立ち呑み日記・穴 [追究]

朝ごはんのとき、12歳のムスメにエマンタールチーズの穴ボッコリボッコリのところがあたりました。

エマンタールチーズって、ホラよく漫画のネズミが齧(かじ)っているあれです。本来は両腕で抱えるほどの円形ですが、スーパーの冷蔵棚に選ぶ段では袋入りで小学生の筆箱ぐらいの長方形に切ってあり、穴をよーく検分してカゴにとることになります。

エマンタールは穴があいているほど熟成が進んでオイシイことになっているので、食べる時も穴のところにあたるとなんだかちょっとうれしいんですね。

(別にィ)
という感じに唇のはしを歪めたなりの無愛想きわまりない反抗期のムスメが、手にした穴ボッコリを10歳のオトウトの鼻先へわざとぐるっとやってから口へ運びました・・

・・こういうたびに、いッつも思うんですヨ。穴が大きければ大きいほどおいしいのなら究極のエマンタールチーズとなると穴のみ、すなわち実体のないものになるンじゃないの?

ドーナツは穴のところがいちばんうまい、なんて言ったりするではないですか。

穴というのはなんでこう魅力を秘めているんだか。トローチだって、穴があいているからこそトローチの「感じ」がでるわけです。

トローチの穴はしかしだてに空いているわけでなく、万が一呑みこんで喉につまったときの気道確保のためなんだそうです。

穴といえば落とし穴を、子どものころ空き地なんかに掘りませんでした?

大人が落っこっちゃうぐらい深いの掘ってやろう・・と、小さなシャベルでかんばるんですが、当然ながらそこまで達するわけもなく、せいぜいちょっとしたくぼみになりかけたころにはもう飽きて、
「缶ケリやろう」
と、たちまちに方向転換したもンでした。

が、掘っている間のワクワク感といったら。

少し前に、砂浜で友人をびっくりさせようと大きすぎる落とし穴を掘り、びっくりどころか人が亡くなる悲劇的事故が、ありましたよね。

あれなど行き過ぎもいいところですが、「穴」の持つ魔性ここに極まれり、という証(あか)しである気がしないでもないです。

アリスだって、白ウサギを追いかけて穴に落っこちていくんです。穴の奥には不思議世界が広がっていた。

ウィキペディアを引いて知りましたが、「穴」という題名の映画が古今に6作も製作されているんです。小説は3作。なかでも小山田浩子『穴』は2014年の芥川賞受賞作です。

映画監督も作家も、穴の魅力に引き込まれているんですね。

「山のあなあなあな・・」という三遊亭円歌の新作落語が、その昔大人気を博しましたが、これなんかもやはり「穴」のおかげではないでしょうかネ。

カール・ブッセの詩「山のあなたの・・」がどもってそうなる、というシーンですが、これが宮沢賢治の「雨ニモマケズ」で
「雨ニモニモニモニモ・・」
だったら、嵐ファンはまあいいとしても「あな」ほどの笑いはとれないことでしょう。

「アナと雪の女王」だって、その名あってこそあれだけの人気となったわけです(ンなわけはないナ)。


PIC_0259.JPG
オオここにも咲いた咲いた・・

前菜は、トマトサラダ
主菜は、タラそぎ身ムニエル、いんげん塩茹で、じゃがいもグリル、グリーンサラダ




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コメント 2

式守錦太夫

チーズの穴の、本当に穴だけの実体のない――なんて、
素敵に哲学的だなあと思って拝読すると、
円歌師匠まで登場する破天荒ぶりが、
ゲイジュツは爆発だ!的で、面白かったです(笑)
by 式守錦太夫 (2015-04-17 00:08) 

ぐちぐち

おそれいりまする。
by ぐちぐち (2015-04-17 02:25) 

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