立ち呑み日記・輸入菓子 [おやつ]

「オカーサン、あれ、食べてみたかったんだ!」
と、アメリカ直輸入食料品店の前を通りがかったら、今あたかも店から出て来た青年の手元をこっそり指さす、14歳のムスメ。

青年は、その生真面目そうな風貌とはやや相容れない感じの子供向けイラストつき箱菓子をひとつ、つかんでいます。

フランスでは最近、お店で買ったものを提げるビニール袋をくれなくなりましたからね。

アメリカのスーパーならどこにでもあるようなどおってことない箱菓子ですが、フランスには入って来ていない商品です。

青年はなんでまたこれと狙って専門店までわざわざ買いに来たんだか。おやつの箱菓子なら近場のスーパーでいくらだって気軽に買えるのに。アメリカ直輸入となれば普及品の箱菓子とて値段がつり上がってしまうのは自明・・

・・と他人の買い物に首つっこむ間もなく、ムスメが店内へずんかずんか入って行ったので慌てて続きます。

ムスメはこういう外国のお菓子の存在をYoutubeで知ったらしいんですね。Youyubeには、見慣れないお菓子を食べてみて感想を言うシロウト動画のカテゴリーがあるんですヨ。

そのなかで、この箱菓子がひときわおいしそうだったそう。「Poptartsポップターツ」という名称で、フランス語読みなら「ポップタルト」。

タルトというぐらいでクッキーみたいな四角い土台にいかにも甘そうな白いクリームがべっとり塗られた写真が箱にあります。白いクリームには、これまたいかにもアメリカ風極彩色のチョコチップがパラパラパラッ。

これ、アメリカでは一般的な朝食で、給食にもひんぱんに出るのだそうな。

おねがい買っておねがい・・
と、ムスメに揉み手擦り手でかきくどかれ、仕方ない、お財布を開きました。輸入品だけあって8ユーロ(約1000円)もして、レジで少なからずの後悔がつきまといました。

さて、ムスメもまた箱むきだしで抱え、家路を急ぎます。

家に着くなり箱はいったんオカーサン(ワタシです)の手に渡り、エート・・と、目からうんと離して「食べ方」を読もうとこれつとめます。

なにしろ全面的にふだん慣れない英語。

やっとこさ2行ばかり読み進んだあたりで、待ちきれなくなったムスメがiPADをタッタカターと叩き、
「トースト、ないしは皿にとり電子レンジで3秒加熱、だってサ」

箱はずっしり持ち重みがして、中に小分け袋が四つ。そのひとつを開けるとクリームごってりの大判クラッカーみたいなのが二枚入ってました。

正直なところを申しますと、香料もあれで口に合わなそうな気配濃厚・・

とはいえそんなことはつゆとも口に出さず、電子レンジでチン。

♪イングリッシュマン・イン・ニューヨーク・・
と、英語の授業で習いたてを口ずさみながら、11歳のムスコも興味津々手を伸ばします。

・・・・・
と、モグモグしながら、いつもうるさい二匹がともにウンともスンとも言いませんでした。

(こりゃ残りはお菓子戸棚のこやしになるナ)
と、すぐさま判断がつきましたね。

ワタシとて残りを片付けるのはできれば遠慮したい。

でもなにしろ輸入菓子、高くついてますからねえ・・


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輸入菓子を買った帰り道にパチリ。まもなく日が暮れます。

前菜は、ニンジン千切りサラダ
主菜は、牛挽き肉ステーキ、じゃがいものニンニクソテー、いんげん塩茹で、グリーンサラダ


立ち呑み日記・1933年の冷茶 [おやつ]

1933年シカゴ万博で日本館の喫茶コーナーで供されたという抹茶アイスティーを、学生時代の友人で茶人にして静岡茶研究家の友人におしえてもらいました。

欧米人の舌に合わせて考案された飲み物で、当時の資料をもとに、つい先日静岡県で開催されたお茶フェスティバルでも再現したそうです。

その作り方は、こうです。

「2合のコップに」茶さじ3分ないし4分の抹茶と砂糖を氷水に入れて強く振ると、「ヒスイを溶かしたような清涼の感を生じる」。ここへ「パインアップル一片と赤い櫻の実一粒を置き、レモン一片を加へ」、ストローをさし、煎餅3枚を添える。

