立ち呑み日記・Dorayaki [おやつ]

Dorayakiって
「どんな味? おいしいんでしょ?」
と、10歳のムスコはクラスメートのセドリックくんから聞かれたのだそうな。

セドリックくんだけでなく、フランスの多くの子どもたちが知りたいのではないでしょうか。コミックの『ドラエもん』がフランス語版でずらっと出ていて、人気なんです。

うちの学区の子ども図書館にもそろっていて、セドリックくんはここで全巻制覇したそうな。

どら焼きは、言わずと知れたドラエもんの大好物。ムスコの大好物でもありますから、微に入り細に入り説明したそうです。

が、やはり食べてみないことにはいまひとつわからない。

とても幸いなことにうちの近所にはアジア食材店があり、ここで簡単に手に入ります(アジア食材店はパリ市内のどこにでもあるというものでもないんです)。

鳥取県にある丸京製菓という日本一の生産量を誇るどら焼きメーカーの製品で、何年か前に欧州に進出し、パリやロンドンなど主要都市のアジア食材店に並ぶようになったもよう。

ばら売りでひとつ1ユーロ50(約180円)、日本と比べると割高ではありますが。日本ではひとつ80円くらいが相場のようです。

ムスコを介してセドリックくんにお店の存在をおしえてあげたんですが、道は険しかった。

そもそもふつうのフランス人はアジア食材店に用はないんですね。よしんば店に足を踏み入れたとて、いったいどれがドラヤキなのか見当もつかない。

それにしてもコミックの『Doraemon』で、どら焼きを「ガレット」などフランスに存在する似た感じの食べ物に置き換えることなくDorayakiとそのままにしたのには「ヘーエ」と思っちゃいます。アメリカではわかりにくいので「ヤミー・バンYummy bun」となっているそうです。

フランスは今や希代の日本ブームで、みんな日本文化に興味津々。その根源に、「マジンガーZ」などから始まったアニメがあるのは火を見るより火明らかです。

そのころののアニメに出て来る日本の食べ物ってどんなふうに訳されていたんでしょうネ。

ラーメンがramenだったわけではないような、気が、します。ヌイユ(ヌードル)など、フランス語に存在する言葉をあてていた(ンじゃないかなあ・・)

その時代、大方の子どもはたスシなどという食べ物、見たことも聞いたこともなかったですからね。

彼らが大人になった今日、スシもミソスープもスーパーで気軽に買えるまでになっています。値段と質はまあ、あれなんですけどネ。

こういう時代になったからこそ、Dorayakiなのでありましょう。日本人のオカーサン(ワタシです)としては日本語がフランス語に浸透していくのはやっぱりうれしいワァ・・

「だからね、おねがい買って。いいでしょ」
と、ムスコ。

今週から始まる海浜学校の行きがけのおやつに5ケ入りのどら焼きを丸々持って行き、セドリックくんはじめなかよしに講釈たれながら分けてあげたい。

「みとめましょう」

ムスコは、ふだんなら目の色変えて飛びつく大好物に手をつけず、なかよし一人一人をスカイプで呼び出して見せつけると、大切そうにリュックにしまいました。


本日写真失敗いたしましたまことにスミマセンヌ。

前菜は、薄切りキュウリと乾燥バジリコのサラダ、プチトマト
主菜は、牛肉(フォーフィレ)ステーキ、にんじんとカリフラワーの葉のスープ煮、じゃがいもロースト

立ち呑み日記・ヌガー [おやつ]

ヌガーが
「食べたい、食べたい、食べたい」
と、身もだえする12歳のムスメ。

昨年の夏休み、居候していた南西フランスの古い友人のところで地元の老舗のヌガーをご馳走になったんです。店頭で、特大デコレーションケーキほどもあるところから切り分けてもらったもの。

