立ち呑み日記・忘れ物 [ワルガキ]

「オ、オカーサンたいへん、忘れ物した」
と、朝8時半過ぎ、ワルガキ二匹が登校してやれやれとお茶を飲んでいたら、12歳のムスメが慌て切って電話してきました。

「今日提出の書類、おねがい持ってきて」

こちらは学年末で、来年度の登録のための書類一式を茶封筒で渡されていたんです。

保護者の連絡先だの、新年度から始まる第二外国語は何語にするだの、最後に予防接種したのはいつだの、そういったモロモロで、託児所からはじまり幼稚園でも小学校でも書かされてきたものです。

が、中学ともなるとよそよそしいものですネ。

「汚い字のものは一切受け付けません」
と、上から目線はなはだしい。

読みやすい字でお書きください、ぐらいの調子で書けないのかしらねえ、と、鼻白みましたがこれ、生徒への忠告なんですね。

中学生も上級学年にもなれば自分で書いて提出するようになります。

ムスメはこの書類が配布された次の次の日ぐらいにオカーサン(ワタシです)に見せたので、期日前にはすっかり書き上がってました。

第二外国語も、あれこれ吟味して決めました。

それをカバンにしまいながら、授業の道具の入れ替えをしたときにいったん出して、そのまま忘れた。

よくある忘れ方です。

ワタシもまたムスメの年齢のころはさんッざん忘れ物しましたからねえ・・

休み時間に目の色変えて廊下を走り、教員室の前に置かれた赤電話から「おねがい持って来て」の電話をしたもンでした。

赤電話にはたいてい数人の行列ができていて、「持って来て」と、それぞれに懇願しています。

ただワタシ(や他の行列の生徒たち)は電車通学だったんですね。それなのに
「持って来て」
と、平然とやるわけです。

全くもって「甘ったれ」でした。

それに比べたら、ムスメの中学は目と鼻の先。
「仕方ない、持って行きましょう」

フランスの学校は登校時間が厳格で、それ以前でも以降でも門が開かないことになっています。10時20分に着くと、本日3時間目始まりの生徒たちが門の前でたむろってました。

男子数人は、サッカーボールを蹴っている。男子って中学生でもボールひとつあれば遊べるものなんですネ。

やがて門番の若い女性の姿が見え、ガチャリと鍵をあけて鉄格子の重そうな扉が開きました。

早々と授業の終わった生徒が生徒手帳を掲げながら通ろうとし、門番はその生徒手帳を厳重にチェックします。

そこへクラスメートと肩を並べてチンタラタラリとのーんびりやってきたうちのバカムスメ。

おともだちがついて来てくれたのかなと見れば託児所時代からなかよしのアデライドちゃんで、さらによく見れば、どうやって校内に入ったのかアデライドちゃんのオカーサンがしゃがみこんで、たった今手渡された書類に書きこんでいる。

その様子をうかがいながら忘れ物を無事渡し、またチンタラタラリと肩を並べて戻って行く二人組を見送って、閉じかけの扉からすべり出て来たアデライドちゃんのオカーサンの、やれやれと大きなため息をつくまいことか。

アデライドちゃんは書類をカバンから出すのも忘れていて、選択すべき第二外国語も、今、この場でにわかに決めたそうです。


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通りがかりにパチリ。

前菜は、アボカド、レモンで
主菜は、タラそぎ身フライ、びらびらショートパスタのバジリコソース和え、いんげん塩茹で

立ち呑み日記・りぼん結び [ワルガキ]

ありゃー、ひも靴しかないのね、
と、しばし頭を抱えました。

10歳のムスコの運動靴が、浮浪者でもこんなの履いてない、というまでボロボロになったので、当の本人をともない大型スポーツ用品店へ買いに来たところ。

ムスコは無類の不器用で、これまでひも靴を避けて来たんです。

朝など、ただでさえ半裸でボケーッと座り込んだなりで身支度にやたらと時間がかかるところ(かつ登校時間目前なのにどこ吹く風で悠―然と長トイレ)、この上靴ひもに手間取られた日にはオカーサン(ワタシです)血圧上がっちゃいます。

幸い運動靴はスクラッチでいいのがいろいろありましたからね。

ところが足が大きくなり、いよいよ大人と同じ、ひも付きスニーカーでないとほかになくなった。

「出来ないよう」
と、上から下までぴッかぴかのスニーカーがずらーっと両側に並ぶ通路にムスコは座り込み、進退窮まりました。

「今ここで結び方の練習する」
と、手近の、ジャイアント馬場が履きそうなほど大きいスニーカーを手に取って、ムスコ。自分好みを選ぶにも、結び方が解らなければ選びようがないと言うんですね。

