立ち呑み日記・カミカミ系 [ワルガキ]

「『オングレ』が食べたい」
と、オカーサン(ワタシです)が晩ごはんの買い物に出ようとしたら、11歳のムスコ。「オングレ」というのは牛ステーキの部位でスジがあり、みしっとした噛みごたえです。

カミカミするヨロコビ、テナ感じでしょうか。

「箸で千切れそうにやわらかーい」
というのを最良とする日本人の舌(というか歯ですね)には不合格の烙印を押されかねない部位ではあります。ワタシもパリに住み始めのころは敬遠でした。なにしろこめかみが痛くなる。

そのうちに慣れました。

とはいえ、牛肉といったら「ラムステーク」という、スジなく一点曇りなき赤身の部位が値段は高いが最高、さらにその部位の中心部であるクール(芯)・ド・ラムステークこそが最高の最高と、ずうっと思いこんできました。

舌に吸いつくような赤身で、噛むそばからノドがひっぱるんですヨ。

値段が張るといっても日本の銘柄牛とは雲泥の差で、街角の肉屋ならキロ30ユーロ(約3400円)前後です。

クール・ド・ラムステークといったらフランス人のうちのオットの大好物で、肉屋に行くと必ずこの部位を買ってきます。家族四人400グラムというところでしょうか。

「としよりはラムステークを好むもんさ」
と、いつだったか肉屋のご主人が言っていたものでした。

スジがないので噛みやすく、均一にあっさり。そこいくとオングレは皿の上でのナイフの入れ方や噛み具合によって味が微妙に変化します。

「肉好きはオングレやバヴェットだね」
と、肉屋のご主人。

バヴェットも牛肉の部位で、オングレと近いところに位置しているみたいです。両者ともに、噛みごたえがある。

どう違うの?
と、聞かれるとあれですが、噛みごたえそれぞれ。

あとほかに「アレニエ」という部位などもあり、この箇所は部位が小さいのでめったに店頭にのぼらないのだそうな。

「アレニエ」もまたカミカミ系です。うちの近所の肉屋では、鹿肉など常備でない肉がのる丸皿に、「アレニエ」は特別待遇で鎮座します。

「お、『アレニエ』があるじゃないか」
と、とびついている紳士を見かけたこともあります。

この紳士、相当な肉好きと見受けました。

マ、フランス人にとって牛肉の部位を指定するのは、日本人がまぐろの中トロだの赤身だの中落ちだの血合いだのを当然のごとく食べ分けるのと同じですけどネ。

クール・ド・ラムステーク、ワタシは最近少々飽きて来ました。

どこもかしこも上品であっさりで非の打ちどころないんですが、それより切り方やカミカミでうまさが変化するほうが、おもしろい気がするんです。

これは好みでありましょう。

ムスコのなかよしのエンゾーくんなど、オングレのオの字が聞こえて来ただけで「ウエー」だそう。

なぜというに、噛むのがメンドウ。牛肉なら噛まずとものみこめそうな挽き肉ステーキばっかりをオカーサン(エンゾーくんのオカーサンです)に要求するそうな。

エンゾーくんはしかし固くなったバゲットをおやつ代わりにガリガリカミカミするのが大好きで、エンゾーくんチにはうちの台所みたいに残り物の固いバゲットの切れ端の山は、ないそうです。

前菜は、アボカド、レモンで
主菜は、牛挽き肉ステーキ、蒸しブロッコリーと赤ピーマン焼きを添えたカレーライス


この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。