これがめっぽうヨロシかったんですヨ。歯にくっつくのを覚悟して口に入れたんですがとォんでもない、奥歯でサラッとつぶれます。

和三盆を思わせる上品な甘さ、たっぷり練りこんであるナッツ類のこうばしいこと。

「また食べたい」
と、以来ムスメはヌガーの虜(とりこ)になりました。

パリだとどこで買えるものなんだか。

パリにだって自家製ヌガーの店は探せばありましょうが、日常のおやつを地下鉄で買いに行くというのも、どうでしょうか。

スーパーにもいちおうは売っています。いちおうは、というのは、アメチョコグミまでは種類がなく目立たない存在だから。

今日、どうしたわけかその目立たない生徒と「目が合った」ので、先生(というのもあれですけどワタシです)は流れるようにカゴにとりました。

「すごくおいしいとは言えないけどね」
と、ムスメはヌガー評論家気取りで、それでもセロハンを次々とむいて口に入れています。

ムスメを真似て、歯の詰め物をおもんばかりながら口に入れてみました。確かにまあ、老舗のあの味とは比較になりませんが、グニッとした歯触りは明らかに「ヌガー」・・

・・とこう奥歯ですりつぶすうちに考えたんですが、ヌガーって今日の日本ではパリのスーパー以上に目立たない存在なのではないでしょうか。

たとえばホラ「塩キャラメル」なんて大々的に脚光を浴びましたが、同様のヌガーブームって今後来るんでしょうか。

戦前から昭和30年代ぐらいまではでも、日本でヌガーはうんとポピュラーなお菓子だったみたいです。

「〇〇先生はヌガーがお好きで机にいつもしのばせておられたものです」
という一文を、ワタシの在籍した女子校の創立何十周年だかの記念文集に、戦前に卒業した先輩が寄せているのを読んだ記憶があります。

昭和30年代には「雪印ヌガー」というのが出て、中にあたり券が入っていたらカメラが当たる! という大々的なキャンペーンが行われていたくらい、キャラメルやガム同様世の中に浸透していたようです。

しかしその後には、キャラメルやガムとは大きく水を開けられることになります。その分水嶺は、いつごろだったんだか。

ワタシらが子どもだった昭和40年代、
「ヌガー大好き!」
という子は、いなかった気がします。

ワタシのヌガーとのつきあいは、デパートのお菓子売り場でゆーっくり回転している量り売りの円形ワゴンで、「見かけた」のみ。

袋にとりはしませんでした。ワゴンにはチョコビスケットやらラムネやらもっと魅力的なお菓子がざくざくあり、だいいち量り売りは割高で、なんだかんだととらせてもらえるものでもなかったですからね。

ワタシとしましては「雪印ヌガー」のような流通品の記憶は、ないです。

あのころからハイチュウは人気なのに、なぜなんでしょうネ。


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ここのところ素晴らしい青天。うれしいナ。

前菜は、アボカド、レモンで
主菜は、牛肉ミートボールのビーフシチュー、ミニマカロニ、いんげん塩茹で

立ち呑み日記・ラズベリー [おやつ]

ラズベリージャム入りビスケットをかじったら、マドレーヌを食べたプルーストもかくや、この味を初めて口にした時のことが不意によみがえりました。

(うえー、ペッペッ)
と、鼻つまんで遠ざけた、あの時。

「くすりくさい」
と、ワタシが4歳のときに亡くなった明治生まれの祖母は、口慣れない食べ物を舌にのせるやきまってそう言って鼻つまんだものですが、ラズベリー味こそくすりくさいと言わずして何がくすりくさい。

ラズベリー味のわが初体験は1970年代後半、通っていた女子校で希望者をつのって行った英国短期留学のホームステイ先で出してくれたお弁当のジャムサンドでした。

(よくこんなトイレの芳香剤みたいなの食べられるなあ)
と、おどろいたものです。

「ホワット・イズ・ジス?」
と、ホストマザーに訊ねると、
「ラァズベゥイー」

このときはじめて、ベリーとつくものがストロベリー以外にも存在することを知りました。

「木いちご、知らなかったんですか?」
と、後にこのハナシを職場の後輩にしたら不思議がられました。
「子どもの頃道端で摘んで食べませんでした?」

彼女は田園育ちどころか横浜の住宅密集地出身で、道端や公園の植込みにはよく見ると雑草の木いちごが
生えているもので、登下校の折など遊び半分で摘んでは洋服でサッとふき口に入れたものだそうです。