10歳にもなるまで蝶結びを教えて来なかったことをつくづく悔いました。

フランスは子ども用でもひも靴がよくあり、公園などで坊やがしゃがみこみ小さな指で丁寧にゆーっくり革靴のひもを結んでいるさまを
(かわいいなあ、エライなあ・・)
と、目を細めて眺めることはよくあるんですが、それがわがムスコには反映されなかった。

ワタシ自身は小学校にあがるころ、当時しょっちゅう着せられていた上着の首元にりぼんがついていたところから結び方を体得しました。

どんなふうに教えてもらったか、もはや定かでありません。

一方のひもを人差し指にひっかけ輪っかをつくりもう一方をぐるっと回して耳を出す、ト、もはや目をつぶってでもできますが、
ぐるっと回して耳を出す、
ここを自分でやるのではなく、子どもに短時間で理解させるのは生半可でないです。

まして練習用にと手にしているのは、売り物(買わない)の靴。(困ったな)という焦燥感でじっとりヤな汗をかきました。

あとでパソコンで検索して知りましたが、色違いの二本のひもを二組用意し、子どもの横に並んで同じことをやって見せながら最小限の語彙で説明するといいそうです。

こちらは小半時間も格闘し、ジャイアント馬場用はみごと棚へ戻りました。

それにしても蝶結びって、カワイくやろうとするとなかなかむずかしいですよネ。気を抜くと、すぐ縦結びになっちゃう。

「よくある縦結びの例」
として、どこかのオカーサンのエプロンの背中の写真がありましたが、ずんどうに蝶結びが縦につっ立っているのをこうしてしみじみ眺めてみると、所帯じみてるっていったらないです。

しかしまあ、エプロンの後ろ姿までキチンと気を配るのは若妻の時代で十分、な、気も、します。

自分にゃ見えぬ。だいいち最近はボタンでとめる素敵なエプロンだっていろいろありますしね。

さて、ムスコのほうは、黒い、いかにもすばしっこく走れそうなひも付きスニーカーを「これ」と選びました。


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大親友とともに靴ひもを結ぶの図。

前菜は、トマトサラダ
主菜は、牛挽き肉ステーキ、モロッコいんげん塩茹で、簡易クスクス

立ち呑み日記・ザ・カンニング [ワルガキ]

学期休みの最後をしめくくり、晩ごはんの後DVDで「ザ・カンニング/IQゼロ」をのんべんだらりと観ることになりました。

みなさま憶えてます? この映画、日本では1982年に公開。本国フランスでは1980年です。

バカロレア(大学入学資格)になんとしても合格をと親までも手を貸してカンニングあのテこのテを駆使する抱腹絶倒コメディー。

ワタシは名画座落ちの三本立てで、お腹抱えてイスから転げ落ちそうになりながら観た記憶があります。

封切り翌年のテレビ放映では、吹き替えに当代人気急上昇中、初代「いいとも青年隊」の久保田篤・羽賀健二・野々村真のお三方が配役されたほどに評判の作品でした。

今、外国で観客を呼べるフランス映画といったら芸術性の高いものばかりのような気もしますが、この時代は娯楽作品の底力があったんですネ。

「エマニエル夫人」シリーズや、ジャン=ポール・ベルモンドの冒険活劇などもこのころの作品です。

「ザ・カンニング/IQゼロ」は、フランスでこの20年間にテレビで何度も繰り返し放映された映画の13位、というほど、リビングルームに浸透している一本のようです。

「エーわざわざまた観るのォー?」
というのが、ですからフランス人のオトーサン(ワタシのオットです)の態度でした。「でもまあ久しぶり、暢気に笑おうかナ」

ところが気がついてみれば、35年も前の作品なんですね。暢気にお腹抱えるどころか、どこをとってもしみじみ感心することしきりでしたヨ。

まずは、バカロレアのことを古くからの口語で「バショー」と、ホンペンの中でひっきりなしに出て来るんですが、中学生のムスメに言わせると、「なにその旧石器時代の呼び方」。

バック、と、こう言うのが今では普通です。

バックもといバショー受験に失敗して、アッパーミドルクラスの街ヴェルサイユの予備校に通う青年淑女たちが引き起こすドタバタ劇ですが、この予備校の初日のシーンにヘーエとなりました。

