
「気に入ってるし」

そのうちに長い前髪のせいで常時首をかしげているまでになったんですね。

「首まっすぐしなさい」と、こぼせば、
「普通の姿勢だし」

体育の先生から保護者呼び出をもらうまでになりました。

気をつけの姿勢のみならず、持久走でも水泳でも首がいッつも曲がっているのは、ひょっとして
「発達心理に問題を抱えているのではありませんか」・・

とりあえず髪を切ろう、ということになりました。

これまでのようにオカーサン(ワタシです)がハサミを持ち出すと心からいやそうに逃げるので、人生お初の美容院を提案。

「カッコいい店なら行ってもいい」
とのことで、カッコいいかはあれとしてワタシがいつも行く店に予約をとって連れて行きました。

美容院の方って、心優しいですネ。

反抗期はじまりの心情をちゃあんとわかって、片目隠れたムスコをひと目見るなり
「あらカッコイイ!」

耳後方から髪を前方へ持って来ようというムスコの、
「『コンセプト』を、生かして切りますね」

子どもの頭ですから、チャッチャカチャーと、ものの10分ですっきりしました。その瞬間から、あれほどナナメにかしいでいた頭もまっすぐになったんですヨ。

やれ一件落着、と、思っていたんですが、髪は伸びますからまたぞろ「コンドーです」をやり始めたわけです。

で、数か月前と同じくおっとりがたなで美容院へ連れて行くと、美容師さんはあいかわらずニコニコと迎えてくれました。

その耳元へコッソリと、
「うんと短くしてちょうだい」

パチッと、イケメン美容師さんはこちらへウインクを、(まかせて)というようにくれたんですが、美容師とお客、正式にはお客の頭とは、親といえど第三者は介在させない強い絆(きずな)が出来上がるみたいなんですね。

美容師さんはオカーサンの注文を「ちょっとした参考」ぐらいにしかとらえず(としか思えない)、完成品は、目にかかりそうでかからない絶妙なところ。

「絶妙じゃなく、もっと短くして」
と、横から不服申し立てしたかったんですが、合わせ鏡をうっとり見ているムスコの、それはもうはれがましそうな顔見たら、マ、仕方ない、今日のところはよしとしましょうかネ。

ムスコの寝てる間に髪ひとすじチョキンとやっちゃえば
「いいだけだしナ」
と、実をいいますと思いましたです(ムスコには極秘)。


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この週末は連休なんですがとてもよく晴れてウレシイ。ワタシら家族がフロリダに行っていた(前回までの立ち呑み日記をご高覧くださいませ)先週のパリは真冬並みの寒さだったようです。

前菜は、トマトとツナのサラダ
主菜は、七面鳥ささ身ムニエル、ファルファーレ(りぼん型パスタ)の、ウスターソースを混ぜたカレーソース(残りもの)和え、いんげん塩茹で、グリーンサラダ


立ち呑み日記・エプコット [おでかけ]

今回のフロリダ・テーマパーク旅行で(前回・前々回の立ち呑み日記をご高覧ください)、我が子ながらフランス人とともにする旅なのだなあ・・と、思わずにいられませんでしたね。

大枚はたいて国際線で行ったんだし遊園地の乗り放題パスは最大限活用してくれなきゃ、と、右へ左へ連れ出そうとする日本人オカーサン(ワタシです)に反して、
「バカンスなんだから好きにのんびりして当然でしょ」
と、てーんでガツガツしないうちの二匹。

ユニヴァーサルスタジオの三日券の切れた最後の一日、ディズニーワールドのなかの「エプコット」という、科学と各国博覧会風テーマパークに行ってみることにしました。

ディズニーワールドというのはいくつもの遊園地の集合体で、その全部を合わせると山手線の内側の1.5倍もあるそうなんです。

多くの人が泊りがけで来ていて、二日券や三日券であれこれ行っているようでした。

「ホンッとにここだけの券でいいのね」
と、入場券売り場の方に念をおされたくらいでした。

一日券は、割高になっちゃうんです。

エプコットEPCOTは、Experimental Prototype Community of Tomorrow(実験未来都市)の頭文字をつなげたもので、常設の万博みたいなテーマパーク。

前半に科学をテーマにした乗り物が集まり、後半には、英国、フランス、カナダ、日本、建国時代のアメリカ、ノルウェー、中国、ドイツなどのパビリオンか集まっています。

この、各国のパビリオンがおもしろかったんですヨ、ご当地風建物が並び、その国を本当に歩いている感じ。

日本エリアに、五重塔や正倉院や姫路城が本格的に再現されています。館内には三越が入り、原宿などによく
ある外国人向けみやげもの店になっているんですが、大盛況でしたヨ。

