立ち呑み日記・さらばバカンス [おでかけ]

二か月分のバカンス荷物といったらちょっとした引っ越し並ですネ。

ただ今、スペイン国境に近い寒村の古い友人宅にバカンスで居候を決めこんでいるんですが、われわれ家族よりひと足先に、友人の長男一家が引き上げていくところです。

彼らはスペインの古都セビリアに居を構えているので、丸二日かけての大移動。

走行距離は二千なん百キロ、ただまあ欧州は陸続きなので、小さい子連れの大ドライブといってもそうめずらしいものでもありません。

もう二十年も前になりますが、ベルギー在の友人一家が太陽を求め自家用車でスペインへバカンスに出た途中のパリで旧交を温めたことがあるんですが・・

それはそれはもうたいへんな荷物のなかオトーサンが運転し、オカーサンが助手席、四人いる子どもの三人が後部座席に陣どり、背後の荷物の上に末っ子がかつかつに寝そべって乗車しているありさまでした。

当時はほら、シートベルトの規制が緩かったですからね。

今、目の前で荷物と格闘している友人の長男夫婦も、チャイルドシートはあれとして荷物のすごさは似たり寄ったりです。

スペインの夏は気温が50度まで上がるのだそうで、一家四人分のランニングシャツのようなごく軽い夏物一式がパンパンに詰まったスーツケースがまずひとつ。

ところが今年のフランスは全土にわたってなん十年来の冷夏で、パンパンのスーツケースは一度も開けられることなく右から左へ帰りのトランクに戻されたそうです。

代わりに活躍したのが、冬物のタンスから引っ張りだして詰めて来た長そでTシャツ、セーターのたぐい。これに運動靴、サンダルなどが大袋にごっそり一式。

さらに場を盛り上げようとわざわざ持ってきた、ギターにバンジョーにアフリカのタイコ。

おっと、おみやげにと当地で買い求めたフランスワイン数本、カマンベール他チーズ数種にサラミ各種、青空マルシェで見つけたシルクのスカーフなんかももちろんあります。

これらをトランクやら足元やらにようよう押し込んだところで、
「鍋釜は足りてるのかしら、好きなの持ってってよ」
と、母であるわが友人。

友人の広大な庭付き邸宅は、相続のこじれから売りに出ているんです。

今回が、われわれ居候も含め最後の夏となる可能性が、悲しいかな大。家の中を見れば穴があいたように先祖伝来の家具が消え、友人が少しずつアンティーク店などに処分しているもよう。

なかでも台所にどっしりとあった19世紀仕様の堅牢な食器棚がなくなっていて、皿やワイングラスや箱入りビスケットのたぐいが床の段ボールに雑然と積み上げられているところから探し出して使うのは、なかなか難儀しました。

台所といったら家の本丸ですからね、先祖伝来の家を明け渡そうという友人の決意と無念が手に取るように感じられ、ひと事もありませんでした。

家はこうやって魂が抜かれていくのだなあ、と、しみじみ思い入りました。

「鍋も釜も間に合ってるよ」
と、息子は母ににっこり。

タンタカタンの、ッタンタン
という古典的なリズムでクラクションを鳴らし、パンパンぎゅうぎゅうの自家用車は国道へ向かって消えて行きました。


P1020610.JPG
食前酒に読書にとろとろヒルネ三昧の日々ももう終幕(涙)。

前菜は、キュウリのクリーム和えサラダ
主菜は、牛ステーキ、フライドポテト、グリーンサラダ



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