60がらみの女校長が入り口に仁王立ちし、生徒の身だしなみをチェックするんですね。

ジーパンで来た女生徒へ厳格に着替えを命じ、
「スカートで通学しなさいッ」

なんで? と、小学1年からこのかたスボンしか履いたことのないムスメ。

ワタシなど学内スボン禁止という、厳格では右に出るもののない女子校育ちですからちゃんと説明できそうでしたが、改めて聞かれてみると、「ンートなんでだったっけ?」・・

・・・シーンは展開していき、アメリカ製というスパルタ教育機械が導入されたりと、ドタバタはエスカレートしていきます。

そしていよいよ試験当日。

アフリカの、首相の座が約束されていながらの劣等生がお父さんの奏でるタイコの音で答えを知るシーンが、当時は実に実にバカバカしくて息が出来ないくらい笑いましたが、今観るとエコというかアフリカの知恵というか、感心させられることしきりです。

カンニングの甲斐あって全員合格し、その10年後。

全員が社会で成功している大ハッピーエンドなんですが、経済の低迷が続き若者の失業が当たり前の今日では、遠い夢の世界のようです。

写真はしばしお待ちくだされ。

前菜は、メロン(初物です)
主菜は、仔羊腿肉ソテー、鱈(たら)とニンニク入りじゃがいもピューレ、パフリカのグリル


立ち呑み日記・チェスの大会 [ワルガキ]

「授賞式にうつります」
と、大中小のトロフィーを前にしてマイクを握る押し出しのいい紳士。

ただ今、10歳のムスコの参加したチェストーナメントのいよいよ終幕です。

チェスはフランスの学内クラブ活動のもっともポピュラーなものです。「フランス・チェス連盟」という全国組織があり、ここに加盟する友好団体のチェスクラブが近隣の小中学校に講師を配置するしくみになっているもよう。

学年が上がってうまくさせるようになってくるとチェスクラブ主催のこういうトーナメントへ出場のお声がかかる、というわけです。

昨年、ムスコはなかよし3人組で初参加し、2勝2敗2引き分けの42名中19位という中途半端はなはだしい成績をモノにしました。他のふたりも同じようなものでした。

が、3人組はこれでチェス熱にがぜんとりつかれたんですね。クラブ活動とは別にチェスのお稽古にも通いたいと言い出した。

「早めに申し込むと割引きがあっておトクですぞ」
というクラブ主催者の申し出もうれしく、オカーサン3名はおっとりがたなでインターネットで登録しました。

それから半年。

今週末、こちらは復活祭の連休で、3人組のうちのひとりは家族旅行で欠席ですが、残るふたりは意気揚々と白黒の席に着きました。

勝つと1点、引き分けだと0.5点もらえ、第2局からは同じ点数どうしで対局し、今回は5局行います。

ムスコは第1局から3回続けて勝ちすすみ、日本人のオカーサン(ワタシです)の内心鼻息荒くなるまいことか。

しょっぱなから3回とも勝ちで来ているのはムスコともうひとり、対局の合間にペーパーパックにかじりついている見るからに聡明な少年の、ふたりのみ。

「コッテンパンにのしてやるゼ」
と、ムスコは意気込みましたが、4局めは聡明くんに軍配が上がりました。

ここで風向きがかわり、最終局も無念の黒星。

子どもってあっさりしてるもンですネ。ムスコは(あっちゃー)というように両手のひらで頭を包むようにポンと叩くとさっさと席をたち、さっきから苦戦を強いられているなかよしの対局にかじりつきます。

なかよしは、2勝3敗。今季やや不調。

そして簡単な授賞式が始まったわけですが、結果発表は成績の低いほうから、拍手とともに全員にいただけるメダルを首にかけてもらえます。

その賞の名称がふるってるんですヨ。真っ先の最下位0勝5敗(2名いました)が、「名誉参加賞」。

優勝者のほうから表彰していった日には「名誉参加賞」受賞者は顔をあげたくない心境になるでしょうからね、感心しました。3点獲得のムスコは「金の騎士」賞をいただきました。

この先が銅、銀、金の各賞で、トロフィー授与。

「クラブメンバーが、やはり、上位に残りましたね」
と、マイクの紳士。「当然ではありますが」

クラブへ申込用紙はこちらですのでぜひ才能をのばしてあげてください、と、PRにこれおつとめになります。

ワタシら親子などは去年これでヤラレたクチです。

トロフィーなんて実生活で何の役にも立たない代物なのに威力たるや絶大で、ムスコは指くわえてうらやみ、
「次こそはもらえる、んじゃないかな」
と、決意を新たにしたようでした。