「木いちご」になじみがあったなしにかかわらず、ワタシら世代は貪欲にこのテの味に慣れていくことになります。

ラズベリーなんとかと銘打ったケーキやらパフェやらアイスやらとは、ワタシらがしきりに出没したコジャレ喫茶店で百年前から食べ慣れているがごとくに接しました。

一番人気はでもブルーベリーのほうでしたけどネ。

1982年、ロッテから「ブルーベリーガム」登場。ワタシが女子大生の折には、あのコもこのコもみーんなこれ噛んでました。

当初は慣れない味で敬遠したにしても、ラズベリーはじめこういう「ベリー」はオシャレな食べ物という位置づけでした・・

・・と、こう書きながら気づいたんですが、つい先年、アサイーって流行りましたよね。

アサイーは、オシャレという風潮には乗らなかった、ような、気もするんですが、だとしたらいったいなぜだったんだか。

思いまするに、アサイーにとびついたのは流行に敏感なお嬢様方ではなく、健康に敏感な、「昔」若かったワタシら世代だったんじゃ、ないでしょうか。

ワタシら世代はラスベリーやブルーベリーの「洗礼」を受けてここまで来てますから、その延長線上にアサイーがあるととらえても少しもおかしくありません。

ブルーベリーなどは「目にいい」というカタチでもわれわれは接することとなります。アサイーもまた、アンチエイジングに効果アリとのことで、まさにワタシら世代にうってつけ。

実をいいますとワタシは未だアサイー未体験。フランスではちっとも流行ってないんですヨ。

そこでラズベリー、フランス語でいうところのフランボワーズですが、こちらではフランボワーズ酢などもあり、ポン酢代わりにお醤油で割って湯豆腐なんかにかけると、これがまたなかなかちょっとヨロシイです。


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12歳のムスメが宿題やったままそのへんにうちやったままの『社会』の教科書をパチリ。フランス中世におけるキリスト教の台頭、テナ単元のようです。

前菜は、乾燥バジリコをふったトマトサラダ
主菜は、仔牛フィレ肉ソテー、ニンニクとパセリ風味じゃがいもピューレ、モロッコいんげん塩茹で


立ち呑み日記・虹の岐路 [おやつ]

ワタシは今岐路に立っている。

いや、進むべき道は重々分かっていても、いまだ足を踏み出せない・・

・・いえね、先日、レインボーケーキという、おッそろしく毒々しいお菓子を12歳のムスメにせがまれて焼いたんですね。(前々回の立ち呑み日記の写真をぜひご覧ください)
http://tachinominikki.blog.so-net.ne.jp/2015-03-17

「うわー!(ないしは『うげー!』)」
と、家族一同歓声(ないしは嘆声)をあげ、デザートにおのおのささやかな一切れずつ食べました。

生地自体はバター・砂糖・卵・小麦粉の正統派ですから、味はごくごくふつうのスポンジです。

「だから目をつぶって食べたんだ」
と、手探りで口に運んだオット。オットはカトルカールという、バターのきいたカステラ風焼き菓子が大好物です。

でもやっぱり、これはささやかな一切れが限度でした。薄目を開けるや鮮烈な色彩が瞳に飛び込み、
「ノドが詰まる気がしてダメ」

そのカラー漫画風色合いに興味津々とびついた10歳のムスコも、発起人であるムスメも、その委託製作者
オカーサン(ワタシです)も、同じことでした。

ちっぽけな一切れはまあ片付きましたが、次に手を出す気が、どうッしても起こらない。

発起人のムスメはといえば、翌日のおやつにレインボーケーキを冷蔵庫から出すと、
「アアやっぱりきれい」
と、うっとりし、じーと見つめつつ別のお菓子食べるありさまです。

なんでこんなにも食指が動かないんでしょうか。色はあれとして味はごく普通のスポンジケーキなのに・・

・・と、いいますか、味が普通のスポンジケーキだからこそ、食べる気が起きないんです。色と味が呼応してない。

色にはホラ、イメージするところの味と香りがありますよネ。紫はブルーベリー、青はブルーハワイ、黄色はレモン、テナ感じで。

緑は、日本では抹茶やメロンや青リンゴですが、フランスではおもにピスタチオです。

スポンジに人工的であれこれらの味と香りがついていれば、まだ手が伸びたように思います。それが証拠に、同じように毒々しくとも風味のいい名店のマカロンだとどんどんつまみたくなる。

「味と色だけではないんじゃないの?」
というお声が聞こえてきたようですが。「プロの技とオカーサンの日曜仕事をいっしょにするのはどうかねえ・・」

然(しか)り。韓国やシンガポールではレインボーケーキが売りのオッシャレなサロン・ド・テが大繁盛といいますから、プロの手になるものは味がいいのでありましょう。

が、インターネットにあまた溢れたレシピとあの目もくらむケバゲハしい画像の製作主は、家庭の一般人ではないでしょうか。

みなさん、焼いた後どうなさったんだか。

色の層をなす都合上、分量はちょっぴりとはいかず、小麦粉で500グラム弱、卵で6個からもなり、「ケロリン」の洗面器を伏せたほどの大きさで冷蔵庫を大幅に占領するんです。

