立ち呑み日記・ミズナ [晩ごはん]

「冬の葉ものといったら、ミズナだね」と、マルシェのパリ近郊農家の屋台で、行列の先頭のお客に話しかけているご主人。

ご主人自ら畑で育てた野菜を商っています。

「ミズナは日本の野菜なんだぜ」
と、他のお客にもちゃんと聞こえるようダミ声を張り上げてくれるので、後方で番を待つ日本人のオバサン(ワタシです)も密かに鼻ピクピク。

ミズナmizuna、とこう、和名がそのまま採用されているのも晴れがましいです。

同じ外国野菜でも白菜はシュー・シノワ(中国キャベツ)ですからね、水菜だってその見た目からベルシール・ジャポネ(日本パセリ)などの通名になってもいいところ、本名を尊重してくれたわけです。

「日本人はミソスープの実にするから、ミズナは青っちょろくてひ弱そうなほうをあえて選ぶんだ」
と、ご主人の説明は続きます。

この年末年始に一時帰国した折に実家近くのスーパーで水菜を見かけましたが、ギザギサで黄緑色の葉もほっそり繊細な茎も、いかにも柔らかそうでした。

目の前の屋台に並ぶミズナは厚い葉の緑濃くて茎も太く、日本人の目からすれば「育ち過ぎ」の感がなきにしもあらず。

「ボクも、ようやくミズナサラダに慣れて来たよ」
と、先頭のお客も口を開きました。「なにしろ味がないときてるだろ」
(ウンウンウン、と、その背後で同意とばかりうなずく善男善女)

ちょっとちょっと、と、後方から割って入りたくなりましたぞ(行列が長過ぎて断念)。われらが水菜を、冬場の葉ものといったら他にないから仕方なくガマンして食べてるとでもいうのッ。

あんまりじゃないのッ。

しかしそうは言いながら、関東育ちのワタシとて水菜に慣れているとはとうてい言えません。ワタシなど、京都の郷土野菜とずうっと思いこんでました。

食べ方だって、漬物ぐらいしか思い浮かばない。

「はりはり鍋」という、鯨肉と炊き合わせた関西の名物鍋があると田辺聖子の小説で読んだことありますが、実物はニオイすらかいだことがない。

パリのマルシェのこの屋台で出会ったのが人生お初と言っていいくらいなんです。

ですから、この年末年始に東京近郊のスーパーで見かけた時には、
(京野菜なのに関東でも買えるんだ・・)
と、水菜の肩をとんとんしたくなったほど(水菜に肩はないナ)。

しかしそれもこれもワタシがウラシマだからで、水菜は21世紀に入ったころから全国区となり、生産量も、もともとの京都府をぐんと引き離して茨城県が全国一だそうです。

2002年に、キューピーが、水菜と小エビのサラダにマヨネーズをかけた、いかにもおいしそうなCMを流したのが引きがねとなり、全国に広まったもよう。

このCM、屋台に並ぶ善男善女にも見せたいですね。

フランス人にとってグリーンサラダは主菜の後の、お酢と植物油のドレッシングでさっとあえた箸休めで、トマトやアボカドなど前菜のサラダとは一線を画したものなんですヨ。

チコリのほろ苦い葉にアツアツのベーコンや鶏の砂肝をジュッとかけ載せた前菜が、あることにはありますが。

ワタシはご主人の屋台で水菜を買うときまって、茹でて醤油と胡麻油と和えたナムルにします。


P1000219.JPG
寒空の下パン屋の行列のシッポでうちふるえながらパチリ。早く暖かい店内に入りたい・・

前菜は、アボカド、ライムと刻みコリアンダーで
主菜は、鶏ロースト、じゃがいもロースト、モロッコいんげん塩茹で、グリーンサラダ(ミズナ入り)
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