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その朝は小雨もやいでした。

前菜は、すいとん入り野菜スープ
主菜は、仔羊腿肉ソテー、ニンニクとパセリ入りじゃがいもピューレ、いんげん塩茹で


立ち呑み日記・おいしい蛇口 [ワルガキ]

「手ェ洗って来る」
と、おやつのチョコチップ入りパンを口に押し込みまだカミカミしているというのに立ち上がり、洗面所へ向かう12歳のムスメ。

手もいちおうは洗うんですが、身をのりだして蛇口から「口のみ」しようという魂胆なんですね。

その姿を初めて目撃した時はぎょっとしましたヨ。
「ちゃんとコップで飲みなさいッ」

子どものころ台所で口のみしようものなら叱られませんでした? お行儀悪いことはなはだしい。

♪蛇口に顔を近づけて、水のむ音が聞こえてくる・・
と、内藤やす子が歌うように、ナントカ荘三号室あたりのドアを細く開けて中をうかがい、夜更けに移り香つけてしのび足で帰って来る男のゲスっぽさが口のみでよく表現されているほど。

「ダイジョブ」
と、ムスメはコップ不要である旨むしろ胸を張るんですからイヤになります。

小学校最終学年のムスコもですけど、「口のみ」を小学校入学とともにおぼえて今日に至るという年季です。

しかしまあ、学校の水道でのむ水はおいしかったですよネ。体育の後など行列して順番を待ち、口のみ、ないしは両手で受けてゴクゴクいく。ワタシは両手派でした。

この時、「おいしい蛇口」というのがありませんでした? 同じに並んでいる蛇口なのに、左から二番目のが一番おいしい、テナ感じの確信があってそこへ並ぶ。

「おいしい蛇口」の水は水量多くよりつめたい(気がする)。

各人各様の「おいしい蛇口」があったように思います。だからこそ、ひとつの蛇口にのみ行列が集中することもありませんでした。

「おいしくない蛇口」というのはしかしあり、こういう蛇口は水流がショボショボで金(かな)くさい味がすると全校生徒に知れ渡っていて誰も寄りつきません。

今、少年少女向け小説などでこういった体育の後などの水のみ場の描写は、まるでないそうです。

頬を紅潮させ汗みずくで、水道の蛇口から流水を口のみする充実感・・・テナこと描いても、当の少年少女から共感がまるで得られない。

日本に住むワタシの甥っ子はサッカーに夢中ですが、頬を紅潮させ汗みずくで、持参の水筒に口つけて氷がカラカラ鳴るつめたーいポカリスエットをゴクゴクいきます。

フランスは古くからミネラルウォーターの国でうちでも食卓にいつでも置いてありますが、ふだん学校に水筒提げていく習慣はありません。のどが渇けば水道で口のみし、ひどいときはトイレの手洗い場でもやっちゃう。

うちのワルガキ二匹はこれを家庭に持ち込んだわけです。

ムスメにいわせると、洗面台の水はおいしいが台所の水はそうでもないから絶対やらない。オカーサン(ワタシです)としては、水はそもそも同じ出どころから枝分かれしているだけだし、なにより台所の水で料理をしているわけで、心外ではあります。

それにしても、子どものころって水道の水が今飲むよりずうっとおいしかったナァ・・・

カレーライスを食べた後に一気にあおる一杯の水。

お風呂の湯船につかったまま水道の栓をひねって口のみするのがまた、こたえられませんでした。


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今宵はユダヤ教の「過ぎ越しの祭」で、そのお供えです。お節料理といっしょでそれぞれに意味があります。ありあわせの食器なんですけどネ。

前菜は、すいとん入りスープ、ゆで卵、レバーペースト、ゆで卵と玉ネギのみじんペースト、
主菜は、仔羊腿肉ソテー、じゃがいもピューレ、いんげん塩茹で



立ち呑み日記・虹色菓子 [ワルガキ]

(なぜ、ひとは食べ物を染めてみたいんだか)
と、スポンジケーキの生地を練りながら、どうしたって深-く深―く考察せずにはいられませんでした。

ただ今、12歳のムスメのおねがいで「レインボーケーキ」なるものを作成しているところ。

「何なのそれ」
「知らないのォーッ?!」
と、ムスメは素っ頓狂な声をあげ、オカーサン(ワタシです)のパソコンでrainbow cakeと打ち出し、まず見せてくれました。

