立ち呑み日記・焼きそぼ [ランチ]

12歳のムスコの、成績がただてさえ低空飛行からの急降下で先生から保護者面談に呼び出され、こってり油を搾(しぼ)られた帰り道。

搾られた油を補給しなきゃやっとれん、テナ心境になり、味にほまれ高い中華レストランへ迂回してお昼を食べてから帰ることにしました。

おりしも店頭のガラス窓越しに、あぶらがまわってつやつやした焼鴨と焼き豚が吊るされています。

この店は在パリ日本人の間でつとに知られ、海老入りワンタンスープが名物です。入り口を入ったすぐわきの大鍋で盛大に湯気あげて茹でられている海老入りワンタンは、プリッとしたところへ朱色の辛味ソースをチョンとつけてハフハフやるとたまりません。

今日もそれにしようかなあ、とも思ったんですけど、メニューをめくるうちに、「焼きそぼ」というややあぶなっかしい日本語表記が燦然と光を放っている、ような気がして来ました。

「豚焼きそば、おねがいします」

この店には友人や家族と連れ立って来てはあれこれ分け合って食べていますが、考えてみれば焼きそばひと皿まるまる一人で食べるのは、これが初めてです

「うちの焼きそばは固焼きそばですがよろしいですね」
と、注文をとりに来た中国人の店員さん。

「のぞむところです」

あと季節野菜炒めもたのんじゃおうかなあ、
と、頭によぎる間もなく、店員さんはメニューをさっと取り上げ行ってしまいました。後でちゃんとわかりましたが、一人では焼きそばに加えてもう一品は量が多すぎました。

店内は、ほぼ満席。

ワタシの横は、首から名札下げた円熟女性四人組で、おのおのが炒めもの一品とお茶碗におテンコ盛りの白飯で、自分のとった料理のみを定食風に賞味しています。

せっかく四品あるのだからみんなで分けあえばいいのに、と、アジア人(ワタシなどです)は思いますが、フランス人にその食べ方は思いもよらないんですね。

その遠方の席に、取り皿を置く空間もないほど料理を満艦飾に並べてあちこち箸を動かしているフランス人カップルもまたいましたが、こういう方はおそらく本場中国の滞在経験がおありなのだと思います。

「本ッ当に全部の料理を一度に持って来ちゃっていいんですね」
「ウン、本ッ当にいいヨ」「遠慮しないで」
という、中国人の店員さんとそのフランス人カップルの会話が漏れ聞こえてきました。フランス人は、前菜ついで主菜というふうに二度に分けて食べるのが一般的です。

それにしても中華はやっぱりいろんな料理をあれこれ味わうのが楽しいですよネ・・

・・と、そこへ、いよいよワタシの豚焼きそば登場。モヤシと薄切り豚肉をジャーッと炒めてとろみをつけたのがたーっぷり、お皿からはみだしかけているカリカリ麺の上から熱々としたたれ落ちている。

真ん中をつつくと湯気が一気にたち、今はくったりとなったかた焼きそばが姿を現します。

フーフーして食べると、日本の、商店街の定食屋さんの豚もやし炒めを思い出させるなつかしくも力強い味。

そのおいしいこと、夢中で箸を動かしましたが、やはり中華なのに一品コッキリというのがこころさみしく、向こうの満艦飾に時折目をやり「借景」させていただきました。


P1000325.JPG
パリ市庁舎の前を通りがかりにパチリ。

前菜は、カボチャポタージュ
主菜は、鴨胸肉ソテー・ぶどうとコニャックのソース(残りものの流用)で 薄切りじゃがいも重ねのグラチネ、いんげん塩茹で


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とんちゃん

中華料理を4人で4品をシェアしあって食べる、ってのはフランスにはないんですか!あらま、残念ですね。
焼きそば1皿だけだけど、きっとかなりの量だったでしょうね?(笑)
by とんちゃん (2016-04-22 13:03) 

ぐちぐち

アジア人は食をシェアし欧米人は住をシェアする、と、言われているようです。焼きそばはズッシリきましたです。
by ぐちぐち (2016-05-05 01:00) 

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