立ち呑み日記・イモい [おやつ]

いつも行くマルシェの八百屋のはずれのいっとう目立たない場所に、根野菜コーナーが、あるんですね。

根野菜といってもニンジン、根セロリ、カブ、ラディッシュなどは看板役者で、より目立つ中央の台のほうに見栄えよく並んでいます。

片や目立たないほうの大部屋役者は、日本人のわれわれには見慣れない白ニンジンやキクイモ、オレンジ色したカブ等々。

「戦時中の食べ物さ」
と、八百屋のご主人は自ら商(あきな)っているというのに顔をしかめます。「味がね、土臭いというかね」

しかしその大部屋に潜伏するがごとく、サツマイモが身を寄せているというのは日本人からすると意外です。

♪いしやッき~いものほッかほか~・・
と、寒空の下に屋台がやってくるのが、子どものころなどたのしみだったもンですけどねえ・・

最近はスーパーの店頭などで気軽にほっくり甘い焼きたてが買えるようですネ。今、目の前にある大部屋のサツマイモはというと、まことに残念ながらホクホクにはなりません。

まず、中身の色からしてオレンジ色で、焼くと西洋カボチャのごとくずくずくにくずれます。そういや長いこと食べてないナ、いしやきいも・・・

・・・と、大部屋をのぞきこんでいたら、不意に思い出しました。干しいも、って、そういやうーんと長いこと、食べてないナ。

あれ好きだったんですよねえ・・。八百屋のザルに、みかんの山の間に埋もれるようにひっそり地味目に、冬の間だけ並んだ。

そう、八百屋で買ったもンでした。

ペラペラの透明ビニールに「干しいも」と印刷されたぐらいの簡素な包装で、秋口の青いミカンやグレープフルーツなどと違ってオカーサン(ワタシらのオカーサンです)はわりに気軽にお財布を開いてくれたものでした。

袋を手のひらにのせるとずしりとして、鼻を近づけるとうっすら甘い、ほこりくさい日なたの香りがしてくる。「イモねえちゃん」が好みそうな香り。

そうそう、当時は野暮ったい人のことを「イモい」なんて言ったんですよネ。イモ欽トリオという、気さくさを打ち出したアイドルもいました。

あのころは日本経済がひたすらに上昇し、軽やかさをよしとした都会至上主義でしたからね。調べてみたら、若者の間に「イモ」呼ばわりが広まり始めるのは1979年だそうです。

「今い人よりイモい人のほうがホッと出来て私は好きだな。」
という用例文が載っていました。

今い人もイモい人も今や押すに押されぬアラフィーです。

今日、干しイモといったらスローライフの象徴みたいなものではないでしようか。たっぷり陽を浴びた自然食品で、オーブンでじっくり火を通し、大地の恵みをしみじみいただく。

あのころは石油ストーブの上で炙(あぶ)ったものでした。しゅんしゅん沸いているヤカンを少しばかり横へずらして、干しイモを並べる。

いよいよ焼き上がり、ところどころ黒く焦げた熱いところにかみつくと、あふいあふい、れもうっふらあまひほもひみたいれおいひい(熱い熱い、でもうっすら甘いお餅みたいでおいしい)・・・

そうそう、お餅みたいにガツンとオナカイッパイになったものでした。


PIC_0002.JPG
なんとなーく立ちどまってパチリ。

前菜は、かぼちゃのポタージュ
主菜は、たらそぎ身フライ、レンズ豆煮込み、いんげん塩茹で、グリーンサラダ

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