するとまあ、画面にずららららららっと毒々しく居並ぶ虹色に折り重なったケーキの数々。レシピもまた満艦飾です。フランス語のサイトだけでなく、英語も、日本語も同様でした。

色の毒々しさからいって発祥はアメリカじゃないかと思うんですが、世界的に流行ってるみたいです。

韓国やシンガポールには、自家製レインボーケーキでつとに知られるオッシャレなサロン・ド・テに行列が出来ているもよう。

ホントになぜ、なぜ? こんなに隆盛しているんだか。

食べ物を食べ物らしくない色に染めてみたいという願望は、どこから来るのか。

こういう食べ物には食紅が必要不可欠ですが、パティシエなど専門職ならともかく一般家庭で気軽に買えるものでしょうか。

「買える。スーパーの『モノプリ』で売ってる」
と、ムスメはあまたあるレシピサイトを読み込み、こないだうちから学校帰りにクラスメイトと寄り道してちゃんと手に入れているんですね。

お菓子素材コーナーで、お小遣いを大枚はたくまでもなく、円にしてほんの2、3百円だったらしいです。食紅は赤・黄・青の三原色。これを混ぜて紫にしたり緑にしたりするわけです。

作り方は、そんなにはむずかしくありません。

まずスポンジの生地を練り、これを六等分して紫、青、緑、黄色、オレンジ色、赤の六色に着色して一枚ずつ次から次へとオーブンで焼き、接着剤がわりのクリームを挟んで積み重ねていく。以上。

虹って七色じゃなかったっけ?
と、首をひねりましたが、虹が何色に見えるかは文化によって異なるものだそうです。日本では紫、青、「水色」、緑、黄色、オレンジ色、赤の七色ながら、沖縄地方では明暗の2色ととらえるそう。欧米では先の六色と数えるらしいです。

そこで生地を六等分するわけですが、生地自体はバターと砂糖と卵と小麦粉の正統派です。カフェ・オ・レボールを六つ並べてへらで加減しながら分けて行きます。

そこへ三色の食紅を、ムスメが誇らしげに調合。赤、黄、青の原色および、赤と青で紫、赤と黄でオレンジ、赤と青で緑。

「色は勇気をもって多めに入れましょう!」
と、レシピには太字でありました。遠慮がちに着色すると焼き上がりがどれもこれも灰色っぽくなっちゃうのだそうです。

毒食らわば皿まで。よしッ、たっぷり混ぜてちょうだい・・

・・と言いながらも、ボールの中身が真っ青に真紫に真っ赤になっていくのを混ぜるのは、なかなかひるみます。

おいしそうだった正統派の生地が、見る見る「うげー」という色合いになりました。これを一枚ずつ、170度のオーブンで13分。

どうあってもノド通りそうにない、というのが出来上がりました。


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と、いうわけでこれです。味はいたって「ふつう」なんですが、なにしろ嵩(かさ)もあり、薄い一切れ食べただけで「もういい」と、当のムスメまで皿を押しのけます。このまま残る気配濃厚なのを、いったい誰が片付けねばならぬのか・・

前菜は、トマトサラダ
主菜は、ハンバーグステーキの赤ワイン煮、ミニマカロニ、いんげん塩茹で、グリーンサラダ









立ち呑み日記。黄色いバケツ [ワルガキ]

小2のこくご(上)の『黄色いバケツ』という単元を、10歳のムスコが日本語塾で目下べんきょうしております。

10歳ですからホントは小4の国語(下)が終わっていてしかるべきですが、なまけになまけてこのありさま。

『黄色いバケツ』、大人の胸をもきゅんとくすぐるおはなしなんですヨ。

きつねの子が、丸木橋のたもとに黄色いバケツが置かれているのを見つけてからの一週間が細やかに描かれていきます。

友だちのくまくんとうさぎちゃんの発案で、一週間後にまだそこにあったらきつねの子のものにしたらいいということになります。

さあそれから毎日、きつねの子は黄色いバケツを見守り続けます。

ある時は持ち上げてみて、ある時は川釣りしたつもりで魚を投げ入れるしぐさをしてみる。土砂降りの日には黄色いバケツが雨にうたれているさまにきつねの子は泣きたくなりました。

(ウンその気持ちわかるわかる)
と、手垢まみれの小2(上)をパラパラしながらこちらも鼻がツンとしてきます。なにも一週間と杓子定規にしなくてももらっちゃえばいいじゃないの。