階上はカツカレーやラーメンなどもあるレストラン。

「あっちにフランスコーナーがある」
と、フランス人2匹(うちの2匹です)は目もくれず突進していきます。

2匹は、パリのうちの近所にあるようなカフェレストランに、それはもう磁石でぐいッぐいひきつけられるばかりでした。

たまさかに家族で外食となると2匹は、ピザ、スパゲッティー、マクドナルドを盛んに主張し、間違ってもフレンチレストランなど行きたがりません。なぜというに、肉や野菜ののったお皿となれば家の晩ごはんとそんなにはかわらず、外食の「感じ」がでない。

それがまあ目の色かえて、牛肉の赤ワイン煮だのサーモンのクリームソースだのを自ら注文するんです。

「食後のチーズも食べるよ」
と、11歳のムスコなど言い出す始末。

カフェレストランの中は、フロアの人たちも全面的にフランス人で、食事がすんだらこのまま徒歩で自宅アパートに帰れそうな気さえしてきました。

2匹はこれで大いに里心つき、
「もうアメリカは十分、家に帰りたい」

各国のパビリオンでは、ドイツコーナーのソーセージと生ビール各種など、各国のつまみとお酒がたのしめ、各館めぐっていろいろ賞味したら
(さぞいいだろうなあ・・)
と、ワタシなど大いに後ろ髪ひかれながら、午後も遅くならないうちにホテルへ戻ることとなりました。


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ホテルはユニヴァーサルスタジオリゾートの中にとりましたが、60年代がコンセプトでなかなかよろしい雰囲気でした。

前菜は、なし(パリにもう戻って来ているんですがアメリカで食べたものを書きます)
主菜は、シェラスコ(ブラジル風焼き牛肉のそぎ身)、フライドポテト

立ち呑み日記・いざ遊園地 [おでかけ]

復活祭の学期休みで、アメリカはフロリダのユニヴァーサルスタジオリゾートに泊りがけで遊びに来ているところなんですが(昨日の立ち呑み日記をご高覧ください)、早朝のホテルって、実に活気がありますネ。

(いざ遊園地へ出陣するぞ)
という気勢にあふれている。

(だからしっかり腹ごしらえしなきゃ)
といわんばかりに、レストランコーナーではみなさんおテンコ盛りのお皿に向かっている。

ここのレストランコーナーはカフェテリア方式で、朝は、パンケーキ、フレンチトースト、ワッフル、クロワッサンサンドなどをメインに、ポークソーセージ、ベーコン、スクランブルエッグ、さいの目ポテトフライ(モーニングポテト、と書かれてました)などをずっしり添えたひと皿が中心です。

これぞアメリケ~ンブレックファスト。

ワタシら親子もパンケーキ(一人あて4枚)と持ち重みするつけ合わせにのぞみます。パンケーキにはメープルシロップをこれでもかーッというほどかけまわしました。

さて、オナカイッパイのイッパイになったところで無料送迎バスで遊園地へ向かいますが、早朝から腕まくりして息ごんでいるのは、
「初心者である」
ということが、割に早く明らかになりました。

ワタシら親子もまたそうでしたが、遊園地三日券を買って来ている都合上、
「なにも一日に全部詰めこまなくても」
という気持ちに割りとすぐなり、のんびりムードへと移行する。

とはいえ待望のハリー・ポッターエリアに限ってはエクスプレスパスという有料の優先券もなく、行列しないことには乗りたいものにも乗れません。

ハリーポッターの町では、魔法の杖専門店で、映画の中でハリーが初めて自分の杖を選ぶシーンと同じシーンがお客の中から一人指名され再現されるんですが、魔法学校の生徒の扮装をしたうちのムスメが長年の念願かなってみごと選ばれ、オカーサン(ワタシです)としても肩の荷をひとつおろした気分になりました。

ここの杖は特別製で、ハリーポッターエリアに点在する印のところで示された通りに杖をふると杖先のセンサーが反応して、じゃなかった、本当の魔法がつかえ、ショーウインドーの人形が動き出したり、井戸から水がピュッととび出たり、します。

ホグワーツーツ魔法学校行き列車がまたおもしろかったです。

ロンドンのキングスクロス駅から乗るんですが、前方に並ぶ人たちが、壁に次々と吸い込まれて消えるのが見てとれます。

ワタシら親子もまた後方の人たちから見れば不意に壁に吸い込まれ、プラットフォーム93/4番線へ。列車の窓は画面になっていて、映画で見たような光景が映し出され、行きと帰りでは風景が異なりました。

