立ち呑み日記・桜餅を買いに [買い物]

エ、お店なくなってる?
と、一刻も早く近寄って中をのぞきこもうと車道に飛び出しかけ、鼻の先を通り過ぎ行ったタクシーの運転手さんに大いににらまれました。

桃の御節句の昨日、夕闇迫る中、桜餅を買いに「とらや」へ行ったんです。「とらや」はかの有名なる和菓子の老舗、パリっ子に知られたとてもおしゃれな店です。

かき入れどきのはずの3月3日に店の灯が消えているとなるとこれは天下の一大事。

おっとりがたなで近付くと貼り紙があり、
「店内改装のため2月より6月まで休業いたします」

やれうれしや撤退などではなかった、と、不況の昨今のこと胸をなでおろしましたが、そうなると本日の桜餅はどうなる。日本ならデパ地下に行けば選ぶのに迷うほど種類がありますが、ここではそうもいきません。

桜餅なしでとも考えたんですが、桜の葉の香りが脳内にちらつくと、やはり季節のお菓子が食べたくてたまらなくなってきました。

古くからある日本食品店へと、気がつけば歩き出してました。

でも生の和菓子なんて置いてるかしらねえ・・
と、店内を見回すや、どうしたわけか磁力のごとく冷凍ケースに引きつけられ本能に従ってのぞきこむと、あったあったありました、桜餅。

岩手県の会社が製造販売している冷凍食品の道明寺です。こんな冷凍食品もあるんですネ。ホクホク手に取ってレジに並びます。

「すみません」
と、その時、さっきからワタシとすれ違いにあれこれ検分なさっていた、在仏年月の長そうな熟年世代の日本人マダムがレジの女性に声をおかけになりました。

「ひな祭りの、ほら、ほら、あれ、あります?」

あまつさえ、つまんで口にほうり込むしぐさまでなさっています。

(わかるなあ・・)
と、しみじみマダムを盗み見ちゃいましたヨ。「ひなあられ」という言葉が、完全忘却したわけではないにもかかわらず一瞬出てこない。

クリスマスと違ってフランスでひな祭りは街中にその片鱗がないですからね、何が必要だったっけ、と、ゆ-っくり考えながらでないと、揃うものも揃いません。

実を言いますとワタシもまた桜餅は今宵のデザートにと強く思いましたけど、ひなあられの存在はてんで忘れてました。

(・・ウンあったナ、ひなあられ)
と、ここでようやく思い出した始末。(ちょっぴり入ってる丸くて大きいのがおいしいんだよナ)

しかし、お店の方は申し訳なさそうに、
「ひなあられ、全部売れちゃいました」

「他に何かあります? ひなまつりの食べ物」
と、マダムは再び質問なさり、
「エート・・、何かあったっけかな」
と、レジの方は独り言をおっしゃりながら手が止まります。

ちらし寿司のもとだって、冷凍桜餅だって、いろいろありそうですが。そこで列の背後から、我が手の冷凍桜餅を高々と掲げて見せてあげました。

「・・・・・・ああ桜餅、ありましたねえひなまつりに」
と、レジの方は遠い目になりました。

「・・・・言われてみればそうだったわねえ」
と、熟年世代のマダムもまた遠い記憶をひっぱり出し、冷蔵ケースのほうへ向かわれたようでした。


PIC_0143.JPG
マルシェの花屋にミモザの花が出てました。春もすぐそこ。

前菜は、カボチャのポタージュ
主菜は、メルゲーズ(羊の生ソーセージ)、モンベリヤール(半生サラミ)、フランクフルト、酢漬けキャベツ、モロッコいんげん塩茹で、茹でたじゃがいも

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