きつねの子は、バケツをひっくり返して
きつね ごんすけ
と、棒きれで自分の名を書く真似までしているんです。

♪もしも~ピアノが~弾け~たなら~・・
と、なぜだかここで脳内BGMが鳴り響きました。

♪だけどぼくにはピアノがない~・・と、大人だってピアノも弾く腕もない身を嘆くというのに、あこがれの黄色いバケツが雨に濡れるにまかせて見つめるだけのやるせなさ・・(涕泣)・・・

ついに一週間が過ぎますが、昨夜までちゃんとあった黄色いバケツは、こつ然と消えています。持ち主が取りに来たか、別の誰かに拾われたか。

「いいんだよ、もう」
きつねの子は、キッパリ言ってにこっと笑うんです。長いこと黄色いバケツといっしょにいた気もするし、その間は他の誰のものでもない、自分のものだった・・

「このときのきつねの子の気持ちを自分の言葉で説明してみましょう」
と、いう宿題が出ました。

「オンサンフー(しらねーよ)と思ってるよきつねの子は」
と、メンドくさそうに、ムスコは言い放ちました。
「なんですと? 日本語でちゃんと言いなさいッ」

「一週間たのしかったけどもう終わったんだよ」

・・・・まあ、あながち間違ってもないんじゃないかと思いましたね。子どもは成長し、大切な思いはあれとしてもさっさとページをめくって次へ行く。

「子どもは時として全宇宙を見る」
と、このおはなしの作者・森山京(みやこ)は単行本のあとがきにお書きと検索して知りました。

「この後きつねの子が別のバケツを手にしたとしても、もう黄色いバケツといっしょにすごした時ほどの感動や喜びは持ち得えないと思います。かけがえのないものはたった一つしかないと一番分かっているのは、ほんとうは幼い子どもであるのかもしれません」・・・

森山京は、「25歳、お肌の曲がり角」という誰もが知っている宣伝コピーの作者でもあるそうです。

まいっかときつねのこはおもいました。
と、ムスコはきったない字でそそくさノートに書くと、マインクラフトやりにさっさと起(た)ちました。


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明日テスト、と、12歳のムスメが開いていた理科の教科書の「消化」の単元の冒頭。F1かなにかのチームのお食事風景ですが、よく見るとシャンパンお召し上がりなんですよねえ・・。うらやましい。

前菜は、かぼちゃポタージュ
主菜は、鶏ロースト、じゃがいもロースト(以上昨日の残り)、いんげん塩茹で


立ち呑み日記・早起き [ワルガキ]

「朝、7時に起こして」
と、12歳のムスメ。

いつもは7時25分に起こしにかかり、カメよりうーんとノロノロ着替え、ドロリンと朝ごはんに向かうところです。

なぜ、ムスメは早く起きたいかというと
「時間を有効に使いたい」

ムスメが言うところの時間を有効にとは、朝っぱらからパソコンをいじりたい、ト、まあそういうことなんですけどネ。

とりあえず早起きという前向きな気持ちは大いに買いましょう。

ワタシも憶えがあります。

家族の誰よりも早く、眠くて目がシバシバするほどうーんと早く、布団から出る。子どもにとってみれば未知未踏の世界へ足を踏みいれたごとくで、胸がわくわくします。

窓の外は、茄子(なす)色の空にうっすら混じる茜(あかね)色。

カチャカチャカチャ、と、その時、自転車のハンドルにかかった帆布の手提げのなかで中身の詰まったガラスビンが触れ合うくぐもった音がして、隣家に牛乳が届けられる。

キューッ、カシャン、と、今度はうちの前に自転車がとまり、シュポッ(新聞が来ました)。

そのあとはまた静かな時間です。空が次第に赤みを増して来る。

この時ふと思いついて、そおーっと台所に下りてコップにママレモンを水で薄めて空に向かってしゃぼん玉を吹いたんですが、夢のように綺麗でしたヨ。

透明に吹き出したしゃぼん玉はすぐさま茄子色と茜色に混じり合い、見る見る鮮やかな茜色一色になって中空を覆う。これ見たさに、つづけさまに何日かがんばって早起きしたものです。