どうです、昭和8年に、こんなオシャレな飲み物があったなんて。日本館の喫茶コーナーは大人気で、百席あるところ入りきれないお客も多く、日に1800杯も売れたそうな。

2合、というのが、いかにもアメリカ人に合わせた量のような気がします。

2合といったら360ミリリットル、スターバックスの「トール」(大)が350ミリリットルだそうですから、たっぷりもたーっぷり。

日本人にはのみ切れないくらいではないでしょうか。

じっさい、友人が再現したのは-ほんの三口ほどの、ガラス製麦茶コップでした。パイナップとサクランボとレモンの香りが移った甘くてつめたい抹茶、暑い日にさぞヨロシかろうと思います。

煎餅3枚、というのに、ワタシなど大いにひっかかりました。これ、日本人が字づらから即座に思い浮かべる塩煎餅では、ない、ん、じゃ、ないでしょうかネ。

お茶の時間に、英国ではサンドイッチなど軽食を確かに食べますけど、お茶に塩煎餅は「ない」気が、するんですよねえ・・

フランスなら塩煎餅は食前酒のつまみ、今日ではタイ産の日本風あられがスーパーで塩味ピーナツと並んでいます。

お茶の合いの手というなら、クッキーやらの甘いお菓子。フランス語でいうところの「チュイル」のような薄焼きクッキー3枚、だったんじゃないでしょうか。

当時の子どもにおなじみだった英字ビスケットではないし、薄焼きクッキーを表す適当な日本語が見つからないところからレポートに「煎餅」と書かれることになった・・

「うーんどうかしらねえ」
と、友人はワタシの説をだまって聞くのみでした。

資料にはそれ以上のことは書かれていないので、どんな「煎餅」かは不明、とのこと。

「断然、薄焼きクッキー」
と、ワタシはなおも自説を押し付けましたね。

だって、昭和8年のシカゴで、1日1800杯カケル3枚、つごう5400枚もの米粉からなる塩煎餅が、毎日調達できたでしょうか。クッキーだったら地元の材料でなんとでもなる(ンじゃないかなあ・・)。

抹茶アイスティー、今だって和風喫茶店などの名物になりそうです。薄焼きクッキー3枚ついて800円ナリ、って感じでしょうか。

お茶を、湯でなく水から出すと、苦み成分が抑えられるといって最近流行ってるんですってネ。

水どころか茶葉に氷を置いて、溶けていくしずくでゆーっくり抽出すると、それはもう極上の冷茶ができ上がるそうです。

「お茶のエスプレッソって感じよ」
と、お茶専門家(ワタシの友人です)お墨付きです。


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 本日のおやつです。ミルクチョコを敷いてマシュマロを置き、オーブンで軽くあぶる。13歳のムスメがどこからか仕入れて来たやり方で、すごーくおいしいんだそうです。

前菜は、トマトとさいの目エマンタールチーズのサラダ
主菜は、ミートソースマカロニのグラチネ(チーズ焼き)、いんげん塩茹で

立ち呑み日記・分子料理法 [おやつ]

2月の学期休みに「フチュロスコープ」という科学のテーマパークに行ったんですが(前回の立ち呑み日記をご高覧くださいませ)、ここで分子ガストロノミーも、ちょこっと体験できました。

分子ガストロノミー、みなさんご存知ですか?

科学の見識を持って料理にのぞもう、ということで、だったら「科学料理法」とこう素直に呼んでもいいんでしょうけど、それでは目新しさが伝わらないので、ものものしい感じのする「分子」という言葉を入れて科学を表現したもののようです。

たとえば、マヨネーズは卵黄と酢と油を混ぜてつくりますが、必死にまぜまぜしても分離しやすい。

そこで、油の代わりに室温に柔らかくしたバターを使うと、卵黄や酢と容易に乳化するばかりでなく、バターのコクと風味の加わった目新しいマヨネーズになる・・
・・と、いうようなのが分子ガストロノミーの一例(だそうです)。

このあいだyoutubeで、一年遅れのビストロスマップを見ていたら、稲垣吾郎が
「液体窒素で凍らせました」
と、「冷凍庫で凍らせました」と言うのと同じくらい普通のこととして桃の氷菓を出していたので、この新料理法は日本でも浸透しているのではないでしょうか。

東京・三越前のマンダリン・オリエンタルホテルにタパス・モレキュラー・バーとして2~3年前に分子ガストロノミーが鳴り物入りで登場し、友人の美食家たちもこぞってその写真をフェイスブックに載せていたものです。

蟻(あり)など虫を食する、というのも、分子ガストロノミーの範疇(はんちゅう)らしいですゾ。

にせイクラの表面に使われる材料で作られたひと口大のぷるぷるしたボールがレンゲにのせられ、ぱくっとやると表面がぷちっと割れて口中に味噌汁がぱあっとしたたる、と、いうような奇抜な演出があるようです。

