立ち呑み日記・五人娘 [食前酒]

陽気涼しくなり、ぬるめにつけた燗酒が
(のみたいなあ・・)
と、戸棚に後生大事ととってあった日本酒の最後の一本に、とうとう手をつけてしまいました。

日本酒は、たまさかに日本からのおみやげでいただくんですヨ。自分でも一時帰国のたびに持ち帰ります。

大吟醸だの純米吟醸だのは気軽に開けづらく戸棚のこやしになるままに、フランス人の友人知人の家にお招きにあずかった折の手土産にしたりしてました。

が、ある日ふと思ったんです。手土産もいいけど、わが目の前を右から左へ消えていくばかりではチトさみしい。

そこである時、戸棚のこやしへ勇気をもって手をつけてみました。するとなんとまあおいしいこと。

勇気はりんりんとわき、一本、また一本とどんどん片付いて行きました。なかには二十年近く眠っていたものもあり、こういう古いお酒は黄金色に変色してマデーラ酒みたいなこっくりした風味。

ワインもいいけど日本酒もいいナ・・
・・と思っていたところで、この涼風です。

空を見上げれば鰯雲、パリはここのところ小春日和が続いているとはいえ、地面を見れば影が大きく伸びている。

これはどう考えてもぬる燗日和。

そこで勇気中の勇気をふりしぼって最後の四合瓶をとり出したわけです。なに、次回の一時帰国でまた買えばいいだけのハナシです。

純米吟醸といいますから高級品、しかも箱の説明によると、無添加で万事自然に発酵させたものとのこと。こくこくと耐熱カップにとり、軽くチンしたぬるいところをお銚子にうつして、デワデワいただきまーす・・・

・・・ウッ、と、思わずむせましたね。なんという糠(ぬか)臭さ。発酵の進んだ糠味噌が浮遊沈殿してるんじゃないかとさえ思いました。

知りませんでしたが、この純米吟醸「五人娘」は糠みそ風味でつとに知られているんだそうです。

そもそもは醸造元・寺田本家の寺田社長が、伊勢神宮に伝わる古い文献にあったという玄米からつくった御神酒の話に触発されて発芽玄米で醸造してみたのが始まりだそう。

この試作品は、糠味噌発泡酒、とでもいうような、清酒とは似ても似つかぬ摩訶不思議品だったそう。

そこから改良に改良を重ねて「五人娘」にいたるんですが、その間、酒税法上「清酒(日本酒)」ではなく「その他の雑酒」に長らく分類されていたそうな。

なぜというに、清酒(日本酒)は白米から醸造したもので、表皮を剥いていない玄米のそれは前例がなかった。

食品見本市に出した時は、ブースで試飲していた紳士が
「これがまずい酒の代表だ、よく憶えとけ」
と、連れの一人に耳打ちしているのを寺田社長はしかと聞いたと言います。

しかし、こういうクセの強いものっていったん慣れるとやみつきになりませんか。

当初は「うえー、ぺっぺっ」と敬遠したのに慣れてくるとそれ無しではいられないものって、ワタシはペリエなどの炭酸水がそうです。

かようにこの糠臭さもいつの日かやみつきになりましょうが、初心者(ワタシです)には今はまだ大いなる努力が必要な段階。

とはいえなにしろこれが最後の一本。ありがたく、最後の一滴まで全うする所存であります。


P1020665.JPG
ワイン屋のショーウインドーをパチリ。

前菜は、トマトサラダ
主菜は、鶏ロースト、じゃがいもロースト、いんげん塩茹で、グリーンサラダ


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