立ち呑み日記・愚かなまま死ね [おでかけ]

劇場で、心没入して鑑賞している佳境で携帯の着信音が聞こえてくるぐらい腹立たしいことはないです。

許し難いことこの上ない。

いえね、「Je ne veux pas mourir idiot(愚かなままで死にたくない)」という、軽妙で笑いがいっぱいながら胸にズシンとくる芝居を、しかもその初日に観に行ったんですね。

この一月のテロで斃(たお)れた、フランスを代表する風刺漫画家ヴォランスキーへのオマージュ公演です。

初演は1968年5月の学生運動の時代、ヴォランスキーと、演出家で俳優コンフォルテス、当代人気急上昇中で「歌う物理学者」という変わり種のシンガーソングライター・エヴァリストの三名が軸となって制作しました。

この作品は、68年5月のバリケードを舞台背景に、社会に異議を唱える女子学生、若い一工員、機動隊員、ごくふつうの人、支配層の五名がそれぞれの展望の違いをおもしろおかしく浮き彫りにしていきます。

大別すれば、旧態依然とした世界にあぐらをかくばかりの大人と、社会の殻を破って新しい価値を見出そうとする若者。

短いスケッチがいくつも展開し、それを縫って狂言まわし的にエヴァリスト(役の俳優)がギター抱えて歌います。

繰り返されるルフランが、
♪Je ne veux pas mourir idiot(愚かなままで死にたくない)・・

社会のあり様に目をふさいで卑近なことばかりに囚われていていいの? という自戒の警句です。

たとえば、登場人物の「ごくふつうの人」とは、「ご都合主義の日和見主義で、他人の意見を我がものとして発言し、賢(さか)しく、常に強い方へつく」人。

「ふつうの人」は報道記者としても登場し、目の前でたいへんな学生紛争が巻き起こっているというのに、
「カンヌ映画祭でも記事にしようかナ」
と、なきがごとくふるまうんですが、これなど先月30日の日本の国会周辺デモとその報道の状況と重なって唸(うな)りました。半世紀近く前の作品というのに色褪せるどころか普遍的なテーマです。

今日と一番違って描かれているのが、機動隊員です。

機動隊員は秩序の名をかざして警棒を振り上げ、隙あらば誰彼となく激しく打ちつけます。当時の機動隊とバリケードを築く学生とは敵対関係でしたからね。

「Je suis Charlie(私がシャルリだ)」
と、テロを我がこととして捉えた惹句が席巻した大デモ以来、警察は敵対どころか心強い存在となり、
「Je suis Police(私が警察だ)」
とも飛び交ったくらいです。

今回のこの追悼公演も、劇場前に複数の警官が見張りに立つなかで行われています。

さて、うちのフランス人のオトーサン(ワタシのオットです)が制作関係者と縁のあるところから家族そろってかぶりつきの特等席をいただき、舞台はいよいよ最終版のクライマックスを迎えます。

全員が舞台にそろい、声をそろえて畳みかけるように
♪Je ne veux pas mourir idiot(愚かなままで死にたくない)・・

・・・と、そこで、あろうことか携帯の着信音が響き渡ったんです。

それも、ワタシのバッグの中から。気の動転するまいことか、指ふるわせて消音しました。今こうして思い出しても冷や汗が出ます。

反省なんでもんじゃないです。心から、
♪Je ne veux pas mourir idiot(愚かなままで死にたくない)・・


どうしたわけか写真が入りませぬ。スミマセンヌ。

前菜は、トマトサラダ
主菜は、鶏ロースト、野菜カレーライス、ブロッコリー塩茹で

nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。