立ち呑み日記・月のうさぎ [食前酒]

ウサギをロゼワインで煮込みながら、つらつら考えた。「月のうさぎ」という合唱曲、あったナ。

合唱組曲「月と良寛」の中の一曲で、ワタシの中学高校生時代、学内コーラスコンクールというと、毎年どこかしらのクラスが歌っていたものです。

今調べてみたら、「さっちゃん」「犬のおまわりさん」「おなかのへるうた」などを作曲した大中恩(おおなかめぐみ)の1960年の作品で、昭和40~50年代によく歌われていたもよう。

歌詞は有名な仏教説話、同じ内容が今昔物語にも採集されているそうです。

むかしむかし・・
キツネとサルとウサギが、野山で楽しく暮らしておりました。

あるとき・・
お腹が空いて死にそうなおじいさんと山中で出会います。

キツネとサルとウサギは・・
おじいさんを助けるのに、それぞれ食べ物探しに出かけました。

キツネとサルは、持ち前の知恵と腕力でおじいさんを喜ばせるような食べ物をたんと提げて戻って来ます。

けれどもウサギは・・
身体も小さく力もなく、何も収穫できずしょんぼり戻って来ると焚火の前のおじいさんへ無力を詫び、せめて自分を食べてくれ、焚火に飛び込みます。

おじいさんは神様の姿にかえり・・
うさぎの優しい心を慈み、むくろとなったウサギを胸に抱き、月の世界へと旅立って行きました・・

自己犠牲を美化するとは封建的でヤなこった、
と、反抗期のワタシは歌を口ずさみながらも冷ややかに思ったものでした。

が、大人になり台所で香気あふれかえるウサギの鍋をかきまわしつつ口ずさんでみれば、この説話は必ずしも鹿爪らしい美徳のみを物語っているわけでないと気づかされるんですね。

裏メッセージが、ちゃあんとある。

すなわち、ウサギは
「食べられる(食べていい)」
と、お釈迦様のお墨付きをもらっている。

殺生というので肉食は日本では長らく禁忌でしたが、その実、村の生活ではたまさかに野ウサギをしめウサギ汁にしてきたわけです。

ホラ、上野の西郷さん、あれは愛犬連れてウサギ狩りに繰り出す姿だそうですゾ。西郷どんはペット用としてウサギ狩りしたわけでは断じてありますまい。

明治の文明開化のころ、牛豚馬の肉は、エイヤっと垣根を飛び越えるほどの勇気と興味をもって、当時の日本人は口にしました。

飛び越える垣根なく、村の日常の目立たないところで食べ続けられてきたウサギ肉は、戦後の繁栄とともに忘れ去られてしまった。

あるいは安ソーセージ用のほんの混ぜ肉として、できればその存在を知らしめたくないような低地位までに落ちぶれてしまった。

美味しいのになあ・・

「あんなにかわいいのに」
と、言われちゃうと、やはりなかなかむずかしいです。

ヒヨコだってかわいいのに、こちらは食べるのと愛でるのと両立できたのはどういうマーケティングだったんだか。

日清チキンラーメンにはかわいいヒヨコの絵があしらわれ、博多の名物屋台には焼き鳥屋「ピヨちゃん」という老舗があったと聞き及んでいます。

そこいくと、ウサギ肉専門レストラン「ミッフィー」と言われた日には、やはり食べづらいことこの上ないです。


P1000547.JPG
秋晴れの午後、歯医者の帰りの通りがかりにパチリ。カルーゼル凱旋門といって、19世紀初頭にナポレオンをたたえて建立されました。前方はルーヴル美術館。風がありけっこうホコリっぽかったです。

前菜は、トマトサラダ
主菜は、ウサギの南仏野菜入りロゼワイン煮込み、白飯、グリーンサラダ


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