立ち呑み日記・針の穴 [女子]

ウーム・・と、さっきから12歳のムスメの口の中をのぞきこんで七転八倒するまいことか。

「オカーサンあきらめないでよッ」
と、金切り声をあげられ、さらにつのる焦燥感。

ムスメは先ごろ歯の矯正を始めたんですが、その第一段階が上あごを内側から広げることで、一日一回器具のネジを締め上げないとならないんです。

「そ、それドシロートにやれっていうんですか?」
と、診療室の椅子から転げ落ちそうになると、
「エエ」
と、涼しげな顔の歯列矯正の先生。

昔よく見かけたビン牛乳のフタ抜きみたいな針金のついた器具を「ハイ」と手渡され、やり方をおしえてもらいました。

止まっている水車に棒を差してグッと動かす要領で口蓋中央の器具の穴に針を差し込み、グッと押し回すように締める。

「このときちゃんとグッとやらないと次の穴が出て来ずメンドウなことになります」

ほら穴が見えるでしょ、と、先生はおっしゃるんですが、老眼がすすんだ目にはハッキリしません。あてずっぽうにグッとやってみました。が、グッの「感じ」がよくのみこめなかった。

一週間ほどあてずっぽうを続けましたが、不安つのって再び先生を訪ねると、
「全然締まってませんよ、初日のままです」

穴にしッッッかり針を差し込み、しかるのちにグッ。これを体得するのに、診療室でどれだけあぶら汗流したことか。

オトーサン(ワタシのオットです)にも手伝ってもらいたいんですが、これがもう、オハナシにならないなんてもンじゃなかったです。

得々と口を開いて見せつけられた器具をのぞき見たとたん、あまりのショックにソファへ倒れ込み、誇張でなく肩をふるわせ涙にむせびました。

「こ、これは拷問と同じではないか。愛する我が子がこんな痛い思いしてまで歯列矯正しなければならない理由など、ない・・」

「ある」
と、頬をふくらませるムスメ。「歯並びガチガチでいいとでも言うのッ?」

ムスメは、ひと足早く歯列矯正を始めたクラスメートの何人からも体験談を聞き出し、最低一週間は痛くてヨーグルトやスープしか食べられないこと、そのスープは「リービック」というメーカーのが一番おいしいこと等知識を仕入れていました。

ワタシも初めて知ったんですけど、フランスで出来合いスープの購買層といったらシニア世代と思い込んでいたら、売り場でよく見ると子どもが好きな「笑う牛」チーズがおりこんであったり、明らかに子どもをターゲットにしたスープがあるんです。

メーカーも、歯列矯正世代をしっかり視野に入れていた。

「痛いー」
と、顔をゆがめながらもなんだかうれしげに、晩ごはんに自分だけ特別献立のスープへスプーンをいれてご満悦のムスメ。

オカーサン(ワタシです)もがんばり、1日にグッ、グッ、と2回、ムスメの口に顔つっこんで締め上げているんですが、今日はどうしたわけか手がすべり、半グッで針がはずれて穴と穴の間の箇所になってしまった。

ど・う・し・た・ら・い・い・の~、
と、息をつめ、額の汗をぬぐい、半泣き(心の中で)で懐中電灯を照らして針先をあれこれするうちに、やれうれしや、何の拍子か針先が穴を探り当てました。


PIC_0341.JPG
歩いていてパチリ。近くのレストランの宣伝用トラックのようです。

前菜は、トマトとクスクスのサラダ
主菜は、牛ステーキ(バヴェットという箇所)、じゃがいものニンニク風味ソテー、いんげん塩茹で


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