立ち呑み日記・スター不在 [買い物]

「チキショー、トマトがあればなあ」
と、マルシェの屋台の内側で舌打ちする青物農家のご主人。

「景気どう?」
と、行列の常連さんに話しかけられたところです。

ご主人はパリ近郊の農家で、生産物を週三回このマルシェで直売しているんです。それがまあおいしいこと。そして安い。どの野菜も味が濃く、ワタシもまたスーパーの大量栽培モノにはもう戻れなくなりました。

界隈でこの屋台は有名で、毎度たいへんな行列です。早めに行ったら並ばなくてすむだろうと朝イチの9時に着いたらすでに大行列で唖然としたこともあります。

ご主人によると、屋台の設営が始まる7時の段階でもう待っている人がいるんだそうな。

(その気持ち、わかるなあ)
と、ワタシなども思いますね。

「あのおいしかったほうれん草はどこ?」
と、番がようやくまわって来て身を乗り出すように訊ねると、
「悪いね、ずいぶん前にはけちゃったよ」
と、返されるくやしさ。

こないだなど行列のシッポで自分の番を辛抱強く待ちながら、次々と人手に渡っていくカリフラワーを(あれ買おうっと)とじーと見つめていたんですが、なんと! ワタシの前の人で最後の一個がはけ、指くわえることとなりました。

そんなにも人気ながらなぜご主人が「チキショー!」と歯噛みしているかというと、夏の終盤にパリ一帯は雨が続き、一番人気のトマトの今季最後の収穫がオシャカになってしまった。

ここのトマトはほんッとうにもう、もうッ、おいしんです。

前回がその最後のひと山だったんですが、雨のせいで菌による病気が発生し、トマトの芯の部分が焦げたように真黒くなり売り物にならなくなっていた。

まだ青いうちに摘み取ったものは一見大丈夫そうなれど、熟したら黒くなるのはまぬがれないとおかみさんが肩を落とします。

売れないトマトが台にいちおう置いてあったのに、ご主人の並々ならぬ未練を感じましたね。ワタシらお客もまた未練たらたらでしたヨ。来年の夏まであのおいしいトマトとお別れとは長いなあ・・

「あーらトマトないのね」
と、今朝は列につかず別の屋台へ行ってしまうお客が何人も何人もいたのだそうです。

浮気っぽいその客の気持ち、これまたよくわかります。

台に花形のトマトがないのは、満員御礼の宝塚歌劇を観に行ったらトップスターが出てなかったのに同じ(と思うナァ・・)。

今、台に並んでいるのはサラダ菜各種および秋冬野菜の巨大な瓜や汁気の多そうなラディッシュ、にんじん、ニンニク、玉ねぎなど。

「ここの瓜はね、甘いスープにするよりオーブン焼きにして塩パラパラッのほうがうまいぞ」
と、ワタシの頭ごしに、後方に並んでいた紳士が、そのあまりの大きさに買うか買うまいか迷っている前方の若者へ手メガホンで話しかけました。

若者は二十歳そこそこの学生さん風。やはり手メガホンで焼き時間や使うべきハーブなど質問し、買う心づもりになったようでした。

「『アオクビ』が、来週あたり出るからね」
と、ワタシが日本人と見たご主人は、番がまわってきたところでおしえてくれました。日本発の大根各種を植えているのだそうです。


P1000077.JPG
ただ今ワルガキ二匹のハマっている『ワンピース』です。

前菜は、にんじん千切りサラダ
主菜は、フォーフィレ(牛肉ょステーキ、くずした白身魚フライとつぶしニンニク入りじゃがいもピューレ、いんげん塩茹で


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