立ち呑み日記・トマトを買いに [買い物]

朝も早き6時50分。

パリは夏の気配未だ残るこの季節でもまだ薄暗く、森閑とした舗道を、近くの広場のマルシェ目指して足を速めます。

なんでまたこんな早い時間に、と、歩いている当の本人(ワタシです)がアキレてます。トマト求めて早起きって、どうよ。

ここのマルシェには農家直販の屋台が出るんですね。

その野菜はどれもみな味が濃いんですが、なかでも露地ものトマトの素晴らしさといったら、一度食べたら
(おねがい、もう一度だけでいいからまた食べさせて・・)
と、身をよじらんばかりになるほど。

そこで夏休み明け早々、文庫本片手にいそいそとマルシェに繰り出したんですね。なぜ文庫本片手かといいますと、去年のトマトの季節の行列が、テーマパークの人気アトラクション並みだったから。60分待ち、とかですね。

ところが今年は、去年までの行列はなかったんです。

(しめしめ)
と、文庫本を手提げにしまって台の品定めすると、ありゃりゃ、肝心のトマトが影も形もない。

どうしてッ、
と、いてもたってもいられなくなりました。今年の初夏はたいへんな雨続きだったから、ひょっとして今年はトマトなし? そんな、そんな・・・

ようやく番がまわってきたところで、焦燥感いっぱいに大スター不在を問いましたね。

「今日の分はもうすっかりはけちゃったよ」
と、農家のおじさん。

大ケース6個持ってきたのに、屋台の設営が終わった直後の7時半にはもののみごとに全部空になったゼ、と、おじさんの胸そびやかすまいことか。

(『ふかし』じゃないの?)と、実のところ疑いましたヨ。

ホラ、店のおじさんってよくおつり10円のところ
「ほい十万両!」
なんて大げさにするではないですか。フランスでも時折あるんです。

いくらなんでもその時間に完売って、あり得るでしょうか。あるいはひょっとして、業者が転売目的で買占めに来るのか。

(その業者断固として許せぬ)
と、無闇にハラ立てながら道を急ぎます。

広場では、薄暗い中どの屋台も設営に精を出している最中で、台さえ広げていないテントもあります。

フッ、と、一瞬さらに薄暗くなったので何かと見回せば、オレンジ色の街灯が消えたところでした。どう考えても、マルシェの買い物にはチト早すぎるとしか言えません。

が、お目当ての屋台に着くとなんとまあ、老齢のマダムがカートに手をかけすでにお待ちでした。

マダムは設営の終わりを辛抱強く待ち、
「トマト、今日は1キロ半でいいわ」

次がワタシの番で、たっぷり2キロちょうだい、と、口を開こうとした矢先、
「ボンジュール」「ボンジュール」
と、背後で立て続けに声がして行列がのびました。

ふり返れば、いずれも近所で顔見知りオトーサン。早朝の行列は業者連ではなく、いずれも地域の方々のようでした。

転売の不正は働かれないもよう。

毎度早起きはつらいので、背後のオトーサンがたは近所の親しい家族と示し合わせて交代で来ては5キロぐらいまとめ買いするそうです。

現在のフランスは食糧難からほど遠いですが、安くおいしいものにありつくには、これでなかなかタイヘンです。


P1000530.JPG
農家直販の屋台には輸入物はないので、バナナなどはこっちの屋台で。安く品が良いのでこちらも毎度長い行列です。

前菜は、トマトサラダ
主菜は、牛(フォーフィレ)ステーキ、さいの目じゃがいもと白身魚の残りのグラチネ(チーズ焼き)、いんげん塩茹で、グリーンサラダ

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