立ち呑み日記・昭和のサバラン [デザート]

洋菓子のサバランを
「そういや最近見かけない。好きだったのに」
と、学生時代の友人にラインで言われ、そういやワタシも長らく食べてないナ、と、気づきました。

最後に食べたのがいつ、と、ハッキリ思い出せます。かれこれ20年も前、知り合いのお宅にお呼ばれした時のデザートに、出た。

フランス語でサバランは「ババ」といいますが、今どき珍しいワァ、と、そのときでさえ思いました。

「『ラデュレ』にはいつもあるわよ」
と、肩をすくめる女主人である知り合い。

彼女はこの晩餐のためマドレーヌ寺院前にある「ラデュレ」本店へ前日のうちに招待客12人分もの特大サバランを特別注文したと言ってました。

しっとりしたブリオッシュ生地からじゅわーッとしみ出るラム酒のきいたシロップの香りのいいこと。甘過ぎるんじゃないかとおそるおそるスプーンをいれたらとんでもないこと、じゅわーッに魅了されました。

また食べたいナ・・と思いながらも、そのまま20年が過ぎてしまいました。

サバランの発祥は18世紀初頭のフランス、ルイ15世に嫁したポーランド王女マリー・レクザンスカが祖国からベルサイユ宮に連れてきた菓子職人ストーレールの考案によるものです。

ストーレールは5年間ベルサイユ宮で奉公し、その後パリ市内に店を出し、ババ(サバラン)はつとに知られることとなります。

ババは、街のどのお菓子屋にも必ず置いているわけではない気がします。が、「ラデュレ」や「ストーレール」などあるところにはかならず、ある。

パリでババすなわちサバランは、売れ筋のエクレアやミルフィーユに大きく水を開けられながらもスタンダードの位置をキープしている五番手ぐらいの存在ではないでしょうか。

日本でサバランというと「昭和の洋菓子」という感じがしません?

しかしさにあらず、サバランは「不二家」にあり、デパ地下の「FLO」にあり、かの名パティスリー、トシ・ヨロイヅカほかにもまたあるんですね。

「家の近所のお菓子屋四軒どこにもおいしいサバランがある」
と、駒込に住んでいるまた別の友人からの証言ももらっています。

ちゃーんと生存しているのに、最近見かけないと多くの人から言いつのられるのはなぜなんだか。

「帰ってきておくれ、サバランちゃん」
と、阿川佐和子も『残るは食欲』(新潮鵜文庫)のなかでサバランを最近見かけないとお嘆きになっておられるくらいです。

思いまするに、なくなったのはサバランではなく、昔サバランがあったようなケーキ屋、ではありますまいか。

サバランは洋菓子、という頭があるので、スイーツないしはパティスリーとなったサバランが他にまぎれて目にとまりにくくなった。

なにしろスターではなく五番手。スワンとアップルパイの間に置かれていた時代はその存在に気付きやすかったが、クレーム・ブリュレやムース・オ・ショコラなどに囲まれるとあっちへそっちへ目移りしちゃう。

今度食べてみようかナ、と、思いますが、どうせならやっぱり、昭和っぽい懐かしの味でお口の中をじゅわーッとさせてみたいです。


PIC_0205.JPG
18世紀初頭にルイ15世妃マリー・レクザンスカとともにポーランドから来た菓子職人ストーレールがパリ市内に開いた店は今なお同じ場所で繁盛しています。ババ(サバラン)ももちろん名物。

前菜は、カボチャのポタージュ
主菜は、シュークルート(牛、豚それぞれのフランクフルトソーセージ、千切りキャベツの酢漬け)、蒸しじゃがいも


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