フランスではハウツー本も出ていて、ピエール・ガニエールなど大料理人も造詣を深くし、パリのレストランはほかにも何軒か取り入れているところがあるもよう。

料理教室も開かれ、ジュニア向けには実験キットがおもちゃ屋に売られています。

さて、「フチュロスコープ」の分子ガストロノミーカフェは一品が3ユーロから5ユーロ(約400円から600円)と、意外にもそう高くはありませんでした。

「リコリス(ミントみたいな香草)の泡」と、液体窒素で凍らせた「ドラゴン結晶」を、とってみました。

「リコリスの泡」は、少量の寒天を溶かしこんだ甘いシロップの中へドライアイスの一片をポトンと落とすもので、寒天が膜になることで表面にプクプクふくらむ甘い泡をすくって食べます。

そしてお待ちかねの「ドラゴン結晶」、マイナス300度で一気に凍っていて、口に入れてフーッと息を吐くとドラゴンみたいな白いケムがもうもうとでます。

あっちでもこっちでも、白いケム吐き出したところをスマホかざしてパチリ。

それにしてもこのカフェ、一回一回説明付きで、カウンターにはたった一人しかいないんです。

今回は冬のことでお客が少なく番がすぐまわって来ましたが、これではハイシーズンなどいったい何時間待たされるやら、そっちのほうが気になっちゃいました。


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ドシロート写真でよくわかりませぬが、立って乗って歩く速度で動く乗り物に乗っているツーリストの一行が通りがかったので大急ぎでパチリ)。受け付けをどこでやっているのか知りたいです。

前菜は、トマト・モッツァレーラ・ロケットサラダのサラダ、オリーブオイルとバルサミコ酢がけ
主菜は、七面鳥ささ身ムニエル、ハッセルパック(じゃがいもに櫛状に包丁を入れたグリル焼き)、モロッコいんげん塩茹で


立ち呑み日記・昔の味 [おやつ]

あれは、「モーレツ」時代のオトーサンがめったになく台所に立ったからこそ美味しく感じたのかもなあ・・、
と、カルメ焼きの残骸おテンコ盛りに思うことしきり。

不意にカルメ焼きを作ってみようと思い立ち、奮闘の末なんとかカッコがつくまでになったんですが・・
(前回・前々回の立ち呑み日記をご高覧ください)

いかんせん売れ行きが悪い。ただ甘いだけで製作者(ワタシです)とて手が伸びません。これならば再現などしようとせず、いい思い出にとどめておく方がずっとよかった。

そういう食べ物って、ほかにもありません?

ワタシなどこの年末に日本へ一時帰省し、スーパーの特売で買ったイチゴのショートケーキを食べたんですヨ。

おとしごろ時代の大好物筆頭でした。生クリームをスプーンでどんどん口に運ぶシアワセ。「ホール食い」を一度してみたいと夢見たものでした。

ところが今回、生クリームをひと舐めしただけで、そっと皿を押し戻しました。

風味がまるでないどころかロウ細工みたい。安いケーキなのは確かですが、でもそれだってあのころは十二分においしかったんです。

同時にモンブランも食べましたが、これまたがっかり。

黄色いオソバが上に渦巻いているところをぱくっといくと、われとわが身がにわかに信じ難いほどに、往年の感激今いずこ。

栗の風味もなにもなく、もっさり甘いだけです。

このがっかりってホラ、片思いの見目麗しかったセンパイに何十年ぶりかで再会してみたらメタボで風采の上がらない小男になりさがっていたときのがっかりと似ています。

「自分とてオバハンになりさがっているくせにッ」
というお叱りが聞こえてきたようですが、しかり。

オバハンになりさがるまでの間に、味覚にどんな変化があったのか。センパイの人生にもいろいろあったでしょうけど、ワタシらにもいろいろあった。

オバハン(ワタシです)の思い出の食べ物でいいますと、半切りスイカのフルーツポンチなんかもその部類です。

今生きていたら110歳になる同居の祖父が、戦前の子どものお大尽を
「ひとつやろうじゃないか」
と、高度成長期の夏休みのある日、オカーサン(ワタシのオカーサンです)がナイロンひもの網でスイカを吊り下げて買い物から帰ってきたのを目にして孫を前に言い出したんです。