また、重ねる接着剤代わりおよび表面のデコレーションにクリームチーズを使っているので、あまりもちません。

そういうわけで、減る気配なく日ばかり過ぎた今日。食べ物を胃袋でなくゴミ袋に投入するのははなはだ不本意ですがねえ(泣)。


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あらきれい、と、これなど思うんですが。やはりプロとの違いでしょうか。

前菜は、かぼちゃポタージュ
主菜は、七面鳥腿肉ロースト、じゃがいもロースト、モロッコいんげん塩茹で、グリーンサラダ

立ち呑み日記・カリソン [おやつ]

「カリソンが食べたいなあ」
と、おやつにバゲットの板チョコサンドをかじりながら12歳のムスメ。

カリソンというのはアーモンドパテのお菓子で、ひと口大の紡錘形をしています。ポンと口にほうりこむと、歯切れのいい羊羹テナ感じの品のいい甘さの和菓子風で、緑茶にもよく合います。

南フランス・エクサンプロヴァンスの名産ですが、観光客が多く訪れるパリの高級食料品店などにも置いてあり、賞味期限も長いところからフランスみやげにぴったり。

ワタシも日本行きのスーツケースに2,3箱かならずしのばせます。が、化粧箱をうちで開けてつまむのはどうでしょうか。

そういう、家庭で食べるためには買わないお菓子って、ありますよネ。「ヨックモック」や「ユーハイム」など、デパートの名店街のお菓子がたいていそうではないでしょうか。

カリソンが、まさにそういうたぐいなんです。気軽にポイポイつまむにはややお高い。

パン屋によっては2、3個ずつセロハンに包んで売っていたりもするんですが。が、その2、3個の値段でパン・オ・ショコラなら3,4個買えるわけで、お腹の足しにならないところにお金を費やすよりは、おやつというならお腹にずしんのほうをオカーサン(ワタシなどです)はどうしたって選ばずにいられないわけです。

「でも、食べたいなあ」
と、板チョコサンドをすっかり平らげ、もうちょっと何かないかと戸棚をごそごそしながら、ムスメは食い下がります。

わかりました。マルシェに行ったら見てみましょう。マルシェのマスタード屋さんが、こういう珍味佳肴品のたぐいを置いているんです。

自撮り棒つきカメラかついだ観光客ご一行が屋台取り囲んでハチミツの試食などしている背後から背伸びしてのぞきこむと、あったあった。

化粧箱のほかにもセロハン袋入りがあります。ハチミツのお買い上げを待って屋台に近づき、お目当てのセロハン袋を手に取りました。

ありゃま、それでも12ユーロ50(約1450円)もする。

「プレゼント用にきれいに包装しますよ」
と、顔なじみのマスタード屋のお兄さん。

やっぱりうちでつまむものでもなさそうだなあ、と、台に戻しかけたんですが、現物を目の当たりにすると、とひと粒といわず口に入れるのは悪くないだろうナと、にわかに緑茶が恋しくなって来ちゃったんですね。

歯切れのいい羊羹みたいなアーモンドパテが奥歯でつぶれて軋(きし)んだところへ、濃い緑茶をズズッといったらさぞいいだろうなあ・・

「このままでいいから一袋ちょうだい」

実はムスメが食べたがっていてね、と、世間話しながらお金を払い、買い物かごのトマトの上へのせてもらいました。

「お嬢さん成績が上がったご褒美だねそうすると」
と、言うので、そういうわけでもないんだけどと返すと、
「アー世の母親はすぐこれだ、子どものがんばりを過小評価する。ボクのオカーサンもそうだった」
と、お兄さんは反抗期に戻ったような顔つきになり、
「がんばったお嬢さんに」
と、ハチミツあめをひとつオマケにくれました。


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エプロンってパリではみやげもの屋にしか売ってない、ということに気づきました。みなさんエプロンします?

