立ち呑み日記・真空モンダイ [真夜中]
一時帰国して日本の実家に荷をおろして一夜明け、あいもかわらぬ時差ボケでお腹空かせて目覚めた早朝。
「きのうのポトフを温めてまた食べたい」
と、フランス人のオトーサン(ワタシのオットです)が言い出しました。
ガイジンの婿のためにワタシの母が一時帰国というときまって前日から大鍋いっぱい作っておいてくれるものです。
そこでそーっと台所へ行きガス台の奥に置かれたステンレスの寸胴鍋を、よっこらしょ、と、手前に引き寄せ、火をつけます。
またたく間にぐつぐつしてきたので火を止め深皿に、牛肉とじゃがいもとニンジンあたりをとってあげましょうか。
「オー、セ・ボ~ン」
と、スープをひと口飲みこみ、腹の底から絞り出したような声をあげるフランス人。
深夜のラーメンなんかでもそうですが、スープのひと口めって、格別ですよネ。肉の、野菜のエキスが五臓六腑に沁み渡る感じ。
もうひと口、またひと口、さらにひと口、さらにまたひと口、と、スプーンをひらりひらりと動かし、たちまちに深皿から汁気がなくなりました。
とにもかくにもスープだけおかわりと言うので、牛肉と野菜にはまだ手をつけてない深皿へ寸胴鍋から熱いところを注いであげようとします。
ところが、ありゃま、鍋のフタがとれない。
さっき蓋を閉めたら真空状態になっちゃったもよう。お椀なら両方からグッと押せばパカリとフタがはずれますが。ステンレスの寸胴鍋は頑強で、両側から押したぐらいではウンともスンともいいません。
さてどうしたものか。
困ったわねえ、と、日本人のツマ(ワタシです)は完成度の高い日本製品をややうらめしく思いましたね。これがフランス製だとフタが少々歪んでたりして完全にぴっちりとは閉まらなかったり、する。
コンコン、と、こういうときって意味なく鍋をノックしてみたり、するもンですネ。あいにく内側から返答はなし。
鍋を傾けたら空気が動くかな、と、そおーっと傾けてみる。ただしここでうまく開いたとしてスープがこぼれてガス台がたいへんなことになります。
卓上ナイフを持って来て、鍋とフタの間に差しこもうとするも、うまくいかず。
オットは無類のスープ男でさっきの一杯ではとうてい足りず、深皿の中でしんしんとさめかけている肉と野菜を温かく食べるためにもなんとしてももう一杯は欲しいおねがいどうかたすけて、と、神に祈らんばかりです。
鍋の真空モンダイは世にひんぱんに巻き起こっているらしく、「どうしたらいいでしょうッ」というお悩み相談をヤフー知恵袋などたくさん見つけました。
もう一度火をつけぐらぐらさせるといいんだそうです。
ただし、それは後で冷静になってゆっくり検索して知ったことで、このときは焦って引っ張ったり叩いたりしているのみ。
大好物を鼻の先に掲げられて頭掻きむしらんばかりのオットに、仕方ない、別の小鍋でお湯を沸かし手近のだしの素と味噌で具なしの味噌汁にして深皿に投下してあげました。
早朝からお菓子をパクつくのは時差ボケだからまあ許すとしてゴミをそのへんにポイしたまま持参の本を読みだしたので「コラちゃんと片付けなさいッ」と鹿爪らしくやりました。
前菜は、かまぼこ、カラスミ、イクラ、フグの卵の粕漬け(金沢の名産珍味だそうです)
主菜は、鴨なべ
「きのうのポトフを温めてまた食べたい」
と、フランス人のオトーサン(ワタシのオットです)が言い出しました。
ガイジンの婿のためにワタシの母が一時帰国というときまって前日から大鍋いっぱい作っておいてくれるものです。
そこでそーっと台所へ行きガス台の奥に置かれたステンレスの寸胴鍋を、よっこらしょ、と、手前に引き寄せ、火をつけます。
またたく間にぐつぐつしてきたので火を止め深皿に、牛肉とじゃがいもとニンジンあたりをとってあげましょうか。
「オー、セ・ボ~ン」
と、スープをひと口飲みこみ、腹の底から絞り出したような声をあげるフランス人。
深夜のラーメンなんかでもそうですが、スープのひと口めって、格別ですよネ。肉の、野菜のエキスが五臓六腑に沁み渡る感じ。
もうひと口、またひと口、さらにひと口、さらにまたひと口、と、スプーンをひらりひらりと動かし、たちまちに深皿から汁気がなくなりました。
とにもかくにもスープだけおかわりと言うので、牛肉と野菜にはまだ手をつけてない深皿へ寸胴鍋から熱いところを注いであげようとします。
ところが、ありゃま、鍋のフタがとれない。
さっき蓋を閉めたら真空状態になっちゃったもよう。お椀なら両方からグッと押せばパカリとフタがはずれますが。ステンレスの寸胴鍋は頑強で、両側から押したぐらいではウンともスンともいいません。
さてどうしたものか。
困ったわねえ、と、日本人のツマ(ワタシです)は完成度の高い日本製品をややうらめしく思いましたね。これがフランス製だとフタが少々歪んでたりして完全にぴっちりとは閉まらなかったり、する。
コンコン、と、こういうときって意味なく鍋をノックしてみたり、するもンですネ。あいにく内側から返答はなし。
鍋を傾けたら空気が動くかな、と、そおーっと傾けてみる。ただしここでうまく開いたとしてスープがこぼれてガス台がたいへんなことになります。
卓上ナイフを持って来て、鍋とフタの間に差しこもうとするも、うまくいかず。
オットは無類のスープ男でさっきの一杯ではとうてい足りず、深皿の中でしんしんとさめかけている肉と野菜を温かく食べるためにもなんとしてももう一杯は欲しいおねがいどうかたすけて、と、神に祈らんばかりです。
鍋の真空モンダイは世にひんぱんに巻き起こっているらしく、「どうしたらいいでしょうッ」というお悩み相談をヤフー知恵袋などたくさん見つけました。
もう一度火をつけぐらぐらさせるといいんだそうです。
ただし、それは後で冷静になってゆっくり検索して知ったことで、このときは焦って引っ張ったり叩いたりしているのみ。
大好物を鼻の先に掲げられて頭掻きむしらんばかりのオットに、仕方ない、別の小鍋でお湯を沸かし手近のだしの素と味噌で具なしの味噌汁にして深皿に投下してあげました。
早朝からお菓子をパクつくのは時差ボケだからまあ許すとしてゴミをそのへんにポイしたまま持参の本を読みだしたので「コラちゃんと片付けなさいッ」と鹿爪らしくやりました。
前菜は、かまぼこ、カラスミ、イクラ、フグの卵の粕漬け(金沢の名産珍味だそうです)
主菜は、鴨なべ
2013-12-25 04:51
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フグの卵の粕漬けにすると、卵巣の毒が無くなるそうです。
「へしこ」という名前だったと記憶していますが、
粕漬け自体を「へしこ」と呼ぶのだったでしょうか?
当然そんな珍味では日本酒でしたね!
by 式守錦太夫 (2013-12-27 21:39)
エエ日本酒を、クイッといきましたぞ。
by ぐちぐち (2013-12-30 02:42)