大きなスイカを半分に切って中を大まかにくり抜き、砂糖と氷とサイダーを落としたところを一同で取り囲み、スプーンでこそげたり、ストローで吸ったりする。

この食べ方、『サザエさん』(単行本のほう)でも見たことある、ような、気がします。

「わーい!」
と、ワタシとオトウトはとびつきましたが、一家の嫁(ワタシのオカーサンです)は、ムウッと怒りを堪(こら)えた顔で舅の要望にこたえていたものでした。

丸ごとスイカは安くないっていうのに、ちゃんと食べればいいものを一気に半分も無駄にしてしまう。

案の定、遊び食いにつつくだけつつき、
「もうらない」

スイカ半切りのフルーツポンチを食べたのは後にも先にもこの時だけです。

これなどやはりこれからも再現しようとせず、記憶にとどめておくのが華の「昔の味」だと思いますね。


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この土曜日の半ドン授業が終わると学期休み(フランスは休みが多いんです)。家に帰るなりそのへんへほっぽらかした11歳のムスコのリュックをこっそり開けてパチリ。このあとリュックのポケットからひッどい点数のテスト答案を発見することになります(怒)。

前菜は、お椀一杯の野菜ポタージュ(昨日の残り)、トマトサラダ
主菜は、鶏ロースト、じゃがいもロースト、いんげん塩茹で、グリーンサラダ

立ち呑み日記・カルメ焼き2 [おやつ]

調理用温度計、やっぱり買っちゃいました(昨日の立ち呑み日記をご高覧くださいませ)。

カルメ焼きをつくってみようと思い立ったんですが、熱した砂糖水の温度を
「125度、温度計できちんと測る」
と、どのレシピもこうなんです。

デパートの売り場で手に取ってじーとしばらく考え込みました。ホンットに買っちゃっていいのか。使うのはこの一回きりかもしれなのに、ホンットのホンットにいいのか。

値段は12ユーロ(約1500円)ですから、まあそんなにはお財布は痛みませんけど、台所の引き出しの肥やしをみすみす増やすだけですからね。

よし、これからはフライ油もスープも、それから熱燗なんかも温度を測ることにしよう、と、心に誓い、レジへ向かいました。

温度計は金串に小さなデジタル画面がついた形で、50度から300度まで測れるもよう。

「鍋底など熱した本体には先端をつけないでください」
と、あります。

帰り際、スーパーに寄ってグラニュー糖も買いました。前回はうちに常備の、フランス語で言うところのカソナードという黒砂糖粉末でやったんです。

ふくらまなかったのはひょっとして砂糖のせいもあったかなあ・・と、思ったわけです。グラニュー糖は結晶化しやすく、ふくらみやすいのだそうです。

デワデワ、温度計のボタン電池の下のセロハンをはずし、台所へ。

重曹液は卵白と重曹と砂糖を混ぜもったりさせます。ここまではこないだもちゃんとできました。前回と同じくグラニュー糖大さじ2、水大さじ1をミニミニフライパンにとり、火(電熱器)にのせます。

ふつふつしてきたところで、いよいよお初の温度計を挿入。

先端を鍋底につけない、というのが実にむずかしかったです。

なにしろたった大さじ1の水でほとびたくらいの量、先端をギリギリのところで浮かせて手を固定させているのは、熱くなって来る中で至難の業。

ふつふつする砂糖液の様子を温度からかんがみて見極めようとがんばりましたが、これまたむずかしいんですね。

気泡を観察していると温度が知らぬ間に上がっているし、ぐんぐん上がっていく数字を追っていると、気泡がどうなってるんだかわからない。

中くらいの気泡がふつふつ、ふつふつして下から小さい気泡がプクプク生まれてくる、テナ感じが125度のようです。

温度計のタイマーがピーピーいったところで火からおろし、ひと呼吸。そこから重曹液をチョンとつけたすりこぎで一気呵成(かせい)なんですが、一回目はあえなく撃沈。

フライパンの大きさに対して砂糖液が少なすぎるのでは、と、思い至り、次はいきなり三倍でやってみました。すると、とうとうふくらんで表面が割れました! しかも、真っ白で美しい。

ただ、フライパンからはずすのにしっぱいしまして、表面以外はモロモロに崩壊。

「おいしーい」
と、家族から言ってもらえるかナとおやつに出したところ、ひと口かじって
「甘いだけだね」
の一言のみで見向きもされなくなる運命でした(涙)。

製作者(ワタシです)としても、味に関しては家族に同意せざるを得ず、もっとちゃんとカラメル味だったらいいのにと思いましたです。


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奥の、白いボールペンみたいなのが金串の「さや」だと思うんですが、先っちょだけであとはどう押し込んでも入らないんです。何か、ミスがあるもよう。

