立ち呑み日記・賄(まかな)い [主菜]

夕方5時、11歳のムスコの習い事を待つ間に行くカフェの、これまたいつものひっそりした奥の席についたら、目の前のカウンターで白い上っ張りの料理人さんが賄(まかな)いを食べ始めたところでした。

ひと皿盛り合わせで、鶏ももローストにフライドポテトの小山と、全体にかぶさるレタス連峰。実にてきぱきとしたナイフさばきで食事をおすすめです。

アアなんと美味しそうなこと。

賄いってどうしてこう心惹かれるんだか。部外者には食べる術(すべ)がないからでしょうか。

ワタシなど時分どきを前に食べ物屋の前を通りがかってお店の人がお客然と席に着いているのが目に入ったら、もう条件反射に得意の横目でしッかと確認しちゃいます。

(どれどれ、賄いはなにかナ)

カフェの場合はたいていメニューの料理の流用です。カフェの料理といえば肉料理とたっぷりのじゃがいも、ないしはソースをからめたサーモンや白身魚とライス、テナ具合。

時分どきに一般のお客さんが食べているのと寸分たがわぬはずなのに、それよりさらに美味しそうに見えるのは本ッ当にどうしてなんだか。

あれでしょうかネ、十二分に腹ごしらえして肉体の労働に精を出した後にのみ味わえる「うまさ」や「充足感」の予感がまた伝わって来るんでしょうか・・

・・とこう書いていて思い出しましたが、ワタシにも賄いを食べた日々が、そういえばあったんですヨ。

学生時代、友だちに誘われて今はなき赤坂プリンスホテルのレストラン部でアルバイトをしたことが、短期間でしたがあるんです。

仕事は、支給された従業員服に着替え、これも支給の食券携えて社員食堂で定食に向かうところから始まりました。

「食べるのも仕事のうちなの?」
と、瞠目したもンです。

とはいえ夜のシフトだと夕方4時半ごろの出社でうちの晩ごはんの時間よりずうっと早く、お腹は別にすいてない。

「それでもちゃんと食べてください」
と、担当責任者から念を押されました。

マ、若いですから、おなかすいていようがいまいが目の前においしそうなおテンコ盛りがあれば右から左に平然と平らげられるわけですが。

しっかり食べておかないと仕事のたてこむ時分どきにヘパッてつかいものにならくなる、と、アルバイトを采配する責任者はわかっていた。

と、いいますか、それが飲食業の基本なのでありましょう。

ちっともおなかすいてないのに平らげたっていうのに、この時の社員食堂の日替わり定食が
「美味しかったナー」
と、30年もたってしみじみ思えるくらい、美味しかったんです。

ただし、定食の内容は忘却の彼方。

「美味しかったナー」
という感覚のみが残っているんですね。

仕事は、ワタシらアルバイトも制服姿ではありますが社員や研修を受けた契約社員ではないのでお客様の前に姿は出せず、厨房からホールまでの長い廊下を料理のお盆を持ってひたすら行き来します。

この間先ほどの満腹がこなれていくる中で、
(さっき食べた定食美味しかったナー)と、
曲がりなりにもこの自分がちゃんと仕事してるんダという充足感から記憶にしかと刻まれたのだと思います。


P1000364.JPG
はっ。写真撮り忘れてた。大急ぎで窓からパチリ。この直後に雨が降り出しました。

前菜は、ラデイッシュ、バターと塩で(ちぎったバゲットにのせて齧るととおってもヨロシイです)
主菜は、鶏ローストとじゃがいも(の残り)とベシャメルソース(の残り)とねじりマカロニのグラチネ(チーズ焼き)、いんげん塩茹で、グリーンサラダ

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