立ち呑み日記・血のマリー [食前酒]

「ブラディーマリーを、またしても」
と、海外出張の多い友人がフェイスブックに、空港のラウンジで一杯やっている写真を載せています。

「これ、普段は飲みたいと思わないのに飛行機となるとどうしてなんだか」
と、友人。

ウン、ブラディーマリーって実は僕もそう、あら私もよ、と、その後に同意のコメントがずららっと連なっています。

ワタシもまた身を乗り出しましたね。

ワタシもまた、国際線の飛行機に身を落ち着け、ワゴンサービスが来ると決まって
「ウォッカと、それからトマトジュース、くださーい」

フランス人はトマトジュースにセロリ塩というセロリの香りのついた塩を入れるのを好むのでエールフランスならその小袋が要るか訊かれ、日本の航空会社では氷と輪切りレモンをどうするか訊かれます。

いずれも、つけてもらうこともあれば、そうでないことも、ある。ウォッカが濃からず薄からずのトマトジュース割りを自分で配合して、デワデワひと口・・

・・クイッとひと口喉を通るときは普通にトマトジュースながらあと口に明らかなるアルコール分が感じられ、かといってシャンパンのようには一気にフワッとは酔いません。

酔うどころかむしろ覚醒していくぐらい。それでいて目の下あたりからすとんといい気持ちになってきて、このあと配られるお食事が終わったらグッスリ眠れそうな感じ。

そんなにヨロシイ食前酒ならなぜ家庭でもやらないのかと思うんですが、これがまるっきり食指が伸びないんですヨ。なぜ、ひとは飛行機に乗るときに限ってブラディーマリーを飲むのか。

決めつけじゃないの? と、疑ってかかる方もおられると思いますが、とォんでもない。

『ほろ酔い文学事典』(重金敦之著・朝日新書)によると村上春樹もまた飛行機に乗るときまってブラディーマリーをたのみ、かといって好きかというとそうでもなく飛行機以外ではまずたのまないそうです。

どうです、大作家のお墨付きですゾ。

大作家いわく、せっかくの海外旅行なのだからありきたりでなく
「祝祭的なものが必要とされるはずだ」(『空の上のブラディ・メアリ』)

そうかしら、と、はばかりながら大作家に口を挟(はさ)ませていただきます。

祝祭的な飲み物というよりむしろ、覚醒しつつ心地よくなる酔い心地が、つねにやや緊張をともなって長時間乗ることとなる飛行機と相性がいいのでは、ト、かように推察するところであります。

祝祭つながりでいうと、若きヘミングウェイのパリでの日々を綴った小説『移動祝祭日』によると、滞在中はブラディーマリーを愛飲したそうです。

なぜというにウォッカのトマトジュース割りなら酒くさくならないから妻に飲酒がばれない。

ヘミングウェイが足しげく通った「ハリーズ・ニューヨーク・バー」というオペラ座界隈にある老舗バーこそがブラディーマリー発祥の地だそうです。

うちのワルガキらの日本語学校の近くでもあるし、立ち寄って飲んでみるかナ、とは、ブラディーマリーに限ってはどうッしてもならないんですよねえ・・

どうせなら、やはりこのバー発祥というサイドカーを、注文しちゃうと思います。


P1020193.JPG
小路を曲がったところでパチリ。

前菜は、トマトとゆで卵のサラダ
主菜は、白身魚のフライ、じゃがいもソテー、いんげん塩茹で、新にんにくを利かせたグリーンサラダ


nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。