前菜は、野菜ポタージュ(87度)
主菜は、七面鳥ささ身ムニエル(80度)、ベシャメルソースをかけたマカロニ(67度)、いんげん塩茹で(42度)

立ち呑み日記・カルメ焼き [おやつ]

カルメ焼きにちょうどいいワ、
と、スーパーの台所用品売り場で、投げ売りのミニミニフライパンと「目が合って」、そう思っちゃったんですね。

ママレンジにのせられそうなおままごともどきです。

さくさくほろっとほどける、あの甘―い味が口の中によみがえり、どれひとつカルメ焼きつくってみようじゃないのとカゴにとりました。

子どものころ、オトーサンとつくったことあるんですヨ。ワタシら世代の親といったらカルメ焼きの先駆者みたいなもンですからね。

戦前の、『子供の科学』だかの子ども雑誌に作り方が出ていて、首っ引きでおやつを手作りしたハナシは耳にタコができるくらい聞いています。

七輪・おたま・すりこぎが道具の三種の神器と聞き及びましたが、ワタシが小学生のころ家にもはや七輪はなく、ガス台で挑戦しました。

オトーサンは昔取った杵柄で、すりこぎの先に重曹液をチョンとつけて一気呵成(かせい)とかきまわし、見る見るふくらんでいきます。

(こんなおいしいお菓子が家でも作れるんだ)
と、おやつといったら「チョコベー」や「サッポロポテト・バーベQあじ」にかぶりついているワタシら高度成長期の子どもも瞠目したものです。

配合は忘却の彼方でしたが、検索したらたちどころにわかりました。

重曹を少量の卵白でもったりさせた発泡液を横に用意し、おたまに大さじ2の砂糖と水大さじ1をまぜて125度まで熱したところで火からおろし、ひと呼吸おいたのち、すりこぎ(ないしは割り箸)の先端に発泡液をチョンとつけてひたすらグルグルして、頃合いを見て手をどけるとぐんぐん膨れてくる。

どうです、そう難しくもなさそうではないですか。

砂糖を加熱して粘りが出たところで重曹の二酸化炭素が充満して風船ガムみたいにふくらんだところで卵白のたんぱく質が固める、ということのようです。

うちの台所は電熱器なので丸底のおたまでは加熱できず、ミニミニフライパンでいくわけです。

砂糖液の125度は、
「必ず計測して」
と、どの作り方にもあったんですけど、料理用温度計を台所に常備しているうちって、あるものなんでしょうか。

以前テレビで、名パティシエが砂糖水を火にかけて温度によってガムシロップやらメレンゲやら飴やらをどんどん作っていくのを見たことあるんですが、名人は温度計など使わず、泡の大きさだけで判断してましたゾ。

ワタシも名パティシエを気取って、大きな泡がくずれて小さいな泡になるころが「そのとき」じゃないかとなんとなく見当をつけました。

結果から先に言いますと、何度もやりましたが成功には至りませんでした。

やはり温度計測は必須だった。

ふくらまないでフライパンでコチコチに固まっていく砂糖をはがすのはなまなかでなかったです。

温度計を買って改めて挑戦、とも思うんですが、考えてみたらパン屋に行けばカルメ焼きに似たメレンゲが安価で売っていた。

「甘すぎー」と、うちの家族はこれを敬遠するんですね。

温度計をわざわざ買って成功を見ても、カルメ焼きもまた甘すぎと敬遠されるかも、と、弱気になりまして、本日はミニミニフライパンで胡麻を炒っただけで終わりました。


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在パリ回教寺院の前を通りがかったのでパチリ。ここにはイスラム教でなくても入れるアラブ風蒸し風呂と、すごおくおいしい北アフリカ(のアラブ)レストラン兼素敵なティーサロンがあります。ここのレストラン兼サロン・ド・テは味も雰囲気も素晴らしいんですが、あんなにもおいしいのにオサケがないのがワタシなど苦渋の一言。

前菜は、カボチャのポタージュ
主菜は、シュークルート(仔牛と豚のフランクフルト二種、キャベツの酢漬け、蒸しじゃがいも)、いんげん塩茹で、ミニマカロニのニンニクとクリームあえ

立ち呑み日記・焼きマシュマロ [おやつ]

焼きマシュマロが
「食べたい、食べたい、食べたい」
と、13歳のムスメが学校から帰って来るなり目の色かえてスーパーに走り、戸棚に頭つっこんで卓上グリルを引っ張り出しました。