ハリーポッターを堪能し、他のエリアで乗り物にほんのひとつかふたつ乗ったところで(ワタシは棄権)、
「暑い、もうホテルに戻りたい」

3日もいるんだし、とのことで、そりゃマそうだワと、はやばやとホテルのプールサイドでのんびりすることになりました。

無料バスがホテルに着くと、朝からのーんびりして午後も遅くなってから遊園地に繰り出そうという家族連れが少なからずいました。


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大阪のUSJほどではないですが、ハリーポッターコーナーはやはり一番混んでます。

前菜は、なし(もうパリに帰って来てますがアメリカで食べたお食事を書きます)
主菜は、芝エビのケイジャンソースとチーズ入りポレンタ、蒸しブロッコリー、白飯



立ち呑み日記・オルランドへ [おでかけ]

「アメリカへ行きたいかーッ」
という福留功男アナウンサーの雄叫びが響き渡った気がして(脳内に)、復活祭の学期休みに出かけることとあいなりました。

アメリカは、フロリダのオルランド。

オルランドはテーマパーク銀座でディズニーワールドがあり、ワタシら親子が目的とするユニヴァーサルスタジオが、あります。

ユニヴァーサルスタジオは2つの敷地からなるんですがそのどちらにもハリー・ポッターの町があり、ここに来るのが13歳のムスメの長年の夢でした。

ハリー・ポッターエリアは大阪のUSJにもありますが、ロンドン裏町の石壁の背後に広がる魔法使い横丁の再現は、ここオルランドだけなんですヨ。

ふたつの町は、魔法学校行き列車でつながっている。

このふたつの町を列車で行き来するには2パーク共有チケットを入手せねばならない・・
テナこと、オカーサン(ワタシです)は首っ引きで調べてあります。

なにしろ近所の公園に出かけるのとワケが違い、大枚はたいて国際線で行くわけですしね。その緊張といったらこれまでのどんな家族旅行とも比べられないくらいでした。

言葉の通じないところで何かあったらどうしよう・・

「欧州住まいなんだし英語話せるんでしょ?」
と、おっしゃりたいでしょうが、住んでいる都合上フランス語はあれとしても英語は学生以来というありさまです。

パリからオルランドへは直行便はなく、乗り継ぎ時間がよかったので行きはニューヨーク経由にしました。

「なんという無知ッ、乗り遅れ必至だぞ」
と、トランジットがほんの1時間半と告げるや旅慣れた親戚に頭ごなしにやられ、大いにひるみました。

ニューヨークのJFK空港といったら入国審査が入念で遅々として進まぬひッどい行列で知られ、しかも乗り継ぎ便でも荷物をいったん引き出さねばならずその時間がさらにかかる、というんです。

目の前真っ暗になって航空会社のパリ支店に電話で問い合わせたところ、
「荷物は目的地へ直接行きますからダイジョブですってば」

ところがこれが真実でなかったこと、ニューヨークに着いてからわかりました。

飛行機が着陸するや航空会社の方がワタシら親子を待ち構えていて、乗り継ぎ時間が迫っているところから「エクスプレスパス」という赤い札を渡され優先的に入国審査をというので大いに気をよくしたのもつかの間、目の前になぜか荷物のターンテーブルがある。

荷物は直接行くんだし関係ないけどネ、
と、たかをくくりながらも念のため聞いてみると、
「あなたはここで自分の荷物をとらねばなりません」
と、「ユー・ハフ・トゥー」の構文でかえって来るではないですか。

聞いてよかったー、
と、これほど思ったこと、なかったです。

着替え無しに暑いテーマパークにのぞむことになる、だけならまだしも、荷物引き取りにニューヨークへ戻らなければならぬとなった日には、短期滞在のバカンス台無しなんでもンじゃないですからね。

時計にらみつつ荷物を引き出し、すぐまた預け、「エクスプレスパス」ふりかざして列に割りこみ、飛行機は念願のオルランドについに到着しました。

テーマパークの町は、夕刻でも35度という暑さでした。


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ホテルのプールにのーんびりした風景がありました。プールはいくつもあり、ここがただ今遊泳禁止だったからなんですが、このあと解禁となったら鴨は飛び立ち、子どもたちの群れがバッシャーンといきました。

前菜は、なし(もうパリに帰ってきているんですが、アメリカ旅行中のメニューを書きます)
主菜は、量り売りのサラダバー(サラダ菜とロケットサラダの土台に、トマト、冷鶏肉、ツナ、つぶしゆで卵のマヨ和え、コーン、マヨ和えマカロニ)、サウザンアイランドドレッシングで




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