が、それもまた飽きるもの。あっという間に元の木阿弥のねぼすけに戻りました。

「朝は早く起きることにしている」
という友人は、今も身近に何人かいます。

そのうちの一人、美人辣腕社長秘書で独身のサユリさんなど、7時半に家を出るのに、4時半に起きるそうです。

ゆーっくりシャワーを浴びて、ゆーっくりコーヒーをわかしてのみ、しぼりたてオレンジジュースと目玉焼きとトーストなんかをゆーっくりしたためる。

その間、当然ながらスマホをいじっている。

独身時代のワタシもまたサユリさんと同じく朝ゆーっくり身支度して、コーヒーのみながらゆーっくり新聞を広げたものです。

サユリさんはスマホで新聞も読むので、新聞をとるのは何年か前にやめたそうです。

さて、オカーサン(ワタシです)の目覚ましがいつものように6時50分に鳴り、いやいやながら起き上がって暗がりの手さぐりで着替え、洗面をすませてから、デワデワとムスメを起こしにかかりました。

が、

「やっぱりもうちょっと寝る」
と、毛布をかぶる。マ、そう来るだろうとは思ってました。

ムスメの早起き宣言はこれで三度目なんです。これまでずうっとおんなじシナリオ。

でもまあ若さとは、早起きを決心してすぐさま挫折し、そのうちに徹夜を経験することになり、このときの反動で早寝早起きを再び決意して実践するも再び挫折・・ト、そういうなかで遊んだり勉強したり、それから仕事したりしていくもンじゃないでしょうかネ。

そのうちにふと気づくと、押しも押されぬオバサンオジサンになっている、というわけです。


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12歳のムスメがなぜか読みたいと言い出した「ハムレット」。会話しかない、話がおッそろしく暗すぎる、と、さんざんでした。

前菜は、アボカドとグレープフルーツとカニ缶のサラダ
主菜は、ホウボウ(魚のホウボウです)のトマト入り酒蒸し、いんげん塩茹で、簡易クスクス

立ち呑み日記・スナイパー [ワルガキ]

「『アメリカン・スナイパー』がすごいんだぜ」
「知ってる、学期休みに観に連れて行ってもらうんだ」
と、チェスのお稽古に向かう道々、10歳のムスコのなかよしの少年二人が熱っぽく騒ぎ立てました。

「ぼくも連れて行ってもらうよ」
と、会話に乗って、うちのムスコ。

少年三人の送迎を担っているオカーサン(ワタシです)は背後から、さながらSPのごとく追随します。

2月の学期休みが目前に迫ったところで、街中の広告塔には「ムーミン・南の島で楽しいバカンス」や「みつばちマーヤの冒険」など、子ども向けのさまざまな映画の告知が出ています。

「そういうガキンチョ映画はタルいから観ない」
と、背後で映画のタイトルを列挙した日本人のオバサン(ワタシです)を鼻で嗤い、三匹は自分らの話題に戻りました。

「アメリカン・スナイパー」の何がスゴイって、銃をブッ放して殺して殺して殺しまくるシーンのリアルさ、なんだそうな。

「それ、どんな映画なの?」
と、背後から問うと、ダラララララーッ、と、オリヴィエくんが巻き舌もいさましく人差し指の銃を右に左にブッ放してから、後ろへ振りかえって説明してくれました。

「アメリカの有名な狙撃主が敵を殺しまくる話」

そんな物騒な映画、12歳以下は視聴禁止ではないかしら。

「かも、しれない」
と、マチスくん。「でもだいじょぶ、チケット売り場で背伸びすればいいだけだもん」

マチスくんは以前遊園地でも身長制限のある乗り物の背を測るところで背伸びで乗り切ろうとしたものの、最後の最後で勇気が出なかったそうです。

「『アメリカン・スナイパー』は殺され方もリアルらしいよ」
と、またしてもオリヴィエくん。

ズキューンと腹に衝撃的な弾丸を受けた敵(に扮したオリヴィエくん)は目を剥(む)き全身を痙攣させ、
「うおおおおおおーッ」
と、断末魔の雄叫びを上げながら腹からとび出た腸をつかみ震える手でずりずり引き出します・・

・・武智歌舞伎、って、あったなあ、
と、その迫真の演技で不意に思い出しましたね。

昭和の時代、武智鉄二という演出家が狂言作者の意図を忠実に演出する実験的な歌舞伎を打ち出したんです。

武智鉄二はホラ「白日夢」という、愛染恭子と佐藤慶がホンバンのセックスシーンを演じた映画の監督です。

ワタシが小学校高学年のころ、たまたま連れて行ってもらった時の歌舞伎が武智歌舞伎で、その歌舞伎とは思えない血みどろの舞台にたまげました。

演目は何だったか、腹を切りつけられるシーンで、普通の歌舞伎ならバッタリとツケが鳴り見栄をきって瀕(ひん)死をあらわすところ、腹にパッカリ大きく真っ赤な傷口が見え、はらわたがドロンドロンととび出て来た。