竹串にマシュマロを刺して、卓上であぶりながら食べようという算段です。

日本でもキャンプの焚火や野外バーベキューというと最後に竹串でマシュマロ焼くのが今や定番なんですってネ。

卓上グリルの金網が熱くなってきたところで、竹串に白くむっちりしたところを刺して火すれすれまで近づけます。

金網にじかに乗せると融けてくっつくのみ、ということは試さずとも推測できました。

遠火でゆっくりかざしていると、いつしか表面がこんがりキツネ色になってくるので、やけどに気をつけて、ぱくり。

当初のむっちりふわふわがウソのように表面カリカリ、中が生クリームのごとくとろーり、バニラの芳香が思いがけないほど強くたちます。

「おいひーい」
と、ムスメはハフハフしながら、すかさず次のマシュマロを竹串に刺し、グリルにかざしています。片手で竹串をあやつりつつも、もう片手でiPADを操作してミュージックビデオをのーんびり鑑賞。

シヤワセとはこういうことなり・・
とばかりハフハフ続けるムスメを眺めながら、日本人のオカーサン(ワタシです)は悔恨しきりになりましたね。

ワタシらが子どもの頃だってマシュマロはちゃんとあったのに、なぜ、なぜッ、焼いて食べようと思いつかなかったのか。焼いて食べる装置は今よりずーっと身近にととのってたにもかかわらず。

それがくやしい。

ムスメのように卓上グリルなぞわざわざ持ち出す必要もなく、石油ストーブが、あったじゃないですか。しゅんしゃんいっているヤカンを少々ずらしては、干しいもを、みかんを、お餅を、するめを、トーストを、焼きました。

ここになぜ、なぜッ、マシュマロは加わらなかったのか。なにもヤカンをずらす必要もなく、竹串に刺したところをストーブに近づけるだけで、よかったんです。

こうやってあぶってはハフハフ口に運びながら、「水戸黄門」やら「わんぱくフリッパー」やらの再放送にかぶりついたら、どんなによかったことか。

ムスメを見ていると、竹串をかざして焼けるまでの間がまたイイんですヨ。ゆーったりした時間が流れている。

あのころのワタシらのおやつというと、「サッポロポテト・バーベキュー味」やら「カール・のりしお味」やらの袋抱えてバリバリボリボリ、やめられないとまらないのせわしい、狂おしい状況に陥っていたものでした。

マシュマロも、時に買い置きがあったので、おやつにぱくぱくそのまま食べました。

マシュマロ好き? と、聞かれれば、
「別に。嫌いでもないけど」
としか思えませんでしたが。

ドリフでカトちゃんあたりがお供えの三方に積み重なったひと口まんじゅうを立て続けにぱくぱく一気に平らげる、なんていうコントにアハハと笑った後、
「あれはでもあんこの入った本物ではないと思う」
と、画面のこっち側であげつらうのが、マシュマロでした。


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日暮れて花屋の前を通りかかったら、♪オンリィワーン・・と、脳内音楽が響きました。

前菜は、ニンジン千切りサラダ
主菜は、鶏ロースト(の残り)、ねじりマカロニのトマトソース、モロッコいんげん塩茹で、グリーンサラダ

立ち呑み日記・チョコ高騰 [おやつ]

「あとたった4年しか食べられない・・」
と、去年あたりから、おやつのチョコ菓子をボリボリやりつつ悲嘆にくれる13歳のムスメ。

いわく、2020年にチョコレートが全世界から姿を消し、金塊より値が張るぜいたく品になる、のだそうな。

そんなガセネタをまた、
と、検索してみたら、ありゃマ、あながちウソとも言い切れない。

アメリカの大手チョコレート会社二社が出した報告書で、地球温暖化などの影響と、インドや中国などでも消費量が増えているところから需要と供給のバランスが崩れ、2020年にはカカオ100トンが不足、その10年後の2030年には200トンもが不足になるそう。

近い将来、チョコはココアパウダーが入らないのを誤魔化すためもっと甘くなるであろう、と、製菓業界紙も予言しています。

そこまでしてウソんこのチョコなんか食べたくないなあ、
と、チョコと縁の薄いワタシなど思いますが、愛好家にとっては最重要課題でありましょう。

ワタシの身近にも何人かいますが、その偏愛ぶりといったらないです。一人など、板チョコを日中に一枚、寝るときにベッドで一枚、食べる。

「わしもじゃよ」
と、この人の父君も平然と言っていたものです。この方はベッド板チョコの習慣を終生続け、百歳の天寿をまっとうしました。

ひとくちにチョコと言いますけど、各国によってこれほど味の異なるお菓子も他にないんじゃないでしょうか。

そして他国のチョコはまずく感じる。

日本に住んでいた間は気付きませんでしたが、日本のチョコって甘さ控えめで優しい味です。フランスのはもっとうんと濃く、ブラックが勝った鋭角的な味です。

これがお隣りのスイスとなると、がぜんまろやかなミルクチョコが主流になります。ベルギーもまたチョコ大国ですが、フランスともスイスとも違った味。

「で、どんな味なの? ハッキリと!」
と、斬りこまれると困るんですが、フランスチョコの鋭角からカドをとった味、の、ような気が、しないでもないです。

先日たまたまスペインのチョコを食べる機会があったんですが、フランスチョコに慣れた身からすると実に意外な風味でしたヨ。甘さ控えめで、舌ざわりがどことなくザラっとしている。

