立ち呑み日記・生のあんきも [主菜]

魚屋の前を通りがかったら、オヤ、なんとなんと、鮟肝(あんきも)が、ある。

生、ですゾ。この魚屋で、初めて見かけました。にぎりこぶしを二つくっつけたぐらいの大きさで、肌色のなかに気まぐれな感じに淡桃色をさっと刷(は)いた、ぽってりあでやかなお姿。

ヘーエ、こんなの売ってるのネ、と、右から左から子細に眺めましたね。鮟肝は細かい氷の上に乗せられた笊(ざる)に、ぽってりといくつものっています。

パリの魚屋で鮟鱇(あんこう)は高級魚として上座に並べられていますが、ふつうはシッポのほうの身ばかりなんですヨ。

以前はごくたまーのたまーに、マルシェの魚屋の客寄せに、アンテナ立てた鮟鱇の吊るし切りを見かけたものですが、それだってかれこれ20年以上前のことで、最近はとんと見かけません。

「鮟鱇の顔なんて拝んだことないよ」
と、魚屋のお兄さんも言っていたものです。

卸売市場で仕入れる時にはもう、鮟鱇はシッポの近くで切られた例の姿になっているのだそうな。あのすざまじいお顔のあたりはどこへやられるのか。

(日本じゃないのかな)
と、ふんだんですが、どうでしょうか・・

・・検索してみたところ、日本は茨城県や山口県の下関で水揚げされていて、欧州から輸入するまでもないみたいです。

あんこう鍋といったら有名ですよネ、あと、唐揚げや、身と肝を味噌などとともに和えた「とも和え」などにするそうですが(どれとっても食べたことありませぬ)。

さて生の鮟肝、どうやって食べればいいんでしょうか。あんきもの作り方は検索したらたちどころにわかりました。

全体に塩をふって二十分ほど置いたところをアルミ箔で巻きずしのように棒状に巻き蒸し器で蒸す。以上。

なんだかどうも、意外なほどカンタンです。

天下の珍味あんきもといったら職人技の、道場六三郎みたいな和食の名料理人にしかつくれないものだとばっかり思ってました。

「フランスではどうやって食べるの?」
と、魚屋のお兄さんに聞いてみると、
「ソテーだね、仔牛レバーなんかより淡泊でうまいよ」

フランスで肝(きも)といったら鶏レバーや仔牛レバー、格安なれど味がうんと落ちる牝牛レバーがよく食べられています。

豚レバーは、パリは豚肉を禁忌とする宗教の人々もたくさん住んでいるところから肉屋の売れ筋とはいえず、めったに仕入れないものだそうです(地方によっては売れ筋です)。

魚のほうは、タラの肝の油漬け缶詰がスーパーで安く買え、おつまみにとおってもヨロシイんですヨ。

しかし今日は、なんといっても生のあんきもが目の前にある。しかもキロ10ユーロ(1300円)というんですからお買い得です。鮟鱇の尻尾の方の身の半額以下。

自分のためによーく選ってひとつ買いこみました(うちの家族一同レバーには冷淡なのでひとつのみ)。

日本風のあんきもに蒸してみようかなー、
とも思いましたけど、魚屋のお兄さんのおすすめのソテーにして、アジア食材店で買ったミツカンポン酢をかけてみたら、これがもう、もう、今思い出してもうっとりするくらい、白ワインがすすんじゃうお味でございました。


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オペラ座の背後で信号を待ちながらパチリ(左の建物です)。


前菜は、ビーツ(赤かぶ)とリンゴのサラダ
主菜は、鶏ロースト、じゃがいもロースト、いんげん塩茹で、グリーンサラダ

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