(また観たいなあ)
と、心に強く思いましたが、小学生のことで自分で演劇のチケットをとることなど知らず、武智歌舞伎を観たのはこれ一回きりです。

「アメリカン・スナイパー」は、あとて調べて知りましたがクリント・イーストウッド監督による戦争映画で、イラク戦争に4度従軍した狙撃主の実話をもとに製作され日本でも近日公開だそうです。


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本屋の店頭でパチリ。光が足りなくてブレちやいましたご勘弁。

前菜は、野菜ポタージュ
主菜は、白身魚フライ、じやがいもソテー、いんげん塩茹で

立ち呑み日記・ローマの休日 [ワルガキ]

イタリアに
「行ってみたい、行ってみたい、行ってみたい」
と、10歳のムスコ。

実は今に始まったことでなく、もう何年も夢見てるんです。

イタリア人がいつもしているように、イタリアのまちを歩き、ピザの斜塔を支えて(写真で)、本場のピザを毎日、毎ッ日食べてみたい。

イタリア人だって、イタリアのまちはまあ日々闊歩しているにしてもそう毎日はピザの斜塔を支えないだろうし(写真で)、ピザだって毎日は食べてないように思うんですが。

ムスコの小学校では一年から四年まで、イタリア語の授業があるんです。語学というよりは情操教育の部類で、イタリアの歌や手遊びを習ったり(成績はちゃんとつきます)。

そこからぜひとも行ってみたいと思うに至ったんですね。

ワタシだって行ってみたい。ワタシがイタリアに行ったのはエート、かれこれ30年も前の学生時代。「ローマの休日」に、なにしろアコガレたんですよねえ・・

スペイン階段でオードリー・ヘップバーンみたいにアイス食べてみたい・・と、夢見て、その通りにしました。スペイン階段は右見ても左見ても、アイス舐め舐め写真撮ってる外国人観光客であふれ返ってました。

今、これできなくなったんですってネ。

景観と衛生に関するローマの条例で、歩きながらの飲食は罰金というなかなか厳しいこととなり、アイスはカフェテリアなりアイスクリームスタンドの店内なりでしか舐められなくなったのだそうです。

さて、ムスコのイタリア熱はここへきてより高まって来ました。なんとなれば、来週から2週間の冬休み(フランスは二か月にいっぺん学期休みがあります)。

この休暇中にぜひともローマを歩き、ピサの斜塔を支え(写真で)、日に三度ピザを食べたい、ト、そう嘆願するんです。

イタリアはフランスのお隣り、二泊三日ぐらいで十分行ける、とは、思うんです。けどねえ・・

せっかく連れて行っても、現地に着いたそばから飽きちゃうんじゃないかと、オカーサン(ワタシです)は懸念するわけですヨ。

大枚はたいて飛行機で行ったところで、
「つまんない」
とほざき、
「ホテルにWIFIあるからゲームしてる」
とかって言い出しかねない。

日本の少年が日本からローマへ行くというならハナシは別です。日本とはまるっきり違う環境に身を置くこととなり、右向いても左向いても圧倒的な感動の連続。

が、パリから行く少年は、必ずしもそうはならないのではないでしょうか。

パリとローマは、大人の目からすれば確かに違いますが、似たような石造りの建物が並び、堅牢な教会があり、泉があり、彫像がある。これらを「眺めるだけ」で、はたして10歳男子が満足するんだか。

そこで晩ごはんの後に、「ローマの休日」を家族みんなで観ることにしたんです。

久しぶりに見るオードリー・ヘップバーン、ほんッとうにもう、もうッ、神々しいまでに可愛いかったです。

「もっと行きたくなった?」
と、ムスコに問うてみれば、「もっとじゃなくふつうにローマ行きたい」

白黒でなくてカラーで街を見たいそうで、10歳男子にはオードリー・ヘップバーンの可憐さなどまるでお呼びでないようでした。


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最近炭酸水といったらこればっかりです。塩分がないと知り合いの心臓のお医者さんにすすめられました。

前菜は、トマトとオイルサーディンのサラダ
主菜は、七面鳥ささ身のムニエル、ニンニク風味じゃがいもオーブン焼き、いんげん塩茹で

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