これホントにチョコなの?
と、銀紙の表示をひっくり返しちゃったほどでした。

チョコを南米から欧州へもたらしたのは大航海時代のスペインですから、これこそが本来のチョコの風味、なの、かも。しれません。

大別すると、チョコにキレを求める国とまったりを求める国がある、ような、気が、しないでもないです。フランスやスペインは、キレ。

「ハーシー」のアメリカは、これはもうまったり以外の何物でもない、いかにもアメリカ風の独特の風味がしますよネ。

して本場、南米はどうなのか。聞くところによると、メキシコほどチョコの種類が豊富でおいしいところは他にないそうです。

ヘーエ食べてみたいなあ、と、思わないこともないですが、ワタシなどチョコはつまむより、赤ワインと胡椒で煮詰めて鹿や猪肉などのソースにしたもののほうが格段に好きです。


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 木の上部の剪定ってこうやってるんですネ。下の車も上方の座席から動かし少しずつ移動しています。

前菜は、カレーサモサ、トマトサラダ
主菜は、牛挽き肉ステーキ、レンズマメ煮込み、いんげん塩茹で


立ち呑み日記・露店どら焼き [おやつ]

「ドラヤキってさあ、」
と、アジア食材店に行ったら、店頭に届いたところの段ボール入りどら焼きの梱包を解きつつレジを守っていたベトナム人のご主人に話しかけられました。
「日本じゃ露天商の作り売りのほうがやっぱり安いんでしょ?」

ベトナムでこのテのお菓子といったら露天商の独壇場で、パリのクレープ屋のごとくその場で作り売りするものだそうです。

しかも、安い。

どら焼きは二枚のパンケーキの間に餡子をはさむだけだからいかにも露天商向き、とのご主人の見立て。

「どら焼きの屋台なんて日本で聞いたことないなあ」
と、ワタシは首をひねりました。

おまつりの屋台ならひょっとしたらないこともないのかもしれませんが、街角のたこ焼き屋台や焼きそば屋台みたいな感じでどら焼き屋台って、あるの?

「日本人があんなに好きなお菓子なのに?」
と、ご主人はにわかに信じられない様子。「フランスのクレープみたいなもンでしょうが」

ウーム・・と、ワタシ考えこんじゃいました。どら焼きってフランスにおけるクレープと同等なんでしょうか。

在仏日本人はアジア食材店でどら焼きを見つけると、
「これはまためずらしい」
と、まあ確かに小躍りしますが、日本国内ではどうなんでしょう。

『ドラエもん』の大好物ですが、この設定は藤子不二雄の故郷富山で冠婚葬祭の贈答品といったらどら焼きというほど親しみのある食べ物だっからなんですってネ。

日本でどら焼きというと、ワタシなど家庭のおやつ用というよりは、のし紙つきの贈答品の印象の方が強いです。

でも、目の前でサッとつくってくれる露店のどら焼き屋さんって、なんだかどうも美味しそうではないですか・・

・・と想像してみたら、存在しない方が不思議なくらいの気持ちになって来ました。

そこでみなさん、今後日本のどの街角にも出没することになるはずの(たぶん)、露店どら焼き屋のおしながきを考えてみようではありませんか。

どら焼きといえば餡子ですが、宮城県では生どら焼き、通称「生(なま)どら」が名物で、生クリームやカスタード、チョコやジャムなどはさんであるのだそうです。

どうです、生どらこそ露店どら焼きにうってつけ。

どら焼きの露店は、店員さん側にパンケーキを焼く鉄板、手前のお客側に「あん」の冷蔵ケースで構成されます。

定番はどうあっても餡子、つぶ餡、こし餡、胡麻餡なんかも欲しいところです。

いちご大福みたいな感じに、プラス料金でフルーツのトッピングできる、というのはどうでしょう。チョコ&バナナや、マロンとカスタードのモンブランどら焼きなど人気を呼びそうです。