前菜は、クレソンのポタージュ
主菜は、鯖(さば)塩焼き、蒸しじゃがいも、いんげん塩茹で

立ち呑み日記・ワッフル [おやつ]

チェスのお稽古の終わる夕方6時半。

うちの10歳はじめ3人の少年の送迎をおおせつかっているんですが、3名ともに退けた教室から飛び出してくるともうわれ先にこちらの手元のスーパーの袋を見ますね。

時間が時間だけに、おなかぺこぺこのぺッこぺこ。

フランスの家庭の晩ごはんはどんなに早くても7時半過ぎからで、チェスのお稽古はちょうどおやつの時間と重なります。

まして、チェスは手筋というのか、将棋講座と同じく駒の動かし方を図面などから推測したり分析したり、なかなかアタマを使うので、カロリーも必要なんです。

そこでとにもかくにもおやつというわけですが、送迎責任者(ワタシです)は胃にドシンとくるものを、スーパーで物色します。

本日は、リエージュ風ワッフルとうまいぐあいに「目が合いました」。

ワッフル、フランス語ではゴーフルといいますが、長方形で比較的フンワリ軽やかなのと、丸くてより甘くてずしっとしたのがあり、「ずしっ」のほうがリエージュ風。

日本のベルギーワッフルは、リエージュ風が中心だそうです。

「ずしっ」が、おやつを準備する身としてはとても心強かったです。ひと袋に5ケが、つごうふた袋。
「ということは3人だとひとりいくつずつ?」

・・・・
と、3名とも人差し指を唇にトントンして真剣に考え込み始めるんだからイヤになりますが、10歳の名誉のために明記しますと、「ひとり3個」という計算は3名とも
「即座にできた」
そうです。

モンダイは、残りの1個をどうするか。

三等分はしづらいですし、日本のようにじゃんけんで決めるという習慣がないので、こういうときは「意見の言い合い」が始まります。

「でもまず3個食べてからにしようぜ」

ハラが減っていてはいい考えも思い浮かびません。少年3名は、こちらの手からひったくるようにゴーフルを3ケずつにぎりしめ、さっそくかぶりつきました。

今食べる分ひとつずつもらったっていいのに、やはり手のひらにこれから食べる重さを感じていたいんでしょうかネ。

かじりながら、話題はオンラインゲームの攻略法に終始。

リエージュ風ゴーフルは甘食みたいで、もっくりもっくり、着実におなかにたまります。これが、オオカミの食欲にはうれしいところ。

男子三人寄るとコーフンして見境なく舗道を走り回るのにほとほと手を焼いている送迎の身としても、咀嚼しながら静粛に帰路をすすめることができて、実にありがたいです。

お蔭で、みんなの家の界隈まで万事つつがなく戻って来られました。

いよいよ少年の一人の家が目前に迫ったので、
「残りのゴーフル、どうする?」

「ありがとうマダム、ぼくもういらないです」
と、3名寄ると大騒ぎのき少年も単独だと礼儀正しいです。「おなかいーっぱい」

少なくともあと一週間はゴーフルのゴの字も見たくない・・
「ボクも」「ボクも」と、あとの2名も同意し、3つの頭を寄せ合って「オエー」と、はなはだ失礼なしぐさをしました。

しかしマ、ゴーフル、ことにリエージュ風ゴーフルの甘さともっくりには確かにそういうトコ、ありますナ。


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バスを待ちながらパチリ。寒くて中で休みたかったんですがそんな悠長なことしていてはバスが来ちゃうのでガマンしました。

前菜は、トマトとグリンピースのマヨ和えサラダ
主菜は、牛ひき肉ステーキ、じゃがいもソテー、バルサミコ酢をかけた焼きパプリカ



立ち呑み日記・オレンジ果汁 [おやつ]

流行りのひっどい風邪にやられ、ここのところ七転八倒していましたが、おかげさまでようやく光明が見えてきました。

すると、身体の奥から突き上げるようにオレンジジュースがのみたくてのみたくて、たまらなくなってきました。果物のオレンジでもいいんですけど、果肉が口中でもっさりするのがもどかしいんです。

オレンジといっても種類がいろいろあり、今の季節フランスでは「マルテーズ」というのが出回っていてこれなど果汁が多く、なかなかよろしいです。

「まもなく『血のオレンジ』が出回るからいっぱい食べるといいよ」
と、いつも行く八百屋のおにいさんはさすが地中海沿岸国出身だけありオレンジの種類には詳しいです。
「マルテーズは酸味がちょっときつくない?」

概して男性は酸味の強いものをキライますね。八百屋のおにいさんは「マルテーズ」にとびつかんばかりの日本人のオバサン(ワタシです)を片手で牽制し、ただ今特売中のスペイン産ミカンのほうがうんと甘いヨと、
ひとふさ味見までさせてくれました。

ホント、その甘いこと。でもわが身体が奥底から渇望している果汁が、それこそスズメの涙ぐらいしかないんです。

「やっぱり『マルテーズ』にするワ」
と、2キロもいっぺんに買いました。

八百屋のおにいさんご推奨の「血のオレンジ」というのは果肉が血のごとく赤黒いオレンジで、味も濃く、好むひとは旬を待ち望みます。

さて、柑橘をまとめ買いしたのでひと安心ですが、身体の奥底から突き上げる渇きはいかんともしがたく、スーパーで冷蔵棚の、いいほうのオレンジジュースをおごることにします・・

・・と、道を急ぐ脳内にあの懐かしのオレンジファウンテンが出現し、それはもうすがすがしくオレンジ色の水が噴き上がっては透明円形の天井を伝って下方へと滴るので、もう、もう、矢も盾もたまりません。

子どもの頃、デパートの屋上などで、飲むのはたのしかったもンです。一杯ほんの5円だか10円だかでしたよね。

円錐型の紙コップを配置して貨幣を入れるとケバケバしいオレンジ色のジュースがチューと出て来る。

ウンそうそう、円錐型をそっとにぎってごくごく飲むのがよかったんだよナ。あの円錐が普通の紙コップだとおもしろさ半減です。

アア飲みたい、あの安ッちいオレンジジュースのみたい・・・

・・・あとそうそう、オレンジジュースといえば「バヤリース」ないしは「リボンオレンジ」、たまさかに家族で外食というときに子どもはこれがたのしみでした。

ただ、こちらは気軽にごくごくとはもったいなくて行きません。ちびり、ちびりと食事の間中かけてのむ。

ごくごくというなら「プラッシー」、お米屋さんから届くのを今か今かと待ち、オマケのごとく入っている果肉が混ざるようようくようく振って飲んだものでした・・

アア飲みたい・・・

・・・と、目の色かえて冷蔵棚のフレッシュオレンジジュースにとびつきレジをすませ、あとはもう一目散。荷物を置くのももとかしく、ジュースをコップにつぎ、ゴクリゴクリ、ゴクリゴクリゴクリ・・

一気飲みで1リットル、あっという間に空いちゃいました。


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というわけでマルテーズです。お尻がオレンジのようにはでこぼこしてません。

前菜は、トマトサラダ
主菜は、仔牛ソテー、さいの目ニンジン入りグリンピース

立ち呑み日記・イモい [おやつ]

いつも行くマルシェの八百屋のはずれのいっとう目立たない場所に、根野菜コーナーが、あるんですね。

根野菜といってもニンジン、根セロリ、カブ、ラディッシュなどは看板役者で、より目立つ中央の台のほうに見栄えよく並んでいます。

片や目立たないほうの大部屋役者は、日本人のわれわれには見慣れない白ニンジンやキクイモ、オレンジ色したカブ等々。

「戦時中の食べ物さ」
と、八百屋のご主人は自ら商(あきな)っているというのに顔をしかめます。「味がね、土臭いというかね」

しかしその大部屋に潜伏するがごとく、サツマイモが身を寄せているというのは日本人からすると意外です。

♪いしやッき~いものほッかほか~・・
と、寒空の下に屋台がやってくるのが、子どものころなどたのしみだったもンですけどねえ・・

最近はスーパーの店頭などで気軽にほっくり甘い焼きたてが買えるようですネ。今、目の前にある大部屋のサツマイモはというと、まことに残念ながらホクホクにはなりません。

まず、中身の色からしてオレンジ色で、焼くと西洋カボチャのごとくずくずくにくずれます。そういや長いこと食べてないナ、いしやきいも・・・

・・・と、大部屋をのぞきこんでいたら、不意に思い出しました。干しいも、って、そういやうーんと長いこと、食べてないナ。

あれ好きだったんですよねえ・・。八百屋のザルに、みかんの山の間に埋もれるようにひっそり地味目に、冬の間だけ並んだ。

そう、八百屋で買ったもンでした。

ペラペラの透明ビニールに「干しいも」と印刷されたぐらいの簡素な包装で、秋口の青いミカンやグレープフルーツなどと違ってオカーサン(ワタシらのオカーサンです)はわりに気軽にお財布を開いてくれたものでした。

袋を手のひらにのせるとずしりとして、鼻を近づけるとうっすら甘い、ほこりくさい日なたの香りがしてくる。「イモねえちゃん」が好みそうな香り。

そうそう、当時は野暮ったい人のことを「イモい」なんて言ったんですよネ。イモ欽トリオという、気さくさを打ち出したアイドルもいました。

あのころは日本経済がひたすらに上昇し、軽やかさをよしとした都会至上主義でしたからね。調べてみたら、若者の間に「イモ」呼ばわりが広まり始めるのは1979年だそうです。

「今い人よりイモい人のほうがホッと出来て私は好きだな。」
という用例文が載っていました。

今い人もイモい人も今や押すに押されぬアラフィーです。

今日、干しイモといったらスローライフの象徴みたいなものではないでしようか。たっぷり陽を浴びた自然食品で、オーブンでじっくり火を通し、大地の恵みをしみじみいただく。

あのころは石油ストーブの上で炙(あぶ)ったものでした。しゅんしゅん沸いているヤカンを少しばかり横へずらして、干しイモを並べる。

いよいよ焼き上がり、ところどころ黒く焦げた熱いところにかみつくと、あふいあふい、れもうっふらあまひほもひみたいれおいひい(熱い熱い、でもうっすら甘いお餅みたいでおいしい)・・・

そうそう、お餅みたいにガツンとオナカイッパイになったものでした。


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なんとなーく立ちどまってパチリ。

前菜は、かぼちゃのポタージュ
主菜は、たらそぎ身フライ、レンズ豆煮込み、いんげん塩茹で、グリーンサラダ

立ち呑み日記・ミルクの時間 [おやつ]

スーパーの帰り道、目の前をカナダ人のお若いバックパッカー二人連れが地図を広げて歩いている。

カナダ人とどうしてわかったかというと、バックパックに、カナダ国旗のワッペンが縫いつけてあったから。カナダ人は外国旅行というと外からハッキリ国籍が判るようにして闊歩し、われこそはアメリカ人にあらずと主張しているのだそうです。

それは大いに結構。それより、今ワタシの目の前の赤いカエデの横に、プラスチックの取っ手付きコップがプラプラしているんです。

なぜか「ハローキティ」と「アンパンマン」、日本人から譲り受けたんでしょうか。貧乏旅行なら飲み物はスタンドで小ビンを買うよりスーパーで大ビンを買った方がうんと経済的です。

目の前で揺れているコップを見るともなしに目で追っていたら、ハタと気付きました。そういや長いこと、プラスチックの取っ手つきコップで飲んでないナ。

うちはワルガキ二匹がいる都合上、公園に行くときなど飲み物とコップは持って出ますが、それにしてもこういう取っ手付きはとっくの昔に卒業してしまいました。

我が身をふり返れば、愛用したのはざっと見積もって半世紀も前です。

にもかかわらず、時に取っ手をにぎりしめて飲んでみたくないこともないんですね。牛乳を、ことに飲んでみたい。

ワタシら世代はほれ、「ロンパールーム」のミルクの時間にアコガレましたからね。

画面の向こうで机についてプラスチックの取っ手付きコップをあおっている子どもたちを心の奥底からうらやみつつ、画面のこちら側でもかねて用意の同じようなコップで牛乳を飲む。

画面の向こうの子どもたちはコップにほんのちょっぴりしか入ってないようですぐ飲み干しますが、その飲み物はスキムミルクやら練乳のような甘い牛乳やら、時代によっていろいろだったそうです。

オレンジジュースの時もあったそうな。

でも画面のこちら側ではあれは牛乳と信じ切っていたので、今また飲むならやっぱり牛乳です。プラスチックのコップにはガラスのそれのようなヒンヤリ感は、ない。

金沢工業大学の神宮英夫教授は、牛乳瓶から牛乳を飲むとなぜおいしいのか、という点を科学的に解明なさったそうです。

研究では、プラスチックのコップ、マグカップ、牛乳瓶でそれぞれ牛乳を飲んだ唇のサーモグラフィーで比較計測した。

プラスチックのコップは温度がかわらず安定感があるのに対し、牛乳瓶は唇にぴったり当たる表面積が大きいところからもヒンヤリ感が持続。

だからこそ牛乳瓶で飲むと美味しいのは大いに認めるところではありますが、ヒンヤリもいいけれど、ひとは時に安定も求めたいんです。

どうです、久々にプラスチックの懐かしい感触を味わってみようではないですか。

せっかくですからここは豪勢に往年のみどりせんせいをお招きし、われわれもまたアコガレの「ロンパールーム」のセットに集いましょうか・・

・・と想像してみたらなんですかこう、オタク通り越してやや変態じみてきたキライがなきにしもあらず、取っ手付きプラスチックコップで牛乳飲むのは、みなさまやっぱり台所で適宜ご実行くださいませ。


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今日のパン。毎日二本ずつ買います。

前菜は、野菜ポタージュ
主菜は、鯖塩焼き、レンズ豆煮込み、インゲン塩茹で、グリーンサラダ

立ち呑み日記・三丁目の洋菓子 [おやつ]

昨日の立ち呑み日記で検索するうちに知ったんですが・・

ワタシらの母親世代が絶大な信頼と人気を独占したレシピ本が、あるみたいなんですヨ。

この本のお蔭でさまざまなしゃれた手作りお菓子が家庭に持ち込まれ、ひいては幼いワタシらの口に入ることとなったレシピ本です。

そもそもは発言小町で何とはなし目にとまった質問でした。

質問者は、お母様が愛用なさっていたお菓子のレシピ本を探しておられました。B6版大で縦書き、白黒の写真が多く入って青い表紙、友だちの家でも見たことがある・・

・・たったこれだけの情報ですゾ、それだというのに決定打の書名がずららららっと並んでいるんです。

『家庭でできる和洋菓子』 婦人之友社編集部刊

1960年初版発行で、「うちにもありました」「うちにも」「母は今でも使ってます」「これ一冊あれば他はいらないですよね」等々、どの方も熱烈なひと言をお添えになっています。

絶版ですが、1980年代初頭まで何刷も出版されたもよう。

「母から譲り受けた」「家にある一番古い本」等々、ブログにとりあげて思いを綴っておられる方も多くあり、それらをモザイクのようにつなげてみるとその全貌と素晴らしさがつかめてきました。

この本は語り言葉の読みやすい文章で、素敵な和洋菓子を手の届くものとして紹介しています。

当時の天火(オーブン)は今日のような細かな温度調節はできず、それを踏まえた上での作り方だったようです。

紹介されている洋菓子は、ショートケーキ、パウンドケーキ、タンバリングケーキ、エンジェルケーキ等々。トロンコなるケーキは現在のビュッシュ・ド・ノエル(とこう書きながら気づきましたが、トロンコはtronc、フランス語で「幹」です)。

どうです、これだけの洋菓子が『三丁目の夕日』の時代に家庭にもたららされていたわけです。

材料は、小麦粉、砂糖、バタ、卵、牛乳、ベーキングパウダー、それに香りづけのエッセンスが中心で、ブランデーやリキュール類は登場せず(らしいです)。

バタといったら高価で、しかも天火を備えた台所というと相当進歩的なオカーサン像が浮かび上がります。

とはいえオーブンがそう普及していたわけでもなく、無い家庭でもできるレシピもふんだんに掲載されていたことでありましょう。

どなた様かのブログで、偶然にもサブレーのページの写真がありました。その配合を見ると、昨日ムスメと作った1970年代のレシピより砂糖の量が多いんですヨ。健康志向の概念はまだありませんでしたしね、素材はぜいたくに使っています。

この本に、当時のオカーサンたちは自分の配合などを時にメモしながら愛用したようです。

今日でもアマゾンなどで手に入らないこともないんですが、「汚れあり」「書きこみあり」が多いようなのは、そのせいでありましょう。

亡き祖母から譲り受けたこの本を開いてみると、倍、倍にした配合が祖母の字で書きこまれてあり、しゃれたお菓子をたくさん作っては隣近所に配っていた姿がしのばれた、と、語っておられるブログもありました。

この本、ぜひとも一度手に取ってみたいものです。


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こちらは復活祭の連休でした。

前菜は、鶏ガラでとった野菜スープ
主菜は、七面鳥のささ身ソテー、ブロッコリーと短冊ニンジン、半折りスパゲッティーと残りのトマト赤ワインソース



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