甘味だけでなく軽食系も欲しいところ。

肉まん風の肉どら焼きなんてどうでしょう、カワのほの甘さと塩味肉あんが織りなす甘じょっぱの妙味。

ワタシとしては、スモークサーモンとサワークリームをはさんだ「ノルウェーどら焼き」(と命名してみる)を、ぜひとも賞味してみたいです。

アジア食材店のベトナム人のご主人は、日本でどら焼きといったらクレープのように誰もが街角のそこかしこで歩き食べしてる、と、信じて疑わなかったそうです。


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もう12月なのに秋っていう感じですよネ。ただ今世界温暖化に関する国際会議がパリで開かれているところですが。

前菜は、カボチャのポタージュ
主菜は、七面鳥ささ身のムニエル、ベシャメルソースとねじりマカロニ&カリフラワー、グリーンサラダ

立ち呑み日記・ファラフェル [おやつ]

夕刻、10歳のムスコをマレー地区にあるチェス教室におくりとどけたら、お昼はちゃんと食べたというのになんだかどうもお腹がすいている。

マレー地区はユダヤ人街で、チェス教室の目と鼻の先が、その中心街ロジエ通りです。

チェス教室が終わるまでの間、ふだんは大通りのカフェで時間をつぶすんですが、今日はどうしたわけか磁石に引きつけられたがごとくロジエ通りへ足が向かったんですね、

ロジエ通りはファラフェルというつぶし豆の丸いコロッケを生野菜や揚げ野菜がピタパンにどーっさり詰めた中東風サンドイッチが名物です。

が、この時点で「食べる」と決めたわけではありません。そりゃ食べたいけどごはんどきでもないのに手を出したらねえ・・。せっかくだから香りだけでも・・

・・と、つらつら考えつつファラフェル屋さんへ近づくともなく近づいたら、
「ファラフェルサンド『で』いいね」
と、断定的に話しかけてきた、外で店番していたユダヤ人のオジサン。ポケットを金庫代わりにレジ係をつとめています。

さすが商売上手と唸(うな)りましたね。

これが街角のクレープ屋台なら、会計係は焼けた鉄板の向こう側にいて、長―い行列ができていようともお会計は焼き上がったクレープと引き換え。

(やっぱりやめとくかな)
と、客が列から離れてしまえば売り上げをみすみす逃がすこととなります。

そこいくとシェークスピアもそれと見込んだ商売上手は、とにもかくにもお財布を開かせちゃう。

「普通盛りだね」
と、オジサンはこちらが買うと決めてかかり、今にもチケットを切ろうと身構えます。

「イイエ、においだけよ」
と、断るつもりで開けた口で、
「エエ、熱々でお願い」
と、言ってました。

ユダヤ商人にかかっちゃ仕方ない、
という非の打ちどころなき口実が、すぐさまわが心の中に生まれました。

ファラフェルサンド、久しぶりだナ。

ファラフェルって、揚げ物なのにとんかつソースやマヨネーズやケチャップの味つけでないのが初心者のころは面食らったものですが、慣れるに従ってどんどん好きになってくるタイプの味です。

味つけは、白ごまペースト味。

「だからそれどんな味のサンドなのヨ」
というお声が聞こえて来たようですが、エート、丸いピタパンの中に千切りキャベツ、トマト、揚げナスをみっしり詰め、その上にコロンとした揚げたておからコロッケを五、六個積み上げ、そこへつぶした胡麻豆腐をかけまわした、テナ感じ(想像つくかナ)。

本日は、真っ赤な辛味ソースもちょっぴりかけてもらいました。

この店は世界のどの観光ガイドブックにも載っているほどの有名どころで、洋の東西の観光客と地元民でいつもたいへんな行列です。

「ハイ」と手渡されるのももどかしく、すぐさま食べたいのにおテンコ盛りのどこからかぶりついたらいいのか迷うのも、ファラフェルサンドらしいです。

かみついたところからコロッケがころがり落ちそうになるのを大急ぎでもうひと口、ピタパンが破けて野菜がこぼれそうなところをさらにひと口と実に狂おしく、持ち重みするまでのボリュームなのにたちまち胃袋へ雲散霧消しました。


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「神話の創始者・ヘラクレスからダース・ベイダーまで」という、ルーヴル美術館の展覧会のポスターなんですが、タヌキが入るとがぜん道の駅のポスターっぽくなりますネ。

前菜は、トマトと千切りニンジンのサラダ
主菜は、鯛切り身の塩焼き、ニンニク風味じゃがいもピューレ、いんげん塩茹